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Projects
代表的な事例をご紹介します。(メンバー、組織等は取材時のもの)

Project 01
顔認証付きカードリーダー(2021年度グッドデザイン賞 /IAUD国際デザイン賞金賞)

全国23万の医療機関でマイナンバーカードと顔を瞬時に読み取る。
そのデザインが備えるべき条件とは。


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価格と仕様は各社共通。
その中でパナソニック コネクトらしさを創る。

顔認証カード付きリーダーは、医療機関の窓口に設置され、患者様の顔とマイナンバーカードの情報を読み取る機器です。厚生労働省によって技術的な仕様と価格が公的に定められ、競合各社が横並びの条件下でパナソニック コネクトの強みをどう生かすが課題でした。


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「スペック比較表には出てこないスペックを大切にしよう。パナソニックの商品を開発してきたからこそできる使いやすさと省スペースを徹底的にアピールしようと決めました。またカードリーダーを眺めた瞬間、直感的に使いやすそうなイメージを持っていただけるか。その印象が商品の魅力を左右すると考え、開発のスタート時からデザイン活動を進めていました。」

「カードリーダーのお客様は、2種類いらっしゃいます。1人目は患者様。病院や薬局にはご年配の方から子どもまで幅広い年齢の方、治療中の方、体に不自由がある方など、ありとあらゆる患者様が訪れます。みんなが使いやすいことがデザインの大前提。2人目のお客様は医療関係者の方々。狭い受付台にも設置できるよう限りなく省スペース化するように心がけました。また受付に座られる方は、カードリーダーの背面を見続けることになります。目の前に大きな機器が置かれると圧迫感を受けるはずだと考えました。」


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開発に先駆けてカードリーダーには2つの正面があるというコンセプトを立てました。前面は、もちろん患者様の使いやすさの視点。背面は受付の方の視界をさえぎらない優しさの視点。どちらも大切にしたデザインを追求しました。


開発期間が短い。
そのとき、デザインが牽引できること。

最初の打ち合わせから動作モックアップの提出期限まで約2ヶ月足らず。通常の開発スピードでは実現不可能でした。そこで機構開発とデザイン開発が同時進行するチームが組まれたのです。


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「どの部品を使用し、どこに配置するか。機構設計の後にデザイン開発が進むことも多いのですが、今回は逆のパターンでした。患者様にとって使いやすく、背面からも圧迫感のないフォルム。このコンセプトに基づき、デザイナーがペーパーモックを作成。機器としてのボリューム感を全員が共有できたことが開発のスピードアップにつながりました。今回はデバイスの配置や機構をデザイン開発でリードしてもらったなと思っています。」

「メーカーの中でプロダクトデザインを行うインハウスデザイナーの強みは、経験を重ねるなかで使用デバイスの予測ができることです。パナソニック コネクトのモノづくりの特徴かもしれませんが、 B to Bのソリューション開発は毎回テーマが異なるため、技術先行の時もあればデザイン先行の時もあります。技術とデザインがオーバーラップしていくモノづくり。そこに魅力を感じています。」


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価格と仕様が決められた条件下ではデバイス選定に制約がありました。コンパクト設計を実現しながら、マイナンバーカードの情報を正確に読み取らなければいけない。その際、カメラの光量、設置角度などさまざまな技術的なハードルを超えられたのは、デザインの力に依るところが大きかったと思います。カードを載せる台をすりばち形状にデザインすることで、患者様がカードを無造作においても自然に正しい位置に収まり、同じデバイスを使いながら読み取り精度が飛躍的に向上したのです。


ユーザビリティをデザインする。
社会をデザインする。

顔認証付きカードリーダーは、全国の医療機関に設置され、日本の総人口おそよ1億4千万人の方々の目に触れ、使用されるシステムです。B to B デザインの醍醐味であり、社会に対する責任を感じます。


