キッティングとは？作業手順から効率化のポイントまで解説
企業規模の拡大や業務のデジタル化に伴い、PCやスマートフォン、タブレットなど使用端末が増えることで、初期設定にかかる手間と時間も増加します。この煩雑な作業を効率的に行い、各端末をすぐに業務で利用できる状態に整えるのが「キッティング」です。
本記事では、キッティングの概要から具体的な作業手順、さらには効率化のポイントまで詳しく解説します。
キッティングとは？
キッティングとは、PCやスマートフォンなどのIT機器を業務で利用できる状態に設定する作業を指します。具体的には、OSのインストールやアップデートの適用、ネットワークやWi-Fiの設定、セキュリティソフトの導入、業務用アプリケーションのインストール、ユーザーアカウントの作成などを行います。
なぜキッティングを行う必要があるのか
キッティングを行う最大の目的の1つは、情報漏えいや内部不正を未然に防ぐためのセキュリティ対策です。PCやスマートフォンを業務で利用する前に、キッティングにより企業のセキュリティポリシーや運用ルールにのっとった設定を施しましょう。
また、業務に必要なアプリケーションが事前にインストールされていれば、端末を受け取った社員はすぐに作業に取り掛かれるため、業務効率が向上します。さらに、キッティング作業において端末へのラベル貼付やIT資産管理ソフトウェアの導入をまとめて行える点から、企業のIT資産管理の効率化にも寄与します。
社内でキッティングが必要な主なデバイス
キッティングの対象となるのは主にPCですが、他にもスマートフォンやタブレット、さらにはIoT機器など、さまざまな端末が対象となります。
例えば、社員向けにスマートフォンを配布する場合、業務用のアプリやMDM（Mobile Device Management：モバイルデバイス管理）の仕組みなどを導入する必要があります。
また、製造現場で使用されるIoT機器についても、セキュリティリスクを軽減するために適切なネットワーク設定やファームウェアの最新化などの作業が必要です。
混同されがちなキッティングとセットアップの違い
セットアップとは、主にPCなどの端末に対して初期設定を行う作業を指します。
一方、キッティングはセットアップ作業だけでなく、会社のセキュリティポリシーへの適合や業務用ソフトウェアの設定なども含んだ、業務利用のための準備作業全般を指します。このように、キッティングは「業務ですぐに使える状態に仕上げる」ことを目的としたものであり、セットアップとは作業の範囲が異なります。
キッティングの作業手順
必要な作業を漏れなく、ミスなく実施し、端末を業務利用に適した状態で社員に提供するには、作業手順書に基づき、計画的に作業を進めていく必要があります。具体的には、事前準備から各種ソフトウェアのインストールや設定、動作確認などのプロセスが必要です。
以下では、特にPCのキッティングを対象として、具体的な作業手順の例をご紹介します。
1. 事前準備
まずはキッティングに必要な機材を整えるところからスタートします。
はじめに端末を開封し、物理的な破損や初期不良がないかを確認します。同時に、作業中にインストールするOSやアプリケーション、ドライバ、セキュリティソフトなどの最新版をあらかじめ用意しておきましょう。
また、IPアドレスやDNS設定、Wi-Fi接続情報など、ネットワーク関連の設定に必要な情報も事前に整理しておく必要があります。
2. OSインストールと初期設定
次に、WindowsやLinuxなどのOSをクリーンインストールします。OSのインストールにあたっては、初期設定として言語設定やディスプレイ設定、アカウント設定などを行います。
3. ネットワークとセキュリティ設定
社内ネットワークへ安全に接続できるように、自社のネットワークポリシーに準じたIPアドレスの設定やプロキシの適用、VPNの構成などを行います。
また、パスワードの強度や多要素認証など、自社のセキュリティポリシーに沿ったログイン環境を整備します。
4. アプリケーションのインストール
続いて、業務で使用するアプリケーションを事前にセットアップします。Office 365やGoogle Workspaceなどの汎用的なソフトに加え、必要であれば部門別に必要な業務ツールや社内システムの導入も検討しましょう。ライセンスが求められるアプリケーションについては、各ソフトウェアが求める形でライセンス認証を行い、使用可能な状態にしておきます。
5. ユーザー環境の設定
