写真:場内音響システム
写真:場内音響システム

日本中央競馬会様 函館競馬場

場内音響システム
堅牢性が求められる競馬場で安心の簡単・確実な音響システムを構築。

課題

不安定なシステムを改修して来場者へ確実に音声を届けたい。

解決策

お客様に合わせた運用をベースに、アナログ接続を採用することで操作性・確実性を向上させた場内放送システムを構築。

今回も様々なご提案をいただき、函館競馬場ならではの運用に合わせたシステムを導入できました。

日本中央競馬会 函館競馬場 施設整備課 課長(設備担当) 甲斐 一光様

背景

12年ぶりに放送設備の全面改修を実施

日本中央競馬会様所属の函館競馬場では、2022年4月に新スタンド竣工以来12年ぶりとなる放送設備の全面改修を実施しました。今回の改修では各機器の更新に合わせ、これまでネットワークオーディオシステムを採用していた場内のシステムを全てアナログ接続に構築し直す改修を実施。高い機能性をはじめとしたデジタル機器の利点と、アナログ接続ならではの運用のしやすさの両方を活かし、競馬場の運営で求められる「簡単・確実に」放送できるシステムを構築しました。


採用理由

簡単で確実な運用が可能な音響システム

日本中央競馬会の甲斐一光様は今回の改修について「ネットワークオーディオシステムは不具合が多く、復旧にも専門的な知識が必要で職員だけでの対応が難しいという問題がありました。そのため、安定して放送を継続できるシステムを目指し、音声と制御を含む場内システムの全面的なアナログ化を実施しました。パナソニックさんはこれまでにも複数の競馬場を改修しており、運営に適したシステムを熟知されています。今回も様々なご提案をいただき、函館競馬場ならではの運用に合わせたシステムを導入できました」と語ります。


採用による効果

使い方に合わせたカスタマイズが可能なデジタルミキサーWR-DX350で確実かつ臨機応変な運用をサポート

場内全域の放送を制御する実況放送室のメイン制御卓、そしてウイナーズサークル、ハナマエステージ、パドックの場内3エリアに配置されたイベント用スペースの放送設備としてデジタルミキサーWR-DX350が採用されました。競馬場の館内放送では来場者に重要な情報を伝えるため、放送設備には確実に運用できる高い信頼性が求められます。加えて、直前のレース結果により授賞式のプログラムが変わるなど、運用担当者は様々な場面で臨機応変に対応しなければなりません。どのようなシーンでも確実な操作が行えるよう、今回の導入ではカスタムレイヤー設定を活用し、通常の運用に必要な入出力を全て16本のフェーダーから操作できるシステムを構築。レイヤーを切り替えずにフェーダーで直接調整できるため、誤操作の心配なくスムーズな対応が可能になりました。

また、各エリアで運用している4台のWR-DX350と予備機1台には、パターンメモリー機能を活用して4つの運用場所分全ての設定情報を記録。別のエリアのミキサーと入れ替えてもメモリーを呼び出すだけで設定を反映できるため、万が一トラブルがあったとしても速やかに復旧を図ることができます。

さらに、函館競馬場ではiPad®用リモートコントロールソフトを用いた運用も行っています。iPad®で離れた位置からミキサーを操作できるため、ミキサー周辺が混雑するような場面でもiPad®を手に移動して、現場を確認しながらオペレーションすることが可能です。また、監督者が別の場所から各エリアの運用状況をモニタリングする用途でも使用できます。JRAファシリティーズ株式会社の青木渡様は「iPad®用リモートコントロールソフトによる遠隔コントロール機能は、WR-DX350の導入を検討する際に魅力に感じた点の1つでした。この機能により、遠隔で各イベント用スペースの操作状況を見られるようになったことは大きな変化です。現場のフェーダーの状態を目視で確認できるので、操作担当者に詳細な指示を出すことができますし、トラブル時のフォローもスムーズに行えます。通常の運営と並行してイベントを行う際は職員を各エリアに1人ずつしか配置できないことも多いため、遠隔で状況を確認できるのはとてもありがたいです」と語ります。

DECT準拠方式で混信しづらい1.9GHz帯デジタルワイヤレスマイクシステム

イベント用スペースにはそれぞれ、1.9 GHz帯デジタルワイヤレスマイクシステムWX-SR200Aシリーズを採用。DECT準拠方式による自動干渉回避機能を搭載したシステムのため、様々な無線機器が混在しているような環境でも、混信することなく安定した拡声を行うことができます。また、マイクと受信機のペアリング登録が簡単で、チャンネルの割り当ても自動で行われるため、普段他のスペースで運用しているマイクを別の場所で使用することも可能です。


