写真:福岡放送の編集室
写真:福岡放送の編集室

株式会社福岡放送様

12G-SDI対応 4K/HDスタジオサブシステム
4K(12G-SDI)サブとしての機能を備えながら、細部までこだわりぬいた“最高品質のHDサブ”を構築。

課題

従来のHDサブでの使いやすさを損なわずに、4K出力にも対応した将来性のあるスタジオサブシステムを構築したい。

解決策

4K運用時もHD運用時と同等の機能を備えるAV-HS8300でトータルシステムを構築。サイマル出力とすることで4K運用時にもダウンコンバートしたHD映像出力が可能。

どれほど細かなお願いにも応えてくれて、やりたかったことをすべて実現していただきました。

株式会社福岡放送 技術局 制作技術部 松本 安史様 川邉 淳一様

背景

運用性の高い4K対応と、“最高品質のHDサブ”を目指して

2020年2月、株式会社福岡放送様は局内初の4K対応サブとしてAサブのスタジオサブシステムを更新しました。Aサブは月曜日から金曜日まで生放送している帯番組『めんたいワイド』や、日曜夕方のスポーツ番組『夢空間スポーツ』を制作する、福岡放送様が持つ3つのサブのうち最も運用頻度の高いサブです。今回の更新は4K/HDサイマルシステムという将来性を持たせながら、現在のHD運用でのクオリティを細部まで追求した“最高品質のHDサブ”にすることを目指して検討。他社システムとも比較検討した結果、12G-SDIに対応し運用性に優れたライブスイッチャーAV-HS8300シリーズを採用しました。


導入理由

局内の様々な4Kシステム・フォーマットへの対応力

福岡放送様は他局に先駆けて4Kの中継車を導入し、編集機や回線センターも4Kに対応させています。今回更新したAサブは中継車の受けサブとしても使用されるため、幅広い4Kフォーマットに対応できることが条件でした。「他の4Kシステムとの親和性を考え、パナソニックさんが一番多彩なフォーマットに対応できたことが決め手でした。それから、まだまだ過渡期の4Kというシステムにおいて内製品が多く、12Gの技術力も非常に高かった。将来を見越した幅広いシステム提案をしてくれたことで“パナソニックさんならこの先、いかようにもなる”と確信できたのです」(技術局 制作技術部 松本安史様)


導入後の効果

使いやすい充実のキーヤーが、大規模中継番組を支える

AV-HS8300はリサイザーやクロマキー機能など各種キーヤーが使いやすく、簡単に高品質な演出が可能だと技術局 制作技術部の松本様は語ります。特に、ME前段で入力素材にテロップなどのスーパーができるUSK(アップストリームキーヤー)は、パナソニックならではの使いやすさだと好評です。

「福岡の伝統的な祭りである『博多祇園山笠』の大規模な中継を毎年行っているのですが、これまでは、入力素材にスーパーするために、それぞれの中継現場にDSKなどのスーパー装置を持ち込まなければなりませんでした。AV-HS8300のUSK機能があれば、わざ わざ現場に持ち込まなくてもスイッチャーのみで多彩なスーパーが可能です。そして各種キーヤーは4K運用時でも機能制限がなく、HD運用時と同等の番組制作が可能になる点も魅力的なポイントでした」

細部までこだわり抜いた環境づくり

最高品質のHDサブを目指すにあたり、最もこだわったのは環境改善だったと松本様は語ります。

「以前は、サーバーやCGの操作画面を確認するためにPCが置かれている卓まで歩いて行かなければならなかったため、今回はPC操作画面を分配し、ワイヤレスマウスを用いて操作卓の3か所から操作できるよう改善しました。それからモニター棚の見やすさにもこだわりました。これまではモニター棚を見上げてオペレートしていましたが、今回は操作卓の監視面を低く設計してモニターの位置を下げても見えるようにしました。モニターと操作卓との距離も数十センチ単位で実際に動かしながら調整しました」