社員が端末を受け取ってすぐに作業できるよう、ユーザーごとの環境を整えます。
Active DirectoryやMicrosoft Entra IDなどのディレクトリサービスを利用している場合、これらへの登録や参照できるファイルサーバーの領域など必要な権限の割り当てを行い、グループポリシーを適用しましょう。
6. 動作確認と品質チェック
一通りの設定が完了したら、動作テストとチェックリストによる検証を行います。
ネットワーク接続の可否やアプリケーションの起動などを確認し、設定ミスや漏れがないかを最終チェックしましょう。例えば、ネットワークにうまく接続できなければIPアドレスの設定などを再確認します。
7. ユーザーへの提供
最後に、キッティングが完了した端末を実際のユーザーに引き渡します。
引き渡し時には、操作手順や利用にあたっての注意事項を記載したマニュアルを添付し、必要であれば簡単に操作の説明も行いましょう。
同時に、PCの故障時などの連絡先などについても共有しておきます。
キッティングに求められるスキル
キッティング担当者には、IT環境の構築に関する技術的知識に加えて、問題発生時のトラブルシューティングにおける対応能力も求められます。また、企業規模が大きくなるほど、設定手順や使用ツールをマニュアル化するスキルが必要になります。
IT環境の構築・設定スキル
IT機器を業務利用に適した状態へ正確に構築・設定するためには、OSのインストールや初期設定、ネットワーク環境の整備、必要なドライバやアプリケーションの導入、セキュリティポリシーへの準拠方法といった作業内容を正しく理解し、実行する必要があります。
トラブルシューティング能力
キッティング作業中や動作確認時に、設定ミスや不具合が発生することは珍しくないので、原因を特定し、対処できるトラブルシューティング能力が重要になります。
具体的には、ログファイルの解析、コマンドラインツールを用いた状態の確認、BIOSのチェック、ネットワーク診断など、幅広い手法を駆使して原因を特定できるスキルが求められます。
これらのスキルを身につけるには、日々の業務の中での地道な積み重ねが欠かせません。例えば、ネットワークに接続できない場合には、IPアドレスやプロキシ設定の確認といった基本的な対応を自ら考え、実行する姿勢が大切です。
業務効率化と標準化のスキル
新入社員の入社や異動など、キッティングでは同様の作業を大量に実施するケースが多いです。そのため、設定手順や使用ツールをマニュアル化し、効率的な作業フローを設計することが求められます。
設定手順や使用ツールを、誰が作業しても同じ品質になるような仕組みに整備すれば、作業の属人化を防げ、全体の品質が向上します。さらに、スクリプトの作成や自動化ツールの導入ができれば、工数削減により生産性も向上します。
これらのスキルは、普段から漫然と業務をこなしていては身につきません。「どの作業を効率化できるか」「標準化できる余地はないか」といった意識を持つことで、だんだんとスキルも高まっていくでしょう。
キッティング作業における効率化のポイント
キッティングは時間を要する作業であるため、設定や環境を複数端末に複製するクローニングや、クラウド上で初期構成を行うツールを活用して工数削減につなげましょう。また、キッティング作業のマニュアルを作成したり、繁忙期に業務が集中しないようスケジュールを調整したり、大量の作業を短期間かつ高品質で対応してくれる外部委託を活用したりすれば、作業の効率化や標準化が図れます。
クローニングを活用する
クローニングは、マスター端末の設定・環境を複数端末に複製する手法で、キッティング作業における基本的な効率化手段といえます。
具体的には、OSのインストールからアプリの配置、ユーザー設定、セキュリティポリシーの反映まで含んだ環境をコピーすることで、大量の端末を均一な構成で展開できます。実施の大まかな流れは、まずマスターPCを作成し、そのPCからツールを使って設定を抽出します。続いて、抽出した設定を他のPCにコピーするという手順になります。
クラウド上で設定情報を構築する
Windows Autopilot やApple Business Manager など、クラウドベースの管理ツールの活用により、作業を効率化できます。
例えばWindows Autopilotでは、事前に管理者がユーザー情報やプロファイルを設定することによって、PCの初回起動時に資格情報を入力するだけで、各種設定が自動的に適用されます。
クラウド型のツールは、端末をネットワークに接続するとプロファイルが自動的に反映され、初期構成が可能になる点がメリットです。
