匠の知見と先進テクノロジーを融合
サステナブルな製造現場を実現する未来のために

製造の現場を持続可能に
製造の現場を持続可能に

CONNECTer 千葉 剛樹

CONNECTer 千葉 剛樹

パナソニック コネクト株式会社
プロセスオートメーション事業部
回路形成プロセス事業担当
回路形成プロセス開発統括部 実装プラットフォーム開発部 機構開発 1課



テクノロジーを駆使し、製造ラインの最適化を目指す

パナソニック コネクト プロセスオートメーション事業部では、電子部品実装・半導体・FPD(フラットパネルディスプレイ)・溶接・レーザー加工などの装置とソリューションをトータルで提供しています。パナソニック コネクトが積み重ねてきた技術と知見に、AI、IoT、センシング、ロボティクスをはじめとする先進テクノロジーを融合。「現場」に寄り添いながら、人による作業の効率化と生産性向上の両立を目指し、製造ラインの最適化を実現するソリューションをお届けしています。


CONNECTer 千葉剛樹

製造現場が直面している課題解決のカギはDX

私が所属する回路形成プロセス事業が担う領域は、主に電子部品の製造から実装に至る製造工程となります。製造現場を取り巻く環境は、デジタル化の加速、技術革新、お客様のニーズの多様化、地球環境保護など、めまぐるしい変化の時代を迎えています。近年はパンデミックや国際情勢にともなうサプライチェーンへの影響が表面化しており、そこに対して迅速かつ柔軟に対処することも求められています。

製造現場が抱える課題は様々です。工場では品質不良、設備の一時停止、部品待ち、作業ミスなど、さまざまなトラブルの対処や生産計画の再調整の必要性が生じます。その結果、総合設備効率が低下するだけでなく、生産管理部門ではリアルタイムに変動する製造の実態把握ができず、計画立案が難しい状況に陥っています。製造ラインのトラブルには正確な要因特定が必須となるため、作業者の経験値によってトラブルシューティングに費やす時間も異なり、設備停止によって起こる生産の遅れに対応することも決して少なくないのです。


写真:エラー表示に対応して生産設備の確認をしている様子
エラー表示に対応して生産設備の確認をしている様子

このような現状を踏まえ、私たちはこれまで人に依存していた作業や判断をAIによって自動化・知能化させ、お客様のニーズや供給の変化に素早く対処できる自律化した製造現場こそ、これからの時代に必要だと考えました。それにより製造プロセスの変動要素である(製造プロセスに影響する要素である)「5M」、すなわちhuMan(人)、Machine(機械)、Material (材料)、Method(方法)、Measurement(測定)のばらつきを最小化し、異常を素早く検知、解決できる。さらにこのようなテクノロジーの導入は、製造現場に求められる生産性・品質の向上と稼働率の最大化にも貢献できます。

多種多様な状況やニーズへの迅速な対応が不可欠である現在、製造現場の努力だけでは乗り越えられないフェーズに入り、大きなイノベーションが必要となりました。製造現場におけるデジタルトランスフォーメーションの実践は、未来を生き抜くうえでの最適解だといえるでしょう。

自律的に進化する「Autonomous Factory」(オートノマス ファクトリー)がもたらす未来

私たちが描く未来の工場の在り方は、あらゆる状況に即応し、自律的に進化し続ける「Autonomous Factory」です。製造現場の変動要素である5MをAIでコントロール。5Mの情報の連携により、製造計画、材料準備、製造実行、保守管理という製造サイクル全体に関与しながら、工場の設備、ライン、フロア、経営までをつなぎ、計画通りに生産が進む現場を実現します。さらに、熟練度の高い人材に頼っていた製造トラブル対応の自動化、最適なタイミングでのメンテナンス、生産計画や人員配置の立案など、製造サイクル全体にアプローチするとともに、現場のデータを蓄積、分析し、より高い精度へ進化を続けていく。製造現場が抱える課題の解決はもちろん、働く人の負荷を軽減するとともに、生産性・品質の向上や稼働率の最大化、統合フロアマネジメントをも可能とするのです。


写真:(左)約20kgの実装機のフィーダーを手動で入れ替える様子。(右)ロボットによって自動でフィーダーを入れ替え。
(左)実装機の交換台車を手動で入れ替える様子 (右)ロボットによって自動で交換台車を入れ替え(開発中)

製造業の工場の内部体制は、大きく分けて「生産管理部門=Cyber領域」と「製造現場部門=Physical領域」に区分されています。Autonomous Factoryの実現によって、Cyber領域とPhysical領域のそれぞれに適した知能化が図られ、Cyber領域では最小の投入リソースで最大の成果を上げる計画立案が、Physical領域では5Mのばらつきを抑制した計画通りのモノづくりが実行できる。この2つの領域が相乗効果を発揮し、工場全体の最適化へ導くのです。

Autonomous Factoryの実現へ向けた製品のひとつに、私が開発リーダーを務めたモジュラーマウンター「NPM-GH」があります。モジュラーマウンターとは電子回路の基板に精密な電子部品を配置する実装機のこと。電子部品を配した基板はスマートフォンやパソコンの要ともいえ、実装機はこれらの製造に欠かせない設備です。電子部品の実装工場での製造ラインの停止は、納期の遅れや大きな損失に関わる死活問題となるため、1分、1秒の遅延も回避し、生産を維持し続けることが求められます。当設備ではメンテナンス適正時期の推定による不要なメンテナンス工数の削減、品質不良の予知予防、トラブルによる生産再開への時間の極小化なども、AIによって自律的に行えるようになります。

Autonomous Factoryが実現するサステナブルな現場

Autonomous Factoryは省人化を可能にしますが、人の仕事を奪うというものではありません。製造現場の最適化は人の負荷や熟練度のばらつきによる影響を軽減しますが、機械で再現できない匠の技も依然として存在しています。モノづくりのDNAは着実に受け継がれていくことでしょう。

また製造現場を自律化することで、 CO₂の削減やエネルギー利用の効率化のみならず、材料の廃棄量を削減することが可能になります。工場の最適化と組み合わせれば、最小の資源で最大のアウトプットを現実のものとし、環境負荷低減にもつながります。

私たちはAutonomous Factoryを通じて製造現場にイノベーションを起こし、サステナブルな社会を実現していきたいと考えています。工場を最適化することで、資源を有効活用する。働き方の改善によって、人がより安全に、安心して仕事に取り組める環境を実現する。製造現場のウェルビーイングの向上は、未来へ続く架け橋だと思っています。

製造現場と世界を“コネクト”し、持続可能な企業へ

パナソニック コネクトが掲げる「現場から 社会を動かし 未来へつなぐ」というパーパスの言葉通り、現場レベルから経営まで工場全体に抜本的な改革を起こし、世界中のモノづくりの現場に革新的な変化をもたらしていきたい。そうすれば技術的側面、人間的側面、経営的側面それぞれにおいて、持続可能な製造現場がつくれるはずです。そのためにも私たちはAutonomous Factoryの実現に向け、全力で取り組んでいきたいです。


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