また、今回導入した音声ルーター(他社製)との映音連動制御など、操作卓以外でもあらゆる環境改善を行ったと技術局 制作技術部の川邉様は語ります。

「音声ルーターにテーブルを持たせることで、映像の素材切り替えに合わせて音声も切り替え、あえて選択素材を表示して確認できるようにしました。これまでは、実際は音声も切り替わっているのに映像しか表示されていなかったので、映像と音声の連動を視覚化して分かりやすくしたかったのです。また、今回は音声のモニター棚もリニューアルしました。以前までは鉄板の棚だったので音の反響があったのですが、棚の素材を木材にしてパネル部分はメッシュの布素材にすることで音の反響をできる限り抑えました。音声卓から近い映像のモニター棚も、音に影響のあるところはこの素材にしています。それからもう1つ、指揮卓には同軸ケーブルの端子盤を多数用意し、挿すだけでPCの素材をシステムに取り込めるようにしました。最近では新型コロナウイルス感染症の影響でSkypeなどパソコンからの素材の取り込みが多いので、この端子盤が無かったら混乱していたと思います。今まさにフル活用しています」

川邉様は、「映像も音声も、私たちの仕事は感覚で行う部分が多いので、室内の環境が良くないと良いオペレートができません。スタッフ全員が精度の高いオペレートをするために、今回とても効果的な改善ができました」と話します。


写真:福岡放送の編集室
12G-SDI対応ライブスイッチャーAV-HS8300シリーズ。4Kモード時(12G‐SDI):30入力×20出力、HDモード時(3G‐SDI):60入力×20出力で採用。
写真:A/Bバス スイッチとTAKEボタン、そして2系統のキーヤーを備えた簡易パネル
4MEのうち1列をME0(ゼロ)として加工演出用に使用。エフェクトやスーパー加工用に、D卓前にA/Bバス スイッチとTAKEボタン、そして2系統のキーヤーを備えた簡易パネルを設置した。
写真:福岡放送編集室のモニター
モニターの素材名表示は電光文字ではなく、素材名が書かれた透明フィルムを挟み込む形にした。見やすいフォント選びにこだわり、黒いフィルムをもう1枚差し込むことで表示の明るさも調整している。
写真:福岡放送の編集室の音声モニター棚
音の反響を抑えるために音声モニター棚は木材で製作し、パネル部分はメッシュの布素材にした。
写真:福岡放送の編集室の音声スイッチャー
音声バスを表示させ、映像に連動して音声が切り替わっていることを確認。

4K/HDシステム全体をボタン1つで切り替え

今回のシステムはHD運用時はHDのみ出力し、4K運用時はダウンコンバートによるHDも同時に出力するサイマル方式を採用。将来4K運用を開始した際にHDとの切り替えをスムーズに行えるよう、VE卓にモード選択ボタンを設置しました。これにより、4K/HDの切り替えはもちろんHDR/SDR切り替え、BT.2020/709の色域選択、そしてHDRとSDRのゲイン差を自動でつけるH/S-GAIN機能もボタン1つで設定可能です。松本様は、「スイッチャーやルーターの切り替えはもちろん、アップコンやダウンコン、カメラシステム、モニターも含めてワンプッシュで本当にシステム全体が切り替わるので、シンプルで分かりやすいです」と語ります。

また、VE卓のシステムPCにはコンバーターモニターアプリをインストール。アップコンバーターやダウンコンバーターの設定状態の一元管理や個別変更を瞬時に行うことができます。


写真:福岡放送の編集室のVE卓
VE卓の左端にモード選択ボタンが、手前中央にルーター切り替えパネル(アサインパネル)が、そして右端にはコンバーターモニターが設置されている。
写真:4K/HDはもちろん、ダイナミックレンジや色域などを一括で変更可 能なモード選択ボタン
4K/HDはもちろん、ダイナミックレンジや色域などを一括で変更可能なモード選択ボタン。
写真:アサインパネル
アサインパネルの素材名部分は4K素材/HD素材でバックライト色が変化し、視認性を向上させている。4K素材が緑色、HD素材が薄紫色に点灯する。
写真:コンバーターモニター
各コンバーターの状態を分かりやすいGUIで確認できるコンバーターモニター。
写真:システムPCのアラームロガーアプリ
システムPCにはアラームロガーアプリも実装。万が一の機器異常時はGUIで障害発生機器の特定と状態監視が可能。アラームはAサブ内に設けたパトランプやブザー、そしてBサブへも連動して通知する。
写真:福岡放送のラック室
スイッチャー本体、ルーター、ペリフェラルが収まったラック室。ルーターは、12G-SDI対応ルーティングスイッチャーAV-WM8400を160入力×100出力で採用。

