東京都庁プロジェクションマッピング「TOKYO Night & Light」
2024年2月、東京の新たなランドマークとして、都庁を舞台にしたプロジェクションマッピング「TOKYO Night & Light」が誕生。
ポイント
- 世界最高輝度※のプロジェクターで都庁一面に明るく高精細に投影。
- 屋外の過酷な環境下でも安心の堅牢な筐体を開発。
- RAMSAオーディオシステムで没入感ある立体音響を実現。
- AcroSign®とリモートマネージドサービスを活用し、クラウドベースのフルリモート運用・ 管理体制を実現。
※150 kg以下(レンズ含まず)のプロジェクターにおいて。2019年11月時点、当社調べ。
背景
夜間の観光振興に貢献するエンターテインメントを
近年、都市部における夜の観光価値向上のため、プロジェクションマッピングを活用したイベントが世界でも注目を集めています。表現の進化も目覚ましく、コンテンツは日を追うごとに高度化。投影する機器においてもコンテンツの魅力を緻密に再現できる高い性能が求められています。一方で、高度な投影機器を扱えるスタッフの人材不足や、上映時の常時人員配置による人件費の増加が課題となり、オペレーションの円滑化も必要となっていました。
ソリューション
没入感ある空間演出をリモートで円滑に実施
世界をリードする芸術性の高い映像演出を実現するために、プロジェクターは世界最高輝度※を誇る50,000lmと30,500lmのモデルを計40台活用。細部まで計算された投影設計により、東京都庁という巨大な建造物へのダイナミックな投影を実現しました。また、映像と音声が一体化したイマーシブな空間演出を叶えるため、RAMSAラインアレイスピーカーを22台使用して臨場感ある立体音響を構築。それら全ての運用・管理は、デジタルサイネージソリューション「AcroSign®」と365日遠隔監視サービス「リモートマネージドサービス」の組み合わせにより、現場に人を配置せずにフルリモートで行えるようにしました。
システム概要
長年培った設計力と技術力で世界最大規模の投影を実現
都庁第一本庁舎の壁面13,904.956㎡へ40台のプロジェクターを使って投影するために、まずは投影面と設置場所の測量、それに合わせたCADデータの作成から始動。今回は建物の屋上への設置となったため、太陽光パネルやその他の既存設備を避けながらミリ単位でプロジェクターの配置場所、投写角度を検討しました。また、厳しい耐荷重の基準をクリアしつつ、耐震・防水・防塵といった屋外での過酷な環境に対応できる耐久性を確保するため、プロジェクターを入れる筐体を独自開発。これにより、プロジェクターの性能を最大限に生かし、長期間運用でも映像美を損なうことのない高効率なシステムを実現しました。
現場スタッフ不要のクラウドによるフルリモート運用
デジタルサイネージソリューション「AcroSign®」により、現地に人を配置することなく投影スケジュールに合わせて自動で上映される運用体制を構築し、リモートで運営を行っております。さらに、毎日のプロジェクションマッピングを行う上でプロジェクターの管理やメンテナンスは非常に重要となりますが、今回は「リモートマネージドサービス」を 活用することでプロジェクターにおけるトラブルの未然防止が可能に。現地のカメラ映像の確認とあわせ365日状態監視を行い、万が一プロジェクターにおけるトラブルがあればアラートが発報する保守サービスにより、常に最高品質の演出を観覧者へ届けられるようになりました。
納入機器
- 3チップDLP®レーザープロジェクター PT-RQ50KJ(50,000 lm) ×20台 PT-RZ34KJ(30,500 lm)×20台
- デジタルサイネージソリューション「AcroSign®」
- リモートマネージドサービス
- RAMSAラインアレイスピーカー WS-LA500AWP ×22台
- RAMSAデジタルパワーアンプ WP-DM948 ×4台/DM912 ×4台
- RAMSAデジタルミキサー WR-DX200DAN ×1台
TOKYO Night & Lightとは
東京都庁をキャンバスに、日本らしい多彩なアート作品を描写する「TOKYO Night & Light」。2024年2月には、最大の建築物へのプロジェクションマッピングの展示(常設)として、ギネス世界記録™に認定されました。
