マイナンバーカードのスマートフォン搭載への挑戦!
デジタル庁様主導の世界でも先駆的な国家プロジェクトへ参画


マイナンバーカードのスマートフォン搭載への挑戦キービジュアル

2023年、国民の利便性向上と安全・安心な本人確認の両立を目的に新たなマイナンバーカードのスマートフォン搭載プロジェクトがデジタル庁様主導で始動。国際的にも先進的な取り組みの中、2025年6月、無事に国民向けサービスが開始された。パナソニック コネクトから参画したメンバーに、本プロジェクトの取り組みを聞いた。


メンバー紹介

中村 健一

中村 健一

パナソニック コネクト株式会社 技術戦略室 戦略企画部

長年、現在のパナソニックホールディングス 技術部門(研究所)にて、smartSD全社開発プロジェクト、NFCのAndroid対応、旅券・運転免許証・モバイルIDの国際標準化などに携わる。本プロジェクトでは、システム全体の要件定義および基本設計、業務系サンプルアプリの設計開発、検証ライブラリの基本設計を担当。


高橋 幸太郎

高橋 幸太郎

パナソニック コネクト株式会社 技術研究開発本部 ソリューションディベロップメント プロジェクト統括部

決済端末のソフトウェア開発、Androidスマートフォンのアプリケーション開発に携わるシステムエンジニア。本プロジェクトでは、マイナンバーカードのスマートフォン搭載における登録局の設計・開発、およびスマートフォンでの本人確認の新たな手段となる検証ライブラリ開発を担当。


垣江 道人

垣江 道人

パナソニック コネクト株式会社 現場ソリューションカンパニー  パブリックサービス本部 デジタルID&セキュリティ部 1課

PC、携帯電話 および SaaS分野におけるIT関連の企画・開発に携わるシステムエンジニア。本プロジェクトで、IACA(Issuing Authority & Certificate Authority)システムの設計・開発、グローバルベンダーマネージメントを担当。


松尾 晃平

松尾 晃平

パナソニック コネクト株式会社 現場ソリューションカンパニー  パブリックサービス本部 社会ソリューション事業担当 ビジネスデザイン3部 1課 課長

関西・四国地区の自治体向け営業として、無線システムやネットワークの推進による安心・安全なまちづくりと地域活性化に貢献。現在は、省庁向け営業組織にて、デジタル庁をはじめとする各省庁向け案件に携わる。本プロジェクトでは営業リーダーを担当。

国のDX戦略を体現する「マイナンバーカードのスマートフォン搭載プロジェクト」に参画。世界でも先駆的な取り組みにチャレンジ!

― はじめに、今回のプロジェクトの概要を教えてください。

松尾:国民の公的身分証明書であるマイナンバーカードを、スマートフォンに搭載するというものです。スマートフォンひとつで行政手続きや民間サービスへの申し込みができるようになり、コンビニでの証明書の取得や、医療機関や薬局でマイナ保険証として受付、e-TAXでの確定申告も可能になります。今後、利用範囲は拡大されていき、私たちの生活がますます便利になっていくことが期待できます。

参考:スマートフォンのマイナンバーカード|デジタル庁


松尾 晃平

スマートフォン1台あれば、いつでもどこでも簡単に手続きができるようになる。ストレスフリーな社会の実現に貢献したい。

― プロジェクトへの参加が決まった時の気持ちをお聞かせください。

垣江:国民の生活を変える、社会的意義の大きいプロジェクトで、非常にやりがいがあると思いました。
行政手続きは、手間がかかって面倒だと感じる方は多いと思います。例えば、転居や結婚、確定申告の際に、市役所に行って書類を集め、手書きで申請するのは負担に感じやすいものです。近年マイナンバーカードによるIT化で改善してきていますが、今回のプロジェクトによって、スマートフォン1台あればいつでもどこでも簡単に手続きができるようになります。より便利でストレスフリーな社会の実現に貢献できるので、挑戦しがいがあると思いました。