写真:WR-DX350
実況放送室に設置されたWR-DX350。
写真:WR-DX350
パドックでのイベント運営用に設置されたWR-DX350。
写真:iPad®用リモートコントロールソフト
「iPad®用リモートコントロールソフト」を用いてiPad®から各WR-DX350の運用状況を遠隔で確認することが可能。
写真:WX-ST210
イベント用スペースは全て屋外のため、防滴型のWX-ST210を採用。
写真:ハナマエステージに設置されたイベント用放送設備
ハナマエステージに設置されたイベント用放送設備。
写真:ウイナーズサークルに設置されたイベント用放送設備
ウイナーズサークルに設置されたイベント用放送設備。

設置場所に応じたスピーカー選定により、スタンド全域への均一な拡声を実現

スピーカーの改修としては既設スピーカーのリプレイスに加え、現地調査や実機デモを行いながら、これまで拡声が不十分だった場所への増設も実施。設置場所や拡声目的に適したスピーカーを選定するとともに、場内全域のスピーカーに対して各エリアの状況に合わせた調整を施しました。

スタンド2階、3階をはじめ、海に近い馬場側には耐重塩害仕様の全天候型スピーカーWS-LB301を採用。函館競馬場は大屋根が膜構造という特徴的な建築であることから、3階席の天井にはスピーカーが設置できず、これまでスタンドの柱に1台ずつスピーカーを取り付けていました。また、その柱同士の間隔が10.8mあるため中間地点では十分な拡声が得られず、音量にばらつきがある状況でした。そこで今回の改修では柱のスピーカーを各2台に増設。2台のWS-LB301をそれぞれ左右に向けて設置し、スタンド全域への均一な拡声を実現しました。

さらに、吹き抜け構造で既設の天井埋込スピーカーだけでは十分な拡声が難しかったオープンスペース「雲の広場」へも、12cmコーン型スピーカーWS-M10T-Wを5台増設。混雑時も明瞭な音声で放送を聞けるエリアになりました。

「競馬場ではレースの進行に合わせてお客様が移動しながら観戦します。常に話し声や足音、身動きの音などが聞こえている状況のため、特に人が密集するような場所では放送の音が埋もれてしまうのです。今回の改修では、パナソニックさんにこれまでの問題点をお伝えし、実地調査も交えながら検討を進めていただきました。そのお陰で、どのエリアにおいても十分な音量で拡声できるようになりました」と甲斐様は語ります。

柔軟な運用が可能なイベント用放送設備

3エリアのイベント用スペースにはミキサー、パワーアンプ、ワイヤレスマイクシステム一式を格納した可搬式のキャスター付き音響機器収納ワゴンを配置。100Vの汎用的な電源に対応したシステムのため、拡声したい場所に持ち運んで使用できると好評です。また、イベント用スペース各所のワイヤレスアンテナや、使用頻度の高いウイナーズサークル、パドックのイベント用スピーカーは常設化することで、準備時の負担軽減を図りました。リニューアル後のイベント用放送設備について、甲斐様は「函館競馬場では、本場開催期間や他場でのビッグレースの開催に合わせ場内でイベントを行います。改修前は運用のしづらさからイベント代理店が機材を全て持ち込んで実施していましたが、新しく導入した設備は非常に使いやすく性能も良いことから、今後は持ち込み機器無しでイベントができるのではと考えています。私たちからもぜひ使ってほしいと代理店に薦めています」と話します。


写真:WS-LB301
スタンド3階に設置されたWS-LB301。
写真:WS-LB311
パドックにはWS-LB311を2本メインスピーカーとして設置。
写真:音響機器収納ワゴン
デジタルミキサーWR-DX350やワイヤレス受信機が格納されたキャスター付き音響機器収納ワゴン。イベント用スペース3か所にそれぞれ設置されている。
写真:WS-M10T-W
「雲の広場」に設置されたWS-M10T-W。
写真:WS-BN025-K
公道に近い正門前の植栽内には、至近距離への明瞭な拡声を得意とする屋外対応の12cm 2ウェイスピーカーWS-BN025-Kを設置。
写真:WS-AR200-K
イベント用スペースには可搬式の30cm 2ウェイスピーカーWS-AR200-K/20cm 2ウェイスピーカーWS-AR080-Kを導入(写真はパドックのWS-AR200-K)。
写真:WS-LB301
ウイナーズサークルに設置されたWS-LB301。
写真:WX-SA250A
ウイナーズサークル横のポールに設置されたワイヤレスアンテナWX-SA250A。