開催期間:平日・休日祝日とも上映(上映スケジュールについては下記をご参照ください。)
URL:https://tokyoprojectionmappingproject.jp/event/20240225/
※ギネス世界記録™:「最大の建築物へのプロジェクションマッピングの展示(常設)/ Largest architectural projection-mapped display (permanent)」、認定日:2024年2月25日
投影設計担当者の声
メーカーならではの細やかな投影設計で演出をサポートします
世界でも類を見ない規模の常設プロジェクションマッピングを設計するにあたり、SE、施工チームとともに今回のキャンバスとなる都庁の投影面を測量するところから開始しました。正確な建築図面があらかじめ用意されている屋内会場と違い、屋外で、まして都庁という巨大な壁面にマッピングで使用できるほど詳細な図面は存在していませんので、特殊なレーダーを使って窓枠の大きさから窓と窓の間の柱1本まで正確に測り、CADデータに落とし込んでいきました。このCADデータを元にテンプレートを作成しクリエイターへ提供することで、建物の形状にピッタリと合うコンテンツができるわけですから正確性は欠かせません。
同時に、プロジェクターを設置する場所の測量も行いました。今回はプロジェクター40台を使用して別の建物の屋上から都庁へ投写していますが、設置場所のスペースに限りがあったため、40台それぞれの映像が重なることのないよう、場所、傾き、筐体の中に収めるプロジェクターの角度などを細かくシミュレーションしていきました。特に、プロジェクターはどれだけ地面に対して平行に打つかが明るく綺麗に写すカギとなりますが、今回の設置場所は傾斜のある場所だったため傾きのシミュレーションはより細かく行いました。そうして導き出した数々の数値をもとに、13,904.956㎡の巨大壁面へ投写する設計図面が完成しました。
パナソニック コネクト株式会社 メディアエンターテインメント事業部 坂西 保昭
筐体開発担当者の声
堅牢な筐体で長期の常設でも高精度な投影を実現します
設計チームがつくり上げたデータを元に、我々筐体開発チームは40台のプロジェクターを収める筐体の製作を開始しました。30,000 lmのモデルは上下に2台重ねて投写するため2台入る筐体を、50,000 lmのモデルは1台入る筐体を、各プロジェクターの投写角度に合わせてゼロから製作していきました。特に今回は屋上への設置ですので、耐水、耐風圧、耐震性、耐荷重などの様々な問題をクリアしなければなりませんでした。それらの問題をクリアするためには、通常の材質では不可能と判断してアルミを使用することにしましたが、アルミを使う場合は高度な溶接の技術が必要になります。そこで今回は国内でも数少ないアルミの溶接を行っている会社とタッグを組むことで、軽量化と強度の確保に成功しました。
さらに、筐体の中にプロジェクターを収めた際、設計チームが算出した1台1台の角度で投写できるよう光軸回転試験を実施しました。上下に2台入れる筐体でも上と下のプロジェクターの投写角度は異なりますし、クロスして打つ想定のものもありました。少しでも角度が狂うと投影映像が変わってしまうため、特殊な検証機材を作成してプロジェクターの光軸に見立てたレーザーを発射し誤差が理論上の規定値以下になれば合格、といった形で40台全てのプロジェクターの光軸を決めていきました。そうして全ての筐体を完成させ、施工チームに託しました。
パナソニック コネクト株式会社 現場ソリューションカンパニー 田村 光一郎
施工担当者の声
ミリ単位の正確な施工で設計図どおりのマッピングを可能にします
建物の屋上にトータル400 kgほどの機材を複数回に分けて運び込み、当初測量した通りの場所に設置していきますが、ここでズレてしまうとプロジェクションの精度が落ちてしまうため設置時にも繰り返し測量を行い、投影設計チームにフィードバックしながら想定位置との差が1ミリ以下になるよう調整を重ねていきました。これらの工事を期限内に完了すべく、チーム一丸となって迅速に進めました。パナソニックの強みはやはり製品を販売するだけでなく投影設計から筐体開発、施工、そして運用サポートまで全てのチームが連携しながら実施できることだと思います。施工チームも他のメンバーがつくり上げた理想の形を正確に再現できるよう、技術力を結集して工事に臨みました。