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「パナソニック コネクトは、顔認証だけにとどまらず、さまざまな現場センシングの技術を磨き上げてきました。例えば、混雑状況の検知、人数のカウント、モニターによるセキュリティ監視など、社会のインフラに近い場面で実用化され、さらなる進化が期待されています。さまざまな開発を進める中で私たちは現場センシングのユーザビリティを大切にしてきました。まわりの環境を含めたソリューションの提供。人の心地よさに寄り添う視点。機器と人との快適なあり方を創造することがパナソニック コネクトの使命だと考えます。人間の感性に近い部分から提案できるデザインの力は欠かせないものです。」

「保険証のかわりにマイナンバーカードで本人照合を行うという新しいサービスが普及すれば、医療機関の事務手続きが簡略化され、医療従事者の方が患者様と向き合う時間を増やすことにもつながります。世の中に新しい便利さを生み出し、社会そのものをデザインする責任とやりがいを日々感じています。」


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社会が求めているのは、未来を創出していくコンセプトであり、現場に根ざした視点から導き出されたアイデアです。パナソニック コネクトは、社会のために進化しつづけます。


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■プロジェクトメンバー(左から) 
山本 悠平(デザイナー)
吉永 国弘(事業企画)
石田 岳史(機構設計)
永石 裕二(事業企画)

Project 02
観光庁公募 富士山エリア観光型MaaSコンセプト

コンセプトに翼を。
デザインの視点が、旅のすべてを顔認証でつなぎ
国内初のMaaSの世界を拡げる。


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国、地域、事業者が模索する
新しい地域観光のシナリオづくり。

お客様の課題が明確であれば、解決策やアプローチを見つけやすいのかもしれません。しかし、社会が大きく動く中でお客様自身が課題を正確につかみきれない場面が増えています。今回の観光庁による富士五湖観光型MaaSの実証実験の公募もまさにそうでした。


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「実証実験の主体となる富士急行株式会社様は、2018年から富士急ハイランドに顔認証ゲートを導入され、将来的に富士山エリアすべてを顔認証で周れるソリューション構想を持たれていました。実証実験という短期の視点だけでなく、将来像を含めたコンセプト像を立案し、シナリオをどう具現化していくかを求められていたのです。」

「提案の独自性を出すために、デザイン担当として考えたポイントは3点。1つは、MaaSの土台となる利用者、地域、事業者の三者すべてがtotal winとなるプランニング。次に地域特性を明確化してアピールすること。富士山エリアには山登りや遊園地のほか、数多くの観光スポットがあります。自身の体験も含めてライフステージの変化に合わせてさまざまな目的で何度も訪れることができるエリアとして地域の特性を定義しました。さらに顔認証の情報から新しいサービスを創出すること。この部分は、以前より部門内でも顔認証を活用した旅のパーソナライズ化を検討していました。」


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「個人的に旅のプランニングが好きです。MaaSで旅のカスタマイズ化を具現化したいと常々思い描いてきました。例えば、ご高齢の方のアクセスのしやすさ、アレルギーを持つ方がいらっしゃるご家族のためのカフェ巡りなど、旅の情報を最大公約数化しない、さまざまな要望を推し量った新しい旅づくりを実現したい。このシナリオを実証実験の先のゴールとして設定しました。」


手ぶらでウォークスルー。顔で支払い。
カスタマージャーニーをマップ化。

実証実験では富士山エリアにある数多くの施設の、さまざまな人が関わります。その時に大切なのは共通意識をつくることです。提案書のアウトプットの中にカスタマージャーニーのマップやコンセプト映像を盛り込むこともデザイン担当の重要な役割の1つでした。


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「競合他社が提供する顔認証観光MaaSの調査も行いました。そこで気づいたのはお店の方が顔認証決済の操作に慣れていないと決済がスムーズに進まず、ユーザーとお店の双方がストレスを感じること。ソリューションを考えるときに、ついつい自分たちの技術や製品をどう盛り込めるかが着眼点になりがちですが、ユーザーの使いやすさに力点をおいた開発がますます求められていくと思っています。」

