エスコンフィールドHOKKAIDO
株式会社ファイターズ スポーツ&エンターテイメント様
課題
かつてない演出を届ける新球場をつくるために、高度な映像演出に対応できるシステムが必要。
解決策
多様なシステムとの連携が可能で、ハイレベルな映像演出が行えるIT/IPプラットフォーム「KAIROS(ケイロス)」を軸に、映像・照明・音響が連動した総合演出システムを構築。
KAIROSの自由度や、空間全体の中で様々な演出が行える点は非常に魅力的です。私たちが思い描いた演出を実現できるシステムです。
背景
スタジアムの常識を覆す、世界に類を見ない球場が誕生
2023年3月、北海道日本ハムファイターズの新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」が誕生しました。世界最大級の大型ビジョンを2面備えた本球場では、映像・照明・音響が連動した圧巻のパフォーマンスで試合を盛り上げていきます。また、どこからでもフィールドが望める360度回遊型コンコースには様々な飲食店が立ち並び、場内につくられたホテルや温泉施設・サウナからも生の野球観戦ができるという世界初の球場となっています。そんな“これまでにない観戦体験”を届ける演出設備に、「KAIROS」を軸にした総合演出システムが採用されました。
導入システムの概要
高度な演出を効率的なオペレーションで実現
横幅86mの大型ビジョンを生かした映像演出を行うために、16:9という従来のアスペクト比にとらわれないコンテンツ制作が必要でした。そこで、自由な画角・解像度で直感的にレイヤーを重ねられるIT/IPプラットフォーム「KAIROS」を採用。また、球場内のどこにいても没入感ある観戦体験ができるよう、場内に約600台のデジタルサイネージを設置し試合の様子をリアルタイムに配信できるようにしました。それらのシステムは統合マネジメントシステム「S-CMS」で一元管理し、照明や音響設備とも連携した効率的なオペレーションを実現しました。
導入後の効果
KAIROSの自由度がダイナミックな球場演出に貢献
KAIROSはCPUやGPUで映像処理を行うため、ME数やKEY数に制約されないマルチレイヤー構成が可能な新しいコンセプトのライブスイッチャーです。また、自由な画角の素材を扱えるため、従来のライブスイッチャーでは不可能だった特殊なアスペクト比の映像出力が可能です。KAIROSを使った球場演出について、株式会社ファイターズスポーツ&エンターテイメント 執行役員・事業統轄本部エンターテイメント統括部 部長の森野様は語ります。
「このスタジアムだからこそ実現する新しいことをやらなければならないと考えた時に、システムのテーマとして掲げたのは“拡張性”と“自由度”でした。球場演出は、日進月歩の技術進化で常に新しい体験をお客様に届けていかなければなりません。お客様にとってチームが勝つ喜びはもちろん、何度来ても一瞬一瞬心に残る観戦体験が大切だと思っています。KAIROSを初めて見た時、画角にとらわれない自由度の高さや設計思想が純粋に面白いと思いました。そして、エスコンフィールドの進化に対応していける将来性を感じました。また、以前の球場ではスイッチャーが複雑なために技術スタッフがオペレートしていましたが、直感的操作が可能なKAIROSを導入したことで、現在は制作スタッフがオペレートを行っています。制作スタッフが“こんな演出をやりたい”と頭の中にイメージしていたことを、自らの手で観客に届けることができ、そういう意味でも自由な映像表現が可能になりました」
独自システムとシームレスに連携しリアルタイム演出を実現
リアルタイムな映像演出の核となるのは、ファイターズ スポーツ&エンターテイメント様とサイトフォーディー様が共同開発した「METABALL(メタボール)」と呼ばれるシステムです。METABALLはスポーツコーダーやCG装置などが一体となった独自システムで、今回はMETABALLの信号を「KAIROSコントロールプロトコル」で受け、KAIROSが自動で作動するマクロを構築しました。株式会社サイトフォーディー代表取締役の隈元様は語ります。
「エスコンフィールドは、場内のどこにいても臨場感ある観戦体験ができることをテーマにしています。例えばホームランやファインプレーが出た時など、大型ビジョンはもちろん場内約600台のデジタルサイネージも一斉に切り替わり演出を行います。しかし、試合中に起こる出来事はいつも予測不可能です。KAIROSコントロールプロトコルを使えば、窓の外の試合の動きを追っているCGチームが『METABALL』から“ホームラン”という指令を出すだけで、KAIROSが各ビジョンやサイネージへ自動で表示してくれます。従来型のスイッチャーであればその瞬間を狙って複数のスタッフが同時に操作しなければならなかったところを、KAIROSの高いシステム連携力のおかげで、ワンオペレーションでリアルタイム演出を実現できるようになりました」
約600台のサイネージに0.5秒以下の低遅延で映像配信