納入機器

【映像機器】

  • マルチフォーマットスイッチャー(12G-SDI対応ライブスイッチャー) AV-HS8300シリーズ
  • マルチフォーマットルーター(12G-SDI対応ルーティングスイッチャー)AV-WM8400シリーズ
  • 3G-SDI対応ペリフェラルAV-PF3000シリーズ
    • SDAユニットAV-PF30M1
    • 2chSDAユニットAV-PF30M2
    • AVDL/FSユニットAV-PF30M3
    • MUXユニットAV-PF30M4
    • DMUXユニットAV-PF30M5
  • 12G-SDI対応ペリフェラルAV-PF8000シリーズ
    • SDAユニットAV-PF80M1
    • 2chSDAユニットAV-PF80M2
    • AVDL/FSユニットAV-PF80M3
    • MUXユニットAV-PF80M4
    • DMUXユニットAV-PF80M5
    • アップコンバーターユニットAV-PF80M11
    • ダウンコンバーターユニットAV-PF80M12
    • 6:1 SELユニットAV-PF80M13

【操作卓】

  • SW卓
  • UTL卓
  • TK卓
  • D卓
  • VE卓
  • 指揮卓
  • SVR/CG卓

【モニター棚】

  • 映像モニター棚関連機器
  • 音声モニター棚関連機器

お客様の声

最後の最後まで、我々の要望すべてに応えてくれました。

パナソニックさんには本当に沢山のお願いをしましたが、どれほど細かなことにも熱意を持って対応し、すべて実現していただきました。実は、途中で一度大幅な工事の修正を考え悩んでいたことがあったのですが、その時に「私たちメーカーの人間は工事の期間しかいませんが、この先10年、15年と使っていくのはFBSさんなんですから、やりますよ」と言って快諾してくださったんです。モニター棚のネジ1つにしても、光が反射しない素材で黒色にしたいとお伝えしたら一生懸命に探してくださって、ここまでやってくださるメーカーさんはなかなかいないだろうと思いました。そうやって一緒に作り上げたこのサブで、ぜひ、4K HDRの生放送をやりたいですね。15年前、SDからHD映像に変更した時、初めて見たフルHDの画質に驚き、ワクワクしたのを今でも覚えています。あの時と同じように、このサブから4Kの感動が生まれたら嬉しいです。

写真:株式会社福岡放送 技術局 制作技術部 川邉 淳一 様と松本 安史 様
株式会社福岡放送 技術局 制作技術部 副部長 川邉 淳一様(左)
株式会社福岡放送 技術局 制作技術部 副参事 松本 安史様(右)
※所属は納入時のものです。

Aサブ映像システム概略図

写真:Aサブ映像システム概略図

お客様紹介

地域の人々に愛されるテレビ局

1969年に開局した株式会社福岡放送(FBS)様は、福岡県全域およびその周辺県を視聴エリアに持ち、地域に密着した数々の番組を制作し視聴者に親しまれています。今回のシステム更新は社屋移転以来、約15年ぶりの全面更新となりました。最新機器を積極的に取り入れ、高い技術力を追求し続ける福岡放送様ならではのシステムとなりました。

写真:福岡放送 技術局 制作技術部の皆様
Aサブの更新を担当された福岡放送 技術局 制作技術部の皆様。
写真右から
部長 二宮 功様
主事 瀧下 郁之様
副参事 松本 安史様
副部長 川邉 淳一様
写真:福岡放送の社屋



関連リンク

当社は、映像・音響を中心に、制作、伝送、映像体験の最新テクノロジーを網羅した国内最大のメディア&エンターテイメント総合展示「InterBEE 2020」に出展いたします。

Inter BEE 2020


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12G-SDI対応ペリフェラル
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