地域活性化のために「手ぶらで楽しめる周遊体験」を提供
富士五湖エリアを盛り上げる新たな観光体験
CONNECTer 石橋 寿啓
パナソニック コネクト株式会社
現場ソリューションカンパニー
現場センシング事業本部
富士急行様とともに挑戦する「新しい観光周遊体験」の創造
独自の画像処理技術とディープラーニング技術の応⽤により、世界最高水準の精度を誇るパナソニックの顔認証テクノロジー。これまで、空港の入出国ゲートや商業施設の決済システムなどに導入され、多くの現場の自動化・効率化に貢献してきました。
そして現在、挑戦しているのが「新しい観光周遊体験」の創造です。パナソニック コネクトは富士急行様と連携し、2021年11月から2022年1月にかけて、顔認証と周遊パスを融合した観光型MaaS「手ぶら観光サービス」の実証実験を行いました。
富士五湖周辺エリアが直面していた観光の課題
富士急行様は「富士を世界に拓く」を創業精神として、長年、富士五湖エリアの観光開発に力を注がれてきました。一帯の鉄道・バス路線を整備し、遊園地や温泉などのさまざまな観光施設を展開。しかし、観光スポットが点在しているため、「富士急ハイランド」などの特定の施設に観光客が集中し、ほかの魅力的な施設をなかなか知っていただけていないという課題を抱えていました。
もっと多くの場所に足を運んで、富士五湖エリア全体を楽しんでもらいたい。それぞれの施設の利用者を増やし、多くの方に訪れていただくことによって地域経済の活性化につなげたい。そんな思いをかなえるために、富士急行様とともに私たちが目指しているのが「手ぶらで楽しめる周遊体験」の提供です。
手ぶらで快適な周遊体験を提供するサービスを実証
本実証実験の焦点は、いかに富士五湖エリア一帯の回遊性を高められるか。そこで、富士急行様と構想したのが「富士五湖顔認証デジタルパス」です。事前に顔の画像を富士急ハイランド公式アプリ上で登録しておけば、観光施設や交通機関を利用する際の紙/電子チケットの提示は不要。5つの自治体にまたがる交通機関(電車・バス)と観光施設を“手ぶら”で利用できる仕組みを構築しました。
利用者からは「移動のたびにスマホを出さなくて良いので楽」「観光に集中できる」などと好評で、施設運営側からも「チケット確認の手間や会計のミスがなくなり、業務効率の改善効果も大きい」と評価をいただきました。
また、混雑検知システムの導入で、各施設の利用状況をリアルタイムで把握可能に。富士急ハイランド公式アプリを通じて、「リアルタイム混雑情報」として提供しました。 移動や施設利用において“待ち”のない、ストレスフリーな体験を実現し、混雑緩和にも寄与できたと思います。
さらに、シーズンや天候ごとのお客様ニーズに応じた価格設定をする「ダイナミックプライシング」も初の試みでした。過去の入場者数や天気予報などのデータに基づき、AIで日別に来場者数を予測。来場者数が多いと思われる日にはチケット価格を上げて混雑を緩和し、少ないと予測される日には価格を下げて集客を促します。その成果として、利用者の受容価格帯、想定利用施設数などに基づく価格設定の方法について、新たな知見を得ることができました。
こうした取り組みが奏功し、観光客ひとり当たりの平均施設訪問数が「3.4か所」に増加。この数字は、山梨県を訪れる観光客の平均施設訪問数を大きく上回っています。 また、アンケート調査では、利用者の9割以上が富士五湖顔認証デジタルパスに満足しているという結果が出ました。
富士急行様からも、「手ぶら観光サービスの導入により、お客様に快適なUXを提供できたのは大きな成果だと感じている。また、この取り組みでこれまで把握することが難しかったお客様の観光の傾向を統計的に理解することができた」と評価をいただいています。
今回の取り組みは、複数の観光施設や公共交通機関、決済のすべてを顔認証で利用できる「観光型MaaS」として国内初の挑戦でした。本実証実験を通して、エリア全体を巻き込んだ観光体験の設計に手応えを感じ、地域活性化の実現に大きく近づけたと思います。
地域全体の活性化を目指して
本実証実験を通じて、自治体はもちろん、宿泊施設や飲食店、ほかの交通機関など、地域全体での連携が欠かせないということを再認識しました。地域全体の活性化のためには、地域そのものが主人公となる取り組みが必須です。富士五湖顔認証デジタルパスで得られたデータを活用することで、どのような観光体験がお客様にとってより魅力的であるかのインサイトを得やすくなります。
そして、そのインサイトをもとに、地域全体の魅力や観光を楽しむお客様の快適性を高め、地域の魅力をさらに知っていただくことで地域のファンを増やしていく。今後も、この取り組みで得た知見やこれまで築いてきた技術で、地域を活性化させるお手伝いがしたいです。
パナソニック コネクトは、ひとりでも多くのお客様に「また訪れたい」と思ってもらえるよう、地域の方々と共に魅力的な地域づくりに挑戦し続けます。
※本実証実験は、観光庁が主導する「これまでにない観光コンテンツやエリアマネジメントを創出・実現するデジタル技術の開発事業」(令和3年度)に応募し、選定された採択事業です。パナソニック コネクト株式会社、富士急行株式会社、株式会社ナビタイムジャパンが共同で立ち上げた「富士山エリア観光DX革新コンソーシアム」を中心に進められ、地域の自治体や観光連盟も後援として参画しました。また、本実証実験は2022年1月16日付けで終了いたしました。
富士急行株式会社
事業部 事業推進課
丸山 宏明 様
【コメント】
今回の実証実験は、新たな観光価値の提供という点では大成功でした。今後、地域連携の強化やマーケティングの工夫などを実施して、さらに地域経済にインパクトを与えられる取り組みに発展させていきたいですね。パナソニック コネクトさんには、より先進的、革新的な観光体験ができる新しいテクノロジーを今後もどんどん生み出していただきたい。まずは富士五湖エリアから、観光事業を通じて、世の中を明るく元気にしていきましょう。