場内に導入した約600台のデジタルサイネージには試合の様子や球場演出、広告などが表示されます。その制御システムにCATVソリューション(CATVヘッドエンド技術)を活用することで、わずか0.5秒以下の遅延での多チャンネル配信を実現しました。これにより、ホームランが出た時などは球場内の生の歓声とほぼ同時にコンコースやレストラン、温泉などすべてのサイネージにライブ映像を配信することができます。森野様は語ります。
「席に座って観戦するのも1つの楽しみですが、エスコンフィールドは様々な場所から野球を楽しんでいただける球場なので、場内各所に約600台ものサイネージを設置しました。低遅延での配信は当初から大きな採用条件としていましたが、パナソニックさんのデジタルサイネージシステムは0.5秒以下で表示できるため、時間差を感じさせずに熱狂を共有できるようになりました」
統合マネジメントシステムで各システムを一括管理
約600台のデジタルサイネージは、コントロールルームに導入した統合マネジメントシステム(S-CMS)のタッチパネルから一斉に電源のON/OFF操作が可能です。また、万が一のトラブル時にはアラートが出るなど全てのサイネージの状態監視を行っています。さらに、統合マネジメントシステムはKAIROSや大型ビジョン、照明システム、音響システムとも連携しており、映像と光と音が融合した総合演出がスムーズに行えるようになっています。森野様は、「統合マネジメントシステムと各システムの連携によって業務が効率化され、必要なスタッフの数は減りました。しかし我々は常に新しい球場演出の創造を目指していますので、人員を削減するのではなく、次なる挑戦に力を注いでいきたいと思います」と語ります。
お客様の声
世界がまだ見ぬボールパークを、一緒につくり続けたい
KAIROSをはじめ、パナソニックさんのハード・ソフトの強みは今回とても強く感じました。そして何よりも、親身になって一緒に新しいものをつくろうとしてくれた皆さまの力が一番大きかったと思います。私たちは、お客様に常に新しい観戦体験を届けるために、これからもゴールのない旅を続けていくのだと思います。「世界がまだ見ぬボールパーク」であり続けるために、この先もパナソニックの皆さんと一緒になってエスコンフィールドをつくり上げていきたいと思います。
お客様にとって一生の思い出となる球場演出を
今回のプロジェクトは、長い時間をかけてパナソニックさんとワンチームで進めてきました。パナソニックさんの工場内にエスコンフィールドのコントロールルームと同じ配置で部屋をつくっていただき、完成形をイメージしながら、ともに構築していきました。いよいよ開幕となりますが、私たちはこれからも止まらず進化を続けていきます。KAIROSもこれからどんどんアップデートをしていくと思いますので、ともに成長を続け、お客様に一生の思い出を持って帰ってもらえる球場演出を追求していけたらと思います。
納入機器
IT/IPプラットフォーム KAIROS
- メインフレーム Kairos Core 1000 (AT-KC1000T)×2
- メインフレーム Kairos Core 100 (AT-KC100T)×2
- コントロールパネル Kairos Control (AT-KC10C1G)×1
- GUIソフトウェア Kairos Creator (AT-SFC10G)
コントロールルーム映像システム
- ルーティング スイッチャー AV-WM7300×1
- ペリフェラル AV-PF3000シリーズ
- ペリフェラル AV-PF8000シリーズ
- 液晶モニター/HDモニター×21
カメラシステム
- 4Kスタジオカメラ AK-UC4000×2
- メモリーカード・カメラレコーダー AJ-CX4000GJ×1
- 4Kインテグレーテッドカメラ AW-UE80K×1
- 屋外対応HD インテグレーテッドカメラ AW-HR140×3
統合マネジメントシステム
- 統合マネジメントシステム S-CMS×1
デジタルサイネージシステム
- 高度ReMUX CATVヘッドエンドシステム
- セットトップボックス
場内デジタルサイネージ用ディスプレイ
業務用ディスプレイ×約600台
- 4K UHD液晶ディスプレイ SQシリーズ(98v型)
- 4K UHD液晶ディスプレイ EQシリーズ(75v型・65v型・55v型)
- 4K UHD液晶ディスプレイ CQシリーズ(65v型・55v型・50v型・43v型)
- マルチスクリーン対応 超狭額縁液晶ディスプレイ LFV9シリーズ(55v型)
- 堅牢液晶ディスプレイ XF1Hシリーズ(49v型)
- フルハイビジョン液晶ディスプレイ EFシリーズ(32v型)
プロジェクター
- 1チップDLP®レーザープロジェクター PT-RZ890JLW×1
- 液晶ランププロジェクター PT-VX430J×2
- 液晶ランププロジェクター PT-TW381RJ×1
お客様紹介
“世界がまだ見ぬボールパーク”を。
新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」の周りには「北海道ボールパークFビレッジ」が広がり、グランピング施設やアスレチックパーク、分譲マンションなどが建設されています。目指したのは“共同創造空間”。地域住民をはじめここに集うすべての人とともにつくり上げる、まさに世界がまだ見ぬボールパークが誕生しました。