パートナーレポート

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近年、オフィス・ビルにおいてICカードやスマートロックなどによるキーレス化が進む一方、非常時の対応や、コスト、利便性の点からキーレス化に適さない鍵も多く存在し、従来の物理的な鍵も使用され続けています。また、新型コロナウィルスの感染拡大に伴う人々やビジネス様式の変化や、労働人口減少による人手不足の加速など深刻な社会課題への対応も急務となっています。
そのようなニーズにお応えするため、「鍵管理システム」をはじめとしたフィジカルセキュリティで業界トップクラスのクマヒラグループと、世界最高水準の顔認証技術を持つパナソニック コネクトが新たなサービスの事業化に向けて共創を開始。共創のとりくみに加え、製造業として100年を超える企業の両社の課題や目指す姿などについて、株式会社熊平製作所の専務取締役 川中様、株式会社クマヒラのセキュリティ事業本部取締役本部長 伊藤様と、パナソニック コネクトの営業担当  萱野、開発担当  植月を取材しました。


フィジカルセキュリティ業界トップシェアのクマヒラグループの事業と目指す姿


川中:クマヒラグループの製品の開発、製造を担当している熊平製作所の川中です。我々は、もともと金融機関向けの金庫設備がメインで始まった会社ですが、現在では、セキュリティシステムが売り上げの半分を占め、また、原子力発電所などで使用する放射線遮蔽、防爆・防護など特殊な性能を付与した「特殊扉」、テロ対策に向けた持ち物検査装置などの世界にもチャレンジしています。

熊平製作所は創業125年の歴史がありますが、鍵管理システムやセキュリティゲートなどのシステム製品においても30年以上の歴史があります。海外のシステムをはじめて日本にとり入れるなど、昔から粘り強く推進していく中で培った様々なノウハウが強みだと思っています。また、ハードウェアもソフトウェアもともに内製化していることも強みの一つで、互換性のある製品を長年提供させて頂いています。

目指す姿としては、オフィスビルが建てば必ず当社のシステムが入るというように、セキュリティインフラとして世の中に当たり前に入っていく形を目指しています。お客様のニーズが多様化してきており、自社だけでは実現できないものを、どのようにしたら他社さんにご協力頂けるか、どうすれば、シームレスに開発ができて、お客さまにとって使いやすいものになるか、というところが今の課題と思っています。


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株式会社熊平製作所 製品開発部 専務取締役 川中基至様


伊藤:私は、クマヒラグループの販売会社である株式会社クマヒラで、セキュリティ事業を担当しています。弊社の展開事業は5つございます。1つ目が金庫などの金融機関向け設備事業、2つ目が入退室管理システムや鍵管理システムを中心としたトータルセキュリティ事業、3つ目が店舗設計などを行う空間デザイン事業、4つ目が文化財保存設備事業、5つ目が原子力発電所やインフラ施設向けの特殊扉事業になります。

我々は、熊平製作所が製造する製品をはじめ、お客様の要望や課題に対して、他社の製品やサービスをインテグレートして提案を実施しますが、そのエンジニアリングやメンテナンスサービスを付加価値として提供し、長期的な運用を支えることができるという点を強みだと思っています。現在、5つの事業に対するコンサルタント業務、クラウド事業のサービスインや、オープンイノベーションによるサービスベンダー化を目指して事業を進めています。課題は、人材とリソースの問題で、インサイドセールスの仕組みづくりに向けて、お客様とのつながりを深める教育を、また、サブスクに関しては、熊平製作所と協力をしながら、社内システムの改定や技術的、業務的なリソースの確保などを進めています。


パナソニック コネクトの事業と目指す姿


萱野:パナソニック コネクトは、昨年4月にできた会社で、パナソニックグループの中でBtoB事業の中核を担っており、「現場から 社会を動かし 未来へつなぐ」というパーパスを掲げております。レッツノートやプロジェクターなどのハードウェアに加え、我々現場ソリューションカンパニーでは、SIやエンジニアリング部門もふくめたソリューション事業を展開しています。官公庁から法人企業まで幅広いお客様とお取引させて頂いていて、いわゆるメインフレームを導入するメーカーではなく、お客様の現場に寄り添って、お客様とともに課題を一つ一つ解決をしていくということを目指しています。

今回、クマヒラさんと共創することで我々だけでは実現できなかった「顔認証・鍵管理サービス」をリリースさせて頂きました。このように様々な分野で、パートナー企業様と強みを出し合い、お客様の経営課題や社会課題の解決にむけた新しい価値をつくる共創のとりくみをすすめております。


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パナソニック コネクト株式会社 映像メディアサービス本部
営業総括部パートナー担当 ダイレクター 萱野 実