また、音響においては仮設設置から立体音響にするためのスピーカー設置工事を行いました。ここでも耐震性や耐風圧を含め、東京都様ならではの厳しい安全基準をクリアしながら、施設の軒下に2台1組のラインアレイスピーカーを11式吊り下げ設置しました。グレードアップした音響で今後さらに没入感ある体験をお届けできると思いますので、多くの方に観に来ていただきたいですね。
パナソニック コネクト株式会社 現場ソリューションカンパニー 吉井 雅裕
プロジェクトマネージャーの声
ワンチーム・ワンストップでお客様をサポートします
お客様のご要望をシステムで具現化するためのコンサルティングや設計、機器製作から設置施工、運用・保守に至るまで、ワンストップでサポートできるのが当社の強みであり、お客様からご評価いただいたポイントになります。
特に常設型でプロジェクションマッピングを実施する場合、お客様にとって最も課題となるのが運用中の人員配置かと思います。毎日同じ時間にプロジェクターの電源を入れ、上映時間ぴったりに開始のスイッチを押す。今回の「TOKYO Night & Light」のように1日複数回の上映で、コンテンツも異なる場合は一層大変です。そこで当社では、デジタルサイネージソリューション「AcroSign®」により、それら全ての作業を自動化し、無人でプロジェクションマッピングが上映できる仕組みを構築しました。これにより主催者様の手間は実質ゼロとなり、人件費が削減できるとともに人為的ミスも防ぐことが可能です。
それから、常設型のプロジェクションマッピングでもう1つ課題としてあげられるのが、長期間屋外に置きっぱなしとなるプロジェクターの点検・保守問題かと思います。特に今回は設置から5年間は常設する予定ですので、春夏秋冬どんな環境下でも確実に動作する稼働の安定性が求められます。そこで、パナソニック独自の新サービス「リモートマネージドサービス」を活用し、365日のオンライン監視を実施。機器の稼働状態に異常がないかをプロの目で確認し、さらに、万が一異常があった場合はアラートが発報して最も近くにいる保守チームが駆け付けます。
この「AcroSign®」と「リモートマネージドサービス」の組み合わせで、微細なエラーも見逃さず365日プロジェクターの性能を最大限に発揮する映像演出が可能になりますので、今後常設型のプロジェクションマッピングをお考えの方には自信を持ってお勧めしたいですね。
パナソニック コネクト株式会社 現場ソリューションカンパニー 大里 剛史
都庁プロジェクションマッピングを担当したチームパナソニックのメンバー
3チップDLP®レーザープロジェクター PT-RQ50KJ
50,000lm※1の世界最高輝度※2と繊細な色再現が可能にする新たな空間演出。
※1 工場出荷時における本製品全体の平均的な値を示しており、JIS X 6911:2015 データプロジェクタの仕様書様式に則って記載しています。測定方法、測定条件については附属書Bに基づいています。
※2 2019年11月現在。150kg以下(レンズ含まず)のプロジェクターにおいて。当社調べ。
3チップDLP®レーザープロジェクター PT-RQ35Kシリーズ
30,500lm※1の明るさ、最大4K解像度、赤色・青色レーザーによる美しい色再現を世界最小最軽量※2ボディに集結。
※1 工場出荷時における本製品全体の平均的な値を示しており、JIS X 6911:2015 データプロジェクタの仕様書様式に則って記載しています。測定方法、測定条件については附属書Bに基づいています。
※2 2020年12月現在。26,000 ~ 35,000 lm のレーザープロジェクターにおいて。公称の質量および外形寸法値に基づいています。
デジタルサイネージソリューション「AcroSign®」
ディスプレイやプロジェクターなどの映像表示機器を使用してタイムリーかつ効果的に情報を発信する、パナソニックのデジタルサイネージソリューション。