「現場で自分が感じたことは、コンセプトを組み立てる仮説のベースとなります。重要なのはサンプル数が1であってもファクトであること。それぞれのファクトを持ちより議論を重ねます。お客様にも答えが見えていない領域に対して新たな提案をするときに机上の空論は響きません。体験をベースにしたデザインがお客様の心に刺さるのです。」

 「顔認証決済を中心にした観光型MaaSは国内に事例があります。今回のように交通や施設の利用からショッピング決済まで旅まるごと手ぶらを実証実験するのは国内初です。これはパナソニック コネクトの大きな強みになります。営業視点では、デザインの担当者とディスカッションした内容を具体的なマップやコンセプト映像として視覚化してもらうことでお客様の心に深く響く提案ができると考えています。」


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これまで富士山エリアの観光客は日帰りが多く、平均1.3か所にとどまっていました。今回の実証実験では平均3か所以上の成果を収め、パナソニック の観光型MaaSが一定の成果を収めたと言えます。まだ全体構想の一部を実証したにすぎませんが、これからも旅のパーソナライズ化などプロジェクトを発展させていきたいです。


社会は黎明期。時代の先へ デザインの力で切り込んでいく。

デジタル技術の進化という土台に感染症などに起因するような人々の意識の変化が起こり、社会は変革を迫られています。テクノロジーとデザインを融合させることで社会の変革に応えていく時代がはじまっています。


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「いまは、お客様も自分たちは何が必要か具体的な要求として答えづらい時代です。なんか困っている。どうすればいい?その中で新しい提案をして、気づきを与え、具現化のプランを一緒につくっていく。それがサービスデザインの大きな役割です。」

「デザインを担当していると、自分たちのお役立ちのあり方が半年単位で刻々と変化していることを実感します。入社して3年、既成概念の中で考える案件は一度もなく、常に新しい案件に対して調べ理解して、その答えを探していくプロセスが求められます。毎回、初めての世界に取り組むので、街を歩いているときも常にアンテナを張っています。」

「プロジェクトの早い段階からデザインの担当者が関わることで、自分たちだけで考えていたコンセプトの視界が格段に広がることを感じます。提案内容とその伝え方がお客様の響くものになり、パナソニック コネクトと一緒に取り組んでいこうという気持ちがお客様の中に芽生えるように思います。」


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まだ正解が決まってないものに新しいコンセプトを提案できる力。将来像を具現化に導く力。サービスデザイン、プロダクトデザインなどすべてのデザインに求められるのは世の中のニーズの先へ切り込んでく力です。そのエネルギーがB to Bの領域を通して社会に新しい豊かさをもたらし、パナソニック コネクトのブランド価値を高めることに役立つと考えています。


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■プロジェクトメンバー(左から) 
大山 一朗 (事業推進)
小橋 佳衣 (デザイナー)
山川 八寿樹(デザイナー)

Project 03
業務用オーディオビジュアル機器

徹底した現場主義。
働く人の視点で現場ワークフローをデザインする。


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放送局用カメラから、
オリンピックで使用される大型プロジェクターまで
多岐にわたる製品をデザインする。

パナソニック コネクトは、業務用のオーディオビジュアル機器の市場を長年にわたってつくり続けてきました。放送局向けの業務カメラから、オリンピックをはじめとする大規模イベントのための映像音響装置、ビジネスや教育の現場で使用される小型プロジェクターまで、その製品範囲は多岐にわたっています。


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B to B領域のデザインは使う人や利用状況によって求められることが大きく変わるので、実際の利用現場を徹底的にリサーチすることから始まります。例えば、プロジェクションマッピングの現場では、実際にどのような場所に機器が設置され、どんな手順で操作されているのか、フィールドワークやビデオ観察、インタビューなどを活用して調査しています。」