セキュリティカメラの販売から始まった共創活動


川中:もともと、販売会社であるクマヒラが20年以上前からパナソニックのセキュリティカメラや、当社のレコーダーと接続したセキュリティシステムを販売させて頂いています。以前、虹彩認証システムとも連携したこともあり、今回新しく顔認証技術を開発されたとういうことで、どちらからということもなく必然的に一緒に連携がはじまったという感じでした。

狙いはやはり、双方の得意なところをあわせて、お客様のニーズにお応えしていくというところで、お付き合いが長いこともあり、必ずうまくいくだろうという期待もありました。

伊藤:かつては市場で競合することもありましたが、やはりカメラの業界でパナソニックさんは勢いがあり、IPカメラになった瞬間に、流れはパナソニックさんに向いた感じでした。もっというとパナソニックさんのカメラを取り扱わなければ、われわれのセキュリティビジネスはここまで伸びなかったとも思います。販売台数も増えきて、販売目標を一緒にたてるような存在になり、今はカメラにとどまらずその領域がどんどんどん広がってきています。

萱野:逆に、金融業界はセキュリティカメラの大きなマーケットの一つなのですが、我々で、直接開拓するのは難しく、その業界に強いクマヒラさんのお力を借りることで、参入できたというメリットがありました。


同じ製造業ですすめる共創プロジェクトで得たもの


伊藤:自社の新製品やサービスのリリースは、熊平製作所が主体となって企画して、実際に販売会社に試作機を見てもらい、評価して要望を出すという流れですが、今回、パナソニックさんでは、開発の人だけでなく、プロモーションの連携や勉強会の企画など営業やマーケティング部門が主体となって体系的に事業開発プロセスをリードされているというのが新鮮で、とても勉強になりました。


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株式会社クマヒラ セキュリティ事業本部 取締役本部長 伊藤幸夫様


植月:開発の立場から申し上げますと、今回、お互い製造業百年以上の会社ということで、それぞれに設計のポリシーや品質に対するこだわりがすごくあるので、うまく進められるかという懸念があったのですが、余計な心配だったようです。開発をすすめるにつれて、考え方やカルチャー、価値観みたいなところが似ていると感じるところが非常にありました。文化の違いで刺激を受けるのもよいですが、それが過ぎてしまうとなかなか進まないので、その辺りのお互いのバランスが非常によかったと思います。特に、ほとんどオンライン会議で進めていたにもかかわらず会話に違和感がなく、社内のメンバーと議論してるような感じで、クマヒラさんのプロジェクトリーダーの判断が早いこともあり、とてもスムーズにすすみました。

川中:やはり同じ技術者なので大変な部分や苦労をしている部分もわかるでしょうし、変なこだわりもなく、純粋にお客様にとって良い仕組みを検討できたのだと思います。ハード、ソフトともに開発している両社だからこそ、同じ目線ですすめられたのではないでしょうか。

植月:お客様視点はすごく大事で、目的が同じであれば少々意見がぶつかっても最終的な答えは出しやすいですし、そういう意味で、しっかりお客様の方向をみて開発できたのだと思います。また、物売りではなく、クラウドサービスを展開するという目指すビジネスの方向性もあっていました。今回、お互いゼロから開発する製品ではなく、すでに完成した製品の展開というなかで、こうした目的を達成するというのは決して簡単なことではなかったと思います。その限られた条件の中で、両社で知恵を出し合って、よい商品ができたのは、本当に良かったと思っています。


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両社で商品化した「顔認証・鍵管理サービス」


伊藤:共創とは別なところですが、「DX交流会」という形で、私どもの社長及び関連メンバーと、カルチャーや働き方改革について意見交換会を行い、ご指導頂けたというのもよかったと思います。パナソニックさんにはPC利用時間管理システムや勤怠管理システムをなどのビジネスツールを提供いただいており、社内改革を推進できたのにはとても感謝しています。

また、カルチャーという面では、パナソニックさんは、たくさんの女性社員が活躍されており、そういったところも見習うべきと思いました。

萱野:ビジネス以外で働き方改革や企業風土までを一緒に語れるパートナーさんは、それほど多くいるわけではありません。今回、当社も人事や情報システムなど、営業やSE以外の担当も参画させて頂き、お互い刺激になってすごくよいとりくみができました。そういった関係になれたのは、我々としても非常に良かったと思っています。

また、クマヒラさんから特に見習うべきと思っているのは、市況やニーズにあわせた開発のスピード感です。クラウド事業にシフトしていくという方針を出されてからすぐに、SPLATS(スプラッツ)※を発売され、アルコール検知に関しても法制度化されるタイミングにあわせてSPLATSとアルコールチェッカーとの連携サービスをリリースされている。そういうチャンスを逃さない姿勢は、我々も学んでいきたいと思っています。


