なぜ「DEI」なのか? すべての人が尊重される健全な風土からしか競争力は生まれない
私たちパナソニック コネクトは、前身のパナソニック株式会社 コネクティッドソリューションズ社の時代から事業戦略の柱の1つとして「DEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)」浸透に取り組んでいます。なぜ私たちがDEIに注力しているのか。執行役員 プレジデント チーフ・エグゼクティブ・オフィサー(CEO)の樋口泰行が、その思いやこれまでの活動からみえてきた課題感を語りました。それに対する現場の社員からのコメントや樋口とのやり取りをとおして、パナソニック コネクトにおける実践内容をご紹介します。
なぜ「DEI」を推進するのか?
私たちパナソニック コネクトは「DEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)」に本気で取り組んでいます。その根幹にあるのは、「人権の尊重」です。マイノリティを尊重し、心理的安全性を確保すること。国籍・年齢・性別などを問わずすべての人の人権を尊重するために、フェアな労働環境、差別のない職場でなくてはなりません。
そのような多様性がある環境は、意思決定の質や生産性を向上させ、クリエイティビティを生み出します。これは「企業価値の向上」にもつながります。競争力をさらに強めていくために、マイノリティをリスペクトする意識を醸成して心理的安全性を確保するなど、フェアな労働環境を整える必要があるのです。これまで、企業の存続をかけた重要な取り組みであるという認識のもと、「DEI」を事業戦略の柱の1つに位置づけて推進してきました。
以下は、CEOの樋口泰行が、全社に向けてDEIに取り組む意義を語った内容です。
「2018年からDEIの推進に本気で取り組んできて、社内のみならず、社外の方からも『本当に変わった』と言っていただける機会も増えました。会社全体としてかなり意識が高まってきたと思います。
一方で、まだまだこれからとも感じます。現状、パワハラやセクハラを完全に撲滅したわけではありません。ハラスメントは“人権の侵害”であり、企業の存続にかかわることだという危機意識を一人ひとり持たなくてはいけません」(樋口)
変革のカギとなるのは、「影響力やパワーを持つマジョリティ」と「高いポジションの管理職」だと樋口は言います。
「2023年3月時点で、社員 の半数以上が50代以上で、8割以上が男性。管理職にいたっては94%が男性です。DEIを実現するうえで、これらの方々の意識や行動が非常に重要になってきます」(樋口)
マジョリティ側の意識や行動を変えていくために、全従業員 向けのアンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)についての研修や、組織を管理する責任者を対象としたDEI研修を実施。そのほかにも、障害のある方へのヒアリング、介護と仕事を両立するための支援にも着手しています。
「DEIの意識改革のために、プログラムや施策などさまざまなものを進めていますが、結局上司の正しいトーンセッティング がなければ意味がありません。だからこそ、管理職のマインドチェンジは必須だと感じています」(樋口)
また、個人を尊重する企業になるためには、従業員 それぞれのマインドチェンジだけでなく、企業の制度を変革していかなくてはなりません。私たちは、DEIを浸透させるためにハラスメント対策なども徹底していきます。
「DEIに対する意識を変えるときには“個人が納得して自律的に変わる”か“トップダウンで強制的に変える”かの2パターンがあると考えています。“トップダウンで強制的に変える”というのは、マインドではなく、行動から強制的に変えるということです。変われない層に対しては、妥協なく働きかけていきます。
これからさらにDEI改革を進めていきますが、その実現にはダイナミックで柔軟なカルチャーやマインドが不可欠です。今後も地道な努力と強い決意で、全員の力を借りながらどんどん良い会社にすることを目指します」(樋口)
全社に向けてDEIに取り組む意義を語ったCEO樋口。これを受けて、社内を対象に樋口への質問を匿名で募集しました。
ここからは、その回答をご紹介します。
「ビジネスにおいて、“多様性”が強みになると体感した具体的なエピソードを教えてください