業務用プロジェクターの市場は大きく3つに分けられ、それぞれデザイン要件が異なります。オフィスや教育現場、店舗などで使われるプロジェクターは、空間にいかに溶けこませるかが重要です。またオリンピックなど大規模イベント演出で使用されるレンタル用途のものは、機器の運搬、設営、調整といった現場ワークフローの効率化がデザインのポイントになります。さらに、展示会や博物館で使われるプロジェクターは、多様な映像演出に対応する設置を機器の存在感を消して実現させなければなりません。」


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B to B特有の複雑かつ難解な要件をデザインの力で解決することが、プロフェッショナルユースのプロダクトデザインをする面白さです。


人間中心アプローチで
ユーザビリティを追求する。

B to Cハードウェアプロダクトであれば、飾っておくだけでうれしくなるような審美性がユーザーの価値につながることあります。しかし、B to Bのプロダクトは、いかにユーザーが使いこなせるかが重要です。現場で働く方が求めるユーザビリティのよさや価値の伝わりやすさを徹底的に追求します。


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業務用の映像音響機器には多数のユーザーが存在します。機器の設置運搬をする人や投写映像の調整を行う人、保守メンテナンスに関わる人もいます。それぞれの利用状況やユーザーの要求事項を満たすためには、多視点からユーザー体験を検討する必要があります。」

大規模イベント演出で使用されるレンタル用途のプロジェクターではスタジアムの狭くて急な階段から搬入する際の安全対策として筐体全周に面取り形状やコーナーパッドを施していますし、メンテナンスしやすいように清掃時に洗浄液の泡が残りにくい表面加工の工夫をしています。ユーザーの“素早く安全に作業したい”という気持ちを汲み取って、製品に関するあらゆるタッチポイントを丁寧にデザインすることが求められます。

 業務用機器操作の熟練は、長年、自分が慣れ親しんだ使い方がいちばん使いやすいと感じています。デザイナー自身がユーザーになりきって機器を操作してみることで、その慣れがどこにあるかを感じとることと、観察やインタビューから熟練者のメンタルモデルを理解することの両方が重要です。慣れの人間工学という言葉がありますが、初めての人には使いにくい操作方法であっても、手順が体にしみついているプロには使いやすいということもよくあります。」


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一方、近年では撮影現場でディレクター自身が小型のカメラを持ってコンテンツを撮影するというシーンも増えてきました。そんな場面では、撮影のプロであるカメラマン以外の方でも使いこなせるユーザビリティが求められます。映像制作現場の変化をいち早く掴んで、現状の課題やニーズにとらわれないデザインを提案していくことも重要です。


プロトタイプの重要性。

ユーザーに仮説をぶつけて価値を磨き上げることも重要です。プロトタイプを体感してもらうことで議論が一気に進むこともあります。


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プロトタイプによる価値検証によって自分たちが気づけていなかった現場のニーズを発見できることもあります。海外の展示会でリモートカメラのプロトタイプを出品し、お客様の意見を集めたときのことです。お客様に”未使用時にレンズが格納されることで、設置空間に調和する”という主旨のアイデアをお薦めしたところ、”撮影していないことが一目でわかって便利だ“という想定外のフィードバックを頂きました。大学ではeラーニング用の講義映像撮影にリモートカメラが使用されているのですが、欧米の方はプライバシーを非常に気にされているため、講義終了後に用務員さんがわざわざカメラの向きを変えるという業務があることが明らかになりました。この声をもとに未使用時にレンズが自動的に下を向くことで、撮影していないことが一目でわかるアイデアに発展し、お客様の業務を効率化するデザインの検討につながりました。」

また、教育現場、会議室、結婚式場などの天井に設置される常設型のプロジェクターは、できる限り空間に溶け込ませることが求められてます。将来、プロジェクターのある空間が標準化され、空間の箱そのものをつくるところから関わる時代が来れば、カメレオンのように空間に溶け込んで目立たないプロジェクターが必要になる可能性もあると、個人的には考えています。」