高橋:このプロジェクトに参加した当初、短期間で「マイナンバーカードのスマートフォン搭載を実現する」と伝えられた時、私の会社人生、約15年の中でも一番ハードになりそうだと思いました。
私自身、マイナンバーカードの便利さはすでに実感しています。マイナンバーカードと同等の情報がスマートフォンの中に入れば、とても便利になる。その世界が早く実現してほしいと思いながらプロジェクトに参加しました。


高橋 幸太郎

0から1を作ってきた人と、 1から100を作る人がタッグを組むことで開発期間を短縮。

― プロジェクトに参画することで期待された役割について教えてください。

中村:デジタル庁様は、マイナンバーカードをスマートフォンに搭載するにあたり、アメリカで運用実績のある「モバイル運転免許証」に使われている技術を参考にされたそうです。私が十数年前からモバイル運転免許証の国際規格の標準化に参画していたため、このプロジェクトにおいてその専門性を活かすことを期待されました。そのためシステム全体のグランドデザインと先行開発を任せてもらいました。モバイル運転免許証の国際規格のマイナンバー(個人番号)への応用は、世界でも先駆的な取り組みとなります。


― 国際規格の標準化への参画が、技術力の証明になるということでしょうか。

中村:例えば、この製品は「セキュリティが日本で一番高い」と認められても、あくまでも日本国内の話です。しかし、国際規格は、世界中の専門家が協力して作られた技術仕様となり、高い信頼性・安全性が担保されています。デジタル庁様は国際規格に準拠できるなら、安心して国民向けサービスに活用できるというスタンスだと思います。


― 国際規格の標準化と、実運用のサービスの開発では、異なる技術力が必要そうですね。

中村:そうですね。技術者の中でも、決められた仕様に対し創意工夫することが得意なタイプもいれば、0(ゼロ)から仕様を作っていくことが得意なタイプもいます。規格をつくるのは後者のタイプですね。

高橋:私が所属する技術研究開発本部は、先ほど中村さんが言われたような0から1を作るような先端研究開発をしている方が多いです。逆に事業部門の技術者は、商品自体を進化させたり、性能を向上させたりといった1から100を作る技術を研磨していくのが得意ですね。


― 今回、世の中にないものをつくるという点では、規格の標準化と事業開発の両方の技術力を持っていることが良かったのでしょうか。

中村:そうですね。0から1を作ってきた人と、 1から100を作る人が一緒に組むことによって、短期間で成し遂げるというチャレンジができたと思います。 一般的な場合は、誰が仕様や構成を決めたか分からず、聞く先もありませんが、今回は「これはこういうことで、こう決まった」という会話を内部でやり取りできました。開発時間はかなり短縮できましたね。


中村 健一

世界中の企業との共同開発では、各国の文化や商習慣、ソフトウェア開発手法の違いが顕著に。

― 国際規格を採用したプロジェクトであるがゆえ、世界中の企業と共同で開発をしたそうですが、海外企業の方々とどのようにチームワークを構築しましたか。

垣江:今回のプロジェクトの特長は、日本を拠点に海外の企業と一緒にシステム開発をする点でした。各国の文化や商習慣、さらにソフトウェアの開発の仕方も違うので、そこが非常に難しかったです。
当たり前の話ではありますが、相手の考え方やこだわっている点などをしっかりと理解するように心がけました。そのうえでリスペクトをもち臨機応変にコミュニケーションをとることで、徐々に信頼関係を構築できたと考えています。また、海外とのやり取りはどうしてもリモートのコミュニケーションが多くなってしまうので、できる限り現地に訪問し顔を合わせて信頼関係を構築し、チームワークを高めていくことを意識しました。