作業スペースとデバイスの保管場所を確保する
キッティングでは複数端末を同時に作業することも多いため、作業できる空間と動線の確保が必要です。狭いスペースでの作業も可能ですが、その分効率は低下します。そのため、未開封端末の保管スペースや、キッティング済みの端末の一時保管場所も考慮した作業場所のレイアウト設計が重要です。
社内に専門知識を持った担当者がいない場合は外部へ委託する
異動時期に一度に数十台以上のキッティングが必要である場合、外部委託も選択肢に入ります。キッティングを請け負う業者は、自動化ツールなどによる効率化を徹底しているため、大量の作業を高品質かつ短期間で実施してくれます。
他業務が忙しくキッティングに割ける時間が無いなど、社内リソースでの作業が難しい場合は、外部委託を検討しましょう。
キッティングをアウトソーシングするメリット
デリバリーの効率化
外部業者によるキッティング済みの端末は、出荷時点ですでに業務に必要な環境が整っています。そのため、ユーザーはPCを受け取った瞬間から業務に着手できます。
アウトソーシングにより、初期設定に時間を取られず、スムーズに業務に取り組めます。
IT担当者の負荷軽減
キッティング作業は時間がかかりますが、同じ作業の繰り返しでもあります。
しかし、アウトソーシングを依頼すれば、社内のIT部門はキッティング作業に追われることなく、情報セキュリティ対応やIT戦略立案といったコア業務に集中できます。
特にキッティングは異動・入社シーズンに多く発生する傾向にあるため、業務の平準化の観点でもアウトソーシングが有効です。
作業の確実性と品質向
IT資産管理やセキュリティ対策に精通した専門業者に任せることで、作業ミスや設定漏れを最小限に抑えられます。また、キッティングのアウトソーシングを受託する業者はノウハウや経験が豊富であるため、自社で作業を実施するよりも高品質な作業が期待できます。
キッティングをアウトソーシングする際のベンダーの選定ポイント
アウトソーシングの効果を最大化するには、費用面に加え、調達だけでなく回収・廃棄・運用サポートなどPCに関するライフサイクル全体の管理を任せられるベンダーの選定がポイントです。
費用感が自社の求める内容にあっていること
IPCキッティングにかかる費用は、一般的に1台数千円程度となります。
費用をチェックする際には、費用の高さだけでなく、アプリケーションの個別設定や資産登録、配送など、どこまでの作業が含まれているかを比較検討すべきです。
安価でも対応範囲が狭い場合、結果的に社内での負荷が増えることもあります。
PCLCM業務に関する実績
キッティングだけでなく、PCの調達、保管、展開、回収、廃棄といったライフサイクル全体をカバーする実績があるベンダーを選ぶことが重要です。「PCLCM（PCライフサイクルマネジメント）」に対応するベンダーであれば、キッティング作業だけでなくライフサイクル全体を通して、自社の作業負荷を最小化できます。
具体的には、導入実績のある企業規模や業種、対応可能台数、過去の成功事例などに着目するとよいでしょう。企業によっては、Webサイト上でサービスメニューや実績を公開しているケースもありますので、まずはそれらの情報に目を通しましょう。
保守・サポート体制の充実性
納品後に発生する不具合や運用上の課題に対してのヘルプ体制が整っているかも重要です。専用の窓口が存在しているか、オンサイト対応がどこまでの範囲までなのかをチェックしておきましょう。また、不具合発生時に即座に対応してもらえるかまで確認しておくと安心です。
まとめ
キッティングは端末の準備を効率化し、ユーザーが端末を安全に利用できるようにするために必要な作業です。特に大量のキッティング作業を行う必要がある場合、アウトソーシングが有効な手段となります。
アウトソーシングを検討する際には、コストだけでなく、キッティングをはじめとするPCLCMのアウトソーシングに関する実績やサポート体制をチェックした上で、ベンダーを選定しましょう。
パナソニック コネクトが提供するPCLCMサービス
パナソニック コネクトでは、キッティング作業を含めたPCライフサイクルに関する業務をアウトソーシングできる「PCライフサイクルマネジメント（PCLCM）サービス」を提供しています。PC導入から運用、保守、廃棄までのサイクルをお客さまにあわせ、サポートいたします。
キッティングだけでなく、PCのライフサイクル全体にかかる自社の業務負荷を減らしたい企業におすすめです。