「現職に就いて、他社から責任者を採用したときに、違うバックグラウンドを持つ人の視点によって今までなかったアイデアが生まれることを実感しました。それまで外部からの責任者として招くというスタイルの採用をしていなかったのですが、以前に比べて社内の考え方も多様で先進的になったと思います。 これは受け入れる側にも学ぼうという姿勢があったからこそで、もし受け入れる側もインクルーシブな考え方でなかったら変化は起こっていなかったでしょう。多くの従業員 も体感してくれていると思いますが、カルチャーもこれまでとは明らかに変わりました」(樋口)
「今後、(他社事例も参考にしつつ)取り組みたいと思っていることはありますか?」
「たくさんあります。1つ目は、女性構成比率の上昇です。年々上がってきてはいるものの、管理職比率は男性が多いのが現状です。そのため、女性管理職候補の育成プログラムをさらに強化していきます。直近では、女性課長クラス向けのコーチングプログラムを実施しました。2035年の目標である“女性管理職比率30%”に向けてこれからも取り組んでいきます。
2つ目は、障がい者雇用の改善です。現状は、担当する仕事が製造系にほぼ限定されています。事務なども含めて、さらに幅広くチャレンジしてもらえるように環境を整備したいと考えています。
3つ目は、LGBTQ+に配慮できる環境の整備です。コネクトでも、“同性婚を含む事実婚を法律婚同様に扱う”という社内規定を2016年4月から設けていますが、外資系企業などと比較すると依然として多く課題が残っていると感じます。そもそもカミングアウトしている人がほとんどいないのは、カミングアウトしにくい環境であるということでしょう。
まだ意識が追いついていない人が多いため、ハードルが高い分野ではありますが、メッセージの発信を強化していきたいと考えています。こういったあらゆるマイノリティーに対しての配慮はビジネス以前に、人間としての当たり前の優しさとして備えられるべきだと思います。
変われない人に対する1段階めのアプローチとして、まず「これはやってはいけないことだ」というフィードバックが必要です。そのうえで理解を深め、配慮の心を身につけてもらうという2段階で考える必要があるでしょう。まだまだ、やるべきことがたくさんあります」(樋口)
現場の声から「DEI」を考える
DEIを浸透させるためには、トップダウンでの呼びかけだけでなく、従業員一人ひとりの意識と行動も重要です。
ここからは、社内を対象に匿名で募集した、カルチャー変革やDEI活動への感想をご紹介します。
社内のカルチャーや制度の変化に対する実感
「体感しやすい変化(ドレスコード廃止、Teamsの導入など)により、非効率なことはやめ、新しいことにチャレンジする思考になってきました。自分の仕事の範囲だけではなく横とのつながりも以前より生まれやすくなったように感じます」
「自分の考えを声に出していい、チャレンジしてもいい、というカルチャーになってきています。単に方針として説明されるだけだと一歩踏み出しにくいこともありましたが、周りでそういう動きが実際にあることを見て、マネジメント層から繰り返し発信がされることで、そういった空気感が醸成され、定着しはじめていると思います」
「男性育休の制度や取りやすさは良くなったと思います。ここからさらに、独身の方やその他の理由でも、フレキシブルに休めてそれを認め合うカルチャーに早くなってほしいです」
アンコンシャスバイアス研修・DEI研修で得た気づき
「自分の物の見方にバイアスがかかっていることを意識できたことがなによりも大きいです。例えば海外出張をお願いするとき男性従業員を優先していたが(女性に気を遣っているつもりだった)、“機会を奪う”ことになっていたと気づきました」
「女性自ら“男性の仕事をサポートするのが女性の仕事”と考えている人がまだまだ居ます。男性だけでなく女性もしっかり意識を変えていくべき問題と思いました」
理想のDEIとは?
「今までDEIとしてよく取り上げられてきたものは、女性活躍やLGBTQが多かった気がするのですが、外国人や障がいをお持ちの方、当事者でなくとも家族に要介護者がいる方など、もっと幅広く本当の意味でDEIが実践されていけばいいなと思いました」
「自信が無くて遠慮や謙遜をしてしまう方たちが、会社の中で自信を持てるようになってほしいです。できないことではなく、できたことに対する評価や感謝や称賛がもっと当たり前に行われるカルチャーになれば、自己肯定感、自己効力感の向上につながると思いました」
国籍・年齢・性別などを問わずすべての人にとってフェアな環境づくりに取り組むことで、互いに認め合い、イノベーションを創出するカルチャー変革にドライブをかける。私たちパナソニック コネクトは、すべての人が尊重される社会を目指してこれからもDEI活動を推進していきます。