垣江 道人

既定路線のない中で、合意形成を得てプロジェクトを進める。 法整備と技術開発、そして社会実装のすべてが同時進行。

― 他に困難だった点はありますか。

松尾:社会インフラを変えるという大きなプロジェクトに営業の立場で関われたのはとても貴重な体験でした。私はこれまで、防災システムやネットワークといったシステム構築の営業推進がメインでした。そこには、ある程度確立された進め方があります。コンサルが設計し、事業者が受注、工程に基づいて調整・設置を行い、検査・完了という型です。しかし今回の開発プロジェクトは、そうした従来の枠組みにそのまま当てはめられるものではなく、大きなプロジェクトの中で、各ベンダーとのやり取りの前提が日々変わっていく。基本はウォーターフォール開発(各工程を順番に進める開発方法)ではあるものの、アジャイルな部分もあり、デジタル庁様や他のステークホルダーへのアウトプット・契約に落とし込んでいく。前例が無く、新しい枠組みで進める必要がある中で、合意形成を得ながらプロジェクトを進める点では難しかったですが、私にとっても大きな成長につながりました。

中村:政府向けの一般的な3〜5年のシステム開発のプロジェクトであれば、実証実験で課題を洗い出し、それを法制度に反映できます。さらに小規模な範囲でスタートして、徐々に日本全国に広めるという手順で進められます。しかし、今回は約2年間で開発して、いきなり本番。しかも開発しながら法整備も進められるので決まっていないことが多いという点が大変でした。法整備と技術開発、そして社会実装の全てを同時進行しなければならないということが、このプロジェクトの一番難しかったところだと思います。法制度をつくりながら開発するということはあまり経験がないですね。

垣江:今回短い期間内にクラウド上で稼働するシステムを開発しましたが、難易度の高いプロジェクトで、最初はどうなるのだろうと思いながらも、何とか日々食らいついて、キャッチアップしていきました。最終的には納期に間に合わせることができ、品質も高評価をいただきました。まさに「走りながら学ぶ」という感じです。様々なステークホルダーとやり取りしながらまとめ上げていくというのは、社内でもユニークなプロジェクトでした。

高橋:私は決済端末のソフトウェア開発の経験があったので、比較的すんなり入れました。ICカードの物理的な仕様や通信プロトコルは、それこそ国際規格で決められています。クレジットカードとマイナンバーカードは運営主体が違いますが、ICカードとしての情報を読んで処理するところは同じです。
今回のプロジェクトでは発行側を構築したので、その発行内容を検証するための検証側の仕組みも必要でした。検証側は、提示されたカードを読み取って、真正性や有効性を判断する役割で、過去に設計を経験した技術内容と非常に親和性が高く、私は吸収しやすかったですね。恐らく、垣江さんは難しかったのではないでしょうか。

垣江:そうですね。私はキャリア入社で、今回のような専門的なシステムの知識が必要な開発は初めての試みでした。日々悩み、調べながら進めました。ポイントとしては「新入社員になったつもり」です。どうしても年齢を重ねると、心が固まって新しく学ぼうという気持ちが無くなりがちですが、そこは良い機会だと思って、新入社員になったつもりで、初歩的なことも全て聞くようにして、キャッチアップして頑張りました。

中村:垣江さんがおっしゃった通り、何歳になっても学ぶ心をなくさないことが一番大事ですね。AIなどの新しい技術が出て、昔に比べて技術の進歩が早いからこそ、何歳になっても、新しい技術を吸収して、より良いものを作っていくということだけは忘れないでいただきたいですね。「私はこれが得意です。これなら負けません」という変化のないスタンスだと、そのうち世の中から置いていかれます。


中村 健一、松尾 晃平

サポートしつつ、突き放す。俯瞰的な知識を身に着け、各分野の専門家に。

― プロジェクトには全社から参画するメンバーを集めたそうですが、心掛けたことはありますか。

中村:今後のビジネスにつなげようと思ったら、高橋さん、垣江さんのように新しく参加してくれた技術者には、それぞれの分野の専門家になってもらわないといけない。そこで、サポートはしつつ、ある程度、突き放しました。きっと、冷たい人だと思われたと思います(笑)。

垣江:色々と学んだ中、恐らく中村さんにそういう意図があったと感じていました。質問した時にストレートな回答というよりは、逆に少し考えさせられるような問いかけをもらいました。ストレートな回答をもらえば、質問した分の知識は付きますが、周辺の課題や背景については考えないので、俯瞰的な知識は身につきません。逆に問いかけをもらうことで、より深く考えることができ、それによって成長できたところはあると思います。