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目の前のプロのニーズを的確につかまえるだけではB to Bのデザインは成立しません。プロ用の映像音響機器は、一度、納入されると現場で何十年も使用されるものも多く、その分、慎重にデザインしなければならなく、長い期間でも耐えられるようなものをつくらなければいけないという責任感もあります。そこに面白さがあると思います。


自分自身がスキルアップしていく喜び。

プロダクトデザイン、サービスデザイン、UIデザインなど、専門領域が異なるデザイナーがプロジェクトチームを組む機会があることもパナソニック コネクトの魅力。多視点が求められるB to Bのデザインにおいてお互いにリテラシーを高めあえる環境になっています。


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「パナソニック コネクトは人材育成に力を入れていると思います。キャリア入社のデザイナーも数多く、さまざまな領域のデザインや知識を学ぶ機会に恵まれています。私自身は、部署に籍を置きながら大学院の科目履修生として2年間通うチャンスをもらいました。モノづくりの前に人づくりという思想を実践している組織だと思います。」

「学生時代はプロダクトではなく空間系のデザインを学んできました。空間を軸にプロダクトのあるべき姿をとらえる視点は現在の仕事にも役立っています。入社してからプロダクトデザインに取り組み始めたので、そもそもプロダクトデザインはこんなところまで考えてやるんだという驚きと発見の連続です。CADの使い方も入社した後にゼロから勉強しました。人材育成の一環でUX的な視点を学ぶ講習も受けています。プロジェクターの外観はただの箱にすぎないし、どこをどうデザインするのだろうと最初は思っていたのですが、考えなければいけないことが想像以上に多くあり、毎日、必死になっていました。」


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業務用の映像音響機器と聞くと、ものすごく狭い範囲の中でデザインをしている印象を持たれる人もいますが、実際は幅広い視点からデザインをとらえていく必要があります。どのようなステークホルダーが存在してそれぞれにどういった課題やニーズがあるか、理想的なワークフローをどう実現するか、現場で働く人から信頼を得るためにはどのような佇まいのプロダクトであるべきか、デザインのベースとなる人間中心的なアプローチ、多視点かつ統合的な思考、魅力的にビジュアライズできる力を日々磨くことができる場所だと思っています。


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■プロジェクトメンバー(左から) 
小山 崇(デザイナー)
北川 真由香(デザイナー)

Project 04
ノートパソコン レッツノート 頑丈端末 タフブック

コンシューマー向けとは 視点が違う。
ビジネスユースのPCをデザインする面白さ。


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レッツノートとタフブック。パナソニック コネクトはビジネスユースに特化したPCを30年近くにわたって開発し続けてきた。ヒット商品の裏側にあるポリシーとは何か。ビジネスシーンでなくてはならないツールをデザインする難しさはどんなところにあるのだろうか。デザイナー2名の想いを聞いた。


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ポリシーを守りながら、ビジネスの変化に応える。

「あらゆる場面でビジネスを止めないこと。それはレッツノートの不変のポリシーです。軽量、長時間、持ち歩いていても壊れにくい丈夫さ、この3つ守り抜いてきました。そのために今ではレガシーとなりつつある接続用の端子も標準装備としています。外観としては端子がないほうがすっきりしますが、B to Bの、プロフェッショナルのお客様が使うレッツノートにとって変えてはいけないところです。」

「以前はレッツノートを担当していて、現在はよりハードな環境で使われるタフブックのデザインをしています。タフブックは堅牢性や耐久性のために天面に凹凸形状をほどこしており、それが長年受け継がれてきたアイデンティティとなっています。でも、事業部や開発の人たちは、そのアイデンティティに固執し過ぎているわけではありません。むしろお客様にとって良いことであれば、性能を担保した上でデザインをどんどん進化させてほしいという想いを持たれていて、デザイナーとしてはいろいろチャレンジさせていただける環境だと感じています。」