両社の今後の共創の展開と目指す姿


川中:当社は、他社さんとも様々な連携を行っていますが、本当にお客様に使いやすいシステムを構築できたという例は実はあまり多くはないのです。我々が得意とするお客様のニーズはできるかぎりお伝えしますので、生体認証を提供されている企業のみなさまにはそのニーズを汲み取って頂き、一緒に最適な商品を作っていきたいと思っています。今回の共創で、お客様視点で共に開発ができるベースがある程度できたと思っていますし、他のテーマで連携するときにも活かせるように継続できればと思っています。我々も、今後もパナソニックさんの顔認証と連携して、世の中のお役に立てればと思っています。

伊藤:そうですね。ビジネスとしては、クマヒラ以外にも拡販されていますし、我々も同じで他社さんと共創してビジネスは展開していきますが、やはりパナソニックさんは、スペシャルだと思っているので、何かあれば一番にご相談して頂けるような力を今後もつけていきたいと思います。

植月:ありがとうございます。実際、顔認証・鍵管理システムのリリース以来、展示会や商談でかなり色々なニーズが出てきています。例えば民泊やレンタカーなどのシェアリングサービスなど新たな市場や、警察の装備品や医療の薬品など、鍵以外のモノの管理という使い方や、コロナ禍での非接触対応、安心安全のニーズに加え、人手不足への対応も急速に高まっています。具体的な案件の導入はもちろんですが、我々、エッジや、センシング、ネットワーク技術なども持っていますので、また、新しい価値の創造にむけて、今後も是非一緒にすすめさせて頂けたらと思っています。


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パナソニック コネクト株式会社 パブリックサービス本部
センシング総括部サービスマーケティング部シニアマネージャー 植月 浩二


製造業として、企業として、未来につなぐために大切にしたいこと


川中:やはり「人」だと思っています。人をどう育てて発展させていくか。例えば当社の125年の歴史においても、新しい世界への変革を行ったのは常に当時の「人」なわけです。イノベーションを起こす人材というのは、過去の常識とか慣例を否定して考えないといけない。どんどん新しい発想ができる人間ですね。そういう人間を作り上げるのが大事で、今、色々な教育プログラムを作っているところです。

例えば、開発部全員にイノベーションに対する考え方のアンケートをとって、回答の傾向から不足している部分を見つけてどう引き上げていくかということを行っています。また、そういう人を育てるためにも、外を見ることも当然必要で、今回のように違う会社さんと共同開発をすると、お互いに刺激になることも多いと思います。そうやって、色々な企業と共創することで、もっとイノベーティブな人材を作っていかないと、製造業だけでなく、企業は存続、繁栄できないと思っています。AIが流行っていますが、AIが新しい製品やビジネスを考えてくれる訳でなく、やはり人ですね。人をどういう風に育てていくか。そのためにはどういうふうに刺激を与えられるかというのも重要なので、そういう意味でも、これからもずっとパナソニックさんと色々な形で共創させて頂いてお互いに刺激し合える場をどんどん作っていきたいと思っています。

伊藤:世の中の動向や他社の動きにより一層敏感になって、また、お客様やパートナーの現場の情報を熊平製作所に共有して、他社にはない新しい製品を作っていきたいと思います。もう一つは、セキュリティシステムの保守サービスや遠隔運用サービスなどのストックビジネスを伸ばしていきたいです。これからはサブスク事業だと思っています。今、どこの会社でもAPI連携が進められています。SPLATSの販売体制も構築しましたが、他社のサブスクをリセールするにあたり社内の経理上の仕組みなど、まだまだ課題もあります。それらをひとつひとつクリアしてストック型のビジネスを拡大していきたいと思っています。

萱野:先ほどお話ししましたが我々のパーパスは「現場から 社会を動かし 未来へつなぐ」ということで、我々のビジネスは、現場の課題というところに立ち返って事業展開していくとことに変わりないです。そういったところで、エッジデバイスに加え、アプリケーションやサービスなどの付加価値をプラスしてお客様とずっとつながってお役に立ち続けるという姿を目指していきたいです。その中で、「共創」は非常に重要だと考えています。我々がハードやソフトを作るということはできても、お客様に使って頂くシーンやどのような価値を提供できるかを全て理解するのは、なかなか難しいところがあります。クマヒラさんをはじめ、その業界に精通して知見のある企業のみなさまと一緒に組んで新しい価値を創造し、社会に貢献することで、事業を広げていきたいと思っています。本日はどうもありがとうございました。
 


※SPLATS(スプラッツ)とは、クマヒラグループが提供するクラウド型セキュリティサービスであり、2023年6月現在で入退室管理と鍵管理の2サービスを提供しています。LTE通信機能を搭載した専用デバイスによってネットワーク工事が不要のため初期費用を低減でき、サブスクリプション方式の料金体験のため月々の費用の平準化が可能です。


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