函館競馬場ならではの多様な運用へ円滑に対応できる制御システムを構築

今回の改修では、レースのあり/なしや場内の混雑具合に合わせて拡声パターンをプリセット化し、実況放送室の制御卓と運営用PCから切り替えられるシステムを構築しています。

機器同士をアナログ接続し、障害発生時に予備系へ瞬時に切り替わるホットスタンバイで中央装置を冗長化することで、運用しやすく、シンプルで安定したシステムを実現しました。

また、函館競馬場では毎年5月から8月にかけて700頭近くの競走馬が滞在し、場内で早朝に調教を行います。滞在期間中のパークウインズや本場開催前には、放送設備の点検を競走馬に配慮して行う必要があることから、調教エリアへの拡声を避けながら他のエリアへ拡声する「朝調教モード」を備えています。このモードを用いて調教時間中でも順次点検を進めることができ、スムーズな開場につながっています。


写真:制御卓
拡声パターンの切り替えは制御卓のスイッチからワンタッチで可能。
写真:放送機器室
放送機器室。RAMSAデジタルパワーアンプWP-DM912とラック形非常用放送設備WL-8500Aが導入された。
写真:AW-HE70SK9
入場やファンファーレなどのタイミング確認用に導入されたリモートカメラAW-HE70SK9(屋外用ハウジングに格納)。

納入機器

  • RAMSA デジタルミキサー WR-DX350 ×5台
  • RAMSA 全天候型スピーカー WS-LB301 ×73台
  • RAMSA 全天候型スピーカー WS-LB311 ×2台
  • RAMSA 30cm 2ウェイスピーカー WS-AR200-K ×8台
  • RAMSA 20cm 2ウェイスピーカー WS-AR080-K ×4台
  • RAMSA 12cm コーン型スピーカー WS-M10-K ×3台
  • RAMSA 12cm コーン型スピーカー(TR内蔵) WS-M10T-W ×5台
  • RAMSA 12cm 2ウェイスピーカー WS-BN025-K ×10台
  • RAMSA デジタルパワーアンプ WP-DM912 ×16台
  • RAMSA デジタルパワーアンプ WP-DA114 ×2台
  • ワイヤレスマイクロホン(防滴型) WX-ST210 ×16本
  • ワイヤレスアンテナ WX-SA250A ×8台
  • ワイヤレス受信機 WX-SR204A ×1台
  • ワイヤレス受信機 WX-SR202A ×2台
  • 増設ワイヤレス受信機 WX-SE200A ×2台
  • 充電器 WX-SZ200 ×6台

…他


お客様の声

パークウインズや地域貢献の場など、活用の機会を増やしていきたい

今回の改修は通常のサイクルから前倒しての実施でしたが、他場での信頼と実績があるパナソニックさんのシステムを函館競馬場へも導入できたことで、安心して今年の競馬開催を迎えられました。本場開催が夏競馬期間中のみとなる函館競馬場は、1年のほとんどをパークウインズとして開場します。本場開催以外のタイミングでも今回導入した設備を活用し、足を運んでいただいたお客様に楽しんでいただけるような施策を行いたいです。(甲斐 一光様)

私たち管理担当者は数年毎に異動があるため、その度に1からシステムの操作方法を習得しなければなりません。今回の改修では、今後函館競馬場に異動してくる職員にもスムーズに引き継げる、とても使いやすいシステムを導入できたと感じています。函館競馬場は地域との距離が近い競馬場です。小中学校のイベント会場として利用いただくこともあるため、改修を経てより充実した放送設備を地域貢献の場でも役立てていきたいと思います。(青木 渡様)

写真:甲斐様と青木様
日本中央競馬会 函館競馬場 施設整備課 課長(設備担当) 甲斐 一光様(写真右)
JRAファシリティーズ株式会社 函館事業所 施設管理課 電気設備係主事 青木 渡様(写真左)
※所属は取材時のものです。

お客様紹介

風光明媚なリゾート地にとけこむ解放感あふれる競馬場

1896年開場の函館競馬場は、国内で最も長い歴史を持つ競馬場です。「リゾート地の開放感あふれる競馬場」、「馬と人との距離が近い競馬場」をテーマに2010年に竣工したスタンドからは、函館山と津軽海峡を望むことができます。毎年、6月から7月の6週間にわたり数々のレースが繰り広げられる他、地域密着型の競馬場として近隣住民にも親しまれています。


写真:函館競馬場外観
函館競馬場。
地図

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