「ビジネスシーンの変化に合わせて、ビジネス向けPCのデザインも変わっていくべきタイミングだと考えています。働き方もテレワークが増え、オフィス空間も先進的になってきました。あらゆるビジネスの現場への馴染みやすさを考え、形状をノイズレスにして働く人がパソコンを開いたときに画面とキーボードだけに集中できるようにするなどの配慮が必要だと思っています。」


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使う人の意識を高めるデザイン。


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「タフブックの重点顧客は北米市場。主に消防、警察、ガス、電気、水道など社会のインフラに近い場面で使用されることが多いPCです。特殊な現場で、実際にどう使われているかを理解した上でデザインに落とし込むところに面白みを感じます。またプロの道具として自分がプロフェッショナルなんだというやる気を起こさせたり、専門機器を扱う信頼できそうな人という印象を与えたり、そういった役割も視野に入れてデザインをしていきたいと思います。」

「レッツノートは、これまで機能性を主張したデザインを踏襲してきましたが、これからは働く環境が変わります。あらゆる人がボーダレスにつながっていく時代で、働く人のモチベーションを高める道具とは何か。PCとしての性能は担保しつつ、環境になじみ、ユーザーが業務に集中できるデザインという考え方は基本に置き、例えば働く人の個性やアイデンティティを輝かせるにはどうしていくか。様々なテーマを調和させることにB to Bデザインの醍醐味を感じます。」


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日常生活では知り得ないことから始まる。


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「B to Bの分野はなじみにくいと最初は思っていました。また自分が知らない世界のプロの現場で使われるものをデザインできるのかという不安もありました。でも、大人の社会科見学じゃないですけど、業務を通じてでしか知り得なかった発見がたくさんあります。B to Bのプロダクトデザインは、表層だけの話ではなく、深く入って情報をつかまないと価値をつくることができないものばかりなので、そこがすごく面白いです。」

「セキュリティカメラのプロダクトデザインを担当していたときにイギリスに取材に行きました。その時に天井に付けられたセキュリティカメラを撮影してデザインの参考にしようと思っていたら、マッチョな警備員さん達がやってきて怒られそうになったこともあります(笑)。セキュリティカメラがどこにあるかなんて、一般の人にはわかりません。でも、逆に目につかないということが、B to Bにおける良いデザインの条件の一つとも思います。」

「例えば、タフブックを使ってインフラのメンテナンスをする方々がいらっしゃるので電気や水道やガスが普通に使える暮らしがあります。B to B向けのPCは、プロに役立つ道具であるとともに、その先のお客様の生活が良くなることにつながる製品だと思います。そういう意味で社会に少しは役立てているかなと思うとやりがいを感じます。」


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自分の領域を広げるチャンス。

「デザインを担当する部門にはプロダクトデザインのほかにも、UIやUX、サービスやビジネス、ブランディングなどデザインのプロフェッショナルメンバーがいて、各々がいろいろなプロジェクトに取り組まれています。全く自分が関わったことのない領域の仕事をされている方も多く、すごく刺激になります。お互いに役割が異なりますが、お客様のことを深く知り、そこから課題を見つけるという意識を共有している実感があります。お客様もまだ見えてない未来というか、今後の社会のあり方を描ける良い提案ができればいいなと思います。」

「今の部門では研修を通して学ぶ機会がたくさん用意されています。例えば、サービスデザインの視点を学ぶ講習会に自由に参加できたり、動画の絵コンテを作るためのレクチャーを受けたり、自分が得たい知識を蓄えやすい環境に置かせてもらっていると思っています。こういう世界もあるんだというきっかけはもちろん、深く知りたいって思ったら、それを知るサポートをしてくれる体制になっています。今後はデザイナーとして、全くのゼロからつくり上げるような先行的な領域にも積極的に関わっていきたいです。」


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■プロジェクトメンバー(左から) 
岸本 藍(デザイナー)
上原  菜月(デザイナー)