高橋:私はどちらかというと、まず手を動かして試行錯誤しながら学ぶタイプです。しかし今回は、国際標準規格を読み込みながらシステムの動きを頭の中で組み立てるという、これまであまり経験のなかった進め方でした。国際標準規格のどこを見ればよいのか分からず苦労する場面もありましたが、中村さんの考える間を与えるという少し変化球なやり取りのおかげで、新しい視点を得ることができました。

中村:目の前のことだけをやっていると、考え方がその範囲で止まってしまう。先々まで考えるという気づきは、なかなかできないですね。


垣江 道人、高橋 幸太郎

デジタルIDの活用範囲をさらに広げ、マイナンバーカードのスマートフォン搭載による便利さを皆さんに享受していただくことが究極の目標。

― マイナンバーカードのスマートフォン搭載で、今後、私たちの生活がますます便利になりそうですね。

中村:マイナンバーカードのスマートフォン搭載は発行側の仕組みです。発行されたデジタルIDを皆さんが使い、便利さを享受していただくことが究極の目標です。当社の本人確認を行う事業者に向けたプラットフォームサービス「公的モバイルID認証サービス VeriMe(ベリミー)」の活用はその助けになります。デジタルIDの発行側の取り組みは序章に過ぎなく、今後は本人確認を行う様々なサービスを広げていきたいと思っています。

高橋:スマートフォンに搭載されたマイナンバーカードを実際に利用するためには、読み取る機能が必要となります。私たちは、正しく発行されているものであるか、そして、それを改ざんされていないことや、なりすましを見破れるようなアプリケーションを作っています。さらに、様々な使用場面も想定して開発しました。 例えば、役所や金融機関等で本人確認のためマイナンバーカードを対面で読み取ったり、国税電子申告・納税システム「e-Tax」で、オンラインの本人確認をスマートフォンを通して検証したりするようなアプリケーションです。

松尾:多くの事業者にマイナンバーカードをスマートフォンに搭載した時の利便性や安全性を享受いただけるよう、社会に浸透させたいです。顔認証技術と合わせてこの世界観をどんどん広げていきたいですね。

私たちのパーパス「現場から 社会を動かし 未来へつなぐ」を実践。

― プロジェクトでの大きな学びを契機に、日本社会のDXを支える仲間を増やしていきたいですね。

松尾:はい、今回社会インフラの大きなプロジェクトに参画させていただきましたが、パナソニック コネクトには社会的インパクトのある事業がたくさんあります。現場で使われるタッチポイントのプロダクトやサービスが多いからこそ、(自分たちの活動が)社会貢献できていると感じやすいと思います。実際に自分が関わった仕事が社会の中で使われていくことにやりがいを感じますし、自分がやったと胸を張って言える仕事も多いと思います。「社会を変えたい、社会の当たり前を作りたい」と思えば、現場から変えることができる会社だと思います。

垣江:社会を現場から変えていくことは、当社のパーパス「現場から 社会を動かし 未来へつなぐ」でもありますね。本プロジェクトはまさに、幅広いステークホルダー、それこそ世界中の企業と協業しシステムを作り上げ、よりよい社会の実現に貢献したと考えています。

高橋:パナソニック コネクトのグループには、Blue Yonderという世界的なサプライチェーンソフトウェアの会社もありますし、この4月からCEOが外国籍のKen Sainさんになりました。日本に留まらず海外で働ける環境もありますし、大小様々なプロジェクトがありますので、多様な技術を学べます。探求できる文化もあり、学ぶ環境も整えられていると思います。

中村:パナソニック コネクトという社名に象徴されるように、人と人がつながるという世界、モバイル端末を通じて様々なサービスを創造する世界で、私たちが開発した技術は、これからの世の中に欠かせないキーデバイス、キーサービス、キーコンポーネントになっていくと思います。利用価値はスマートフォン分野にとどまらず、ウェブサービスでも本人確認 あるいは 生体認証を使う場面は無限大にあります。無限の可能性のアプリケーションを探求してみたいと思っていただけたなら、一緒にデジタルIDの技術をやってみませんか。