株式会社 静岡第一テレビ様
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IPスタジオサブシステム
SMPTE ST 2110のフルIPサブで、リソースシェアやリモートアクセスを実現。

課題

新人教育に時間が掛かるベースバンドシステムをやめて、新しい時代のサブを構築したい。

解決策

2種類のIPスイッチャーを軸にしたST 2110のフルIPサブを構築。番組の準備段階から制作まで、一連の業務を効率化。

夕方ワイド番組のオンエア中に、KAIROSを導入した第二サブを使用して花火大会の配信を実施。KAIROSソフトウェアを事前に設定しておくことで、当日はわずか3名のスタッフで対応ができました。

株式会社 静岡第一テレビ 技術局 技術部 中濱 央友様 宇野 馨様

背景

属人化の解消を目指したフルIPの制作サブを構築

2024年3月、株式会社静岡第一テレビ様が制作サブを更新し、新たなサブシステムでの放送を開始しました。今回の更新にあたっては、長年の課題であった人材不足や、属人化が進む業務フローの解消を目指しシステムを検討しました。しかし、従来のベースバンドシステムでは何かある度に技術スタッフが現場に行かなければならず、若手スタッフの習得にも時間も掛かります。そこで今回はシンプルな操作で覚えやすく、リモートアクセスが可能なIPサブへのリニューアルを計画。SMPTE ST 2110で映像と音声を統一したフルIPのシステムを構築しました。


導入した理由

KAIROSの存在が選定の大きなポイントに

今回更新を行った「Dサブ」ではST 2110に対応したスイッチャーAV-HS8300を採用。さらに、Dサブの室内には多目的に利用できるもう1つのサブ「第二サブ」を構築し、IT/IPプラットフォーム KAIROSを導入しました。技術局 技術部の中濱様と宇野様は、「パナソニックさんはST 2110システムの構築実績があり、何よりKAIROSが非常に魅力的だったため採用を決めました。KAIROSは専門知識がなくても簡単に扱え、従来型スイッチャーでは不可能なことが可能になります。Dサブと第二サブのリソースシェアも実現でき、まさに番組制作を革新するスイッチャーだと感じました」と語ります。


導入後の効果

IPシステムにより、特番の準備も大幅に時短化

IP化による大きな変化の1つとして、番組前の準備時間の削減が挙げられると中濱 様は語ります。

「Dサブ更新後に何度か大規模な特番を行いましたが、セッティングが驚くほど早く終わるようになりました。選挙の特番など、以前は1週間ほど要していましたが、事前に設定を保存しておけば当日は呼び出すだけで済むため10分ほどで完了しました。配線の必要もなく、なかなか映像が出ないといった面倒も一切ありません。しかも技術スタッフ1名で対応することができ、一度つくった設定は次の特番でまた活用できるのでこれは本当に大きな業務効率化につながったと感じました」

従来スイッチャーと同じ運用性ながら使い勝手を向上

ライブスイッチャーAV-HS8300の運用性について、宇野様は語ります。

「今回の更新はオンエアまで2か月弱という短い期間で実施したので、オペレーターのトレーニング時間を充分に確保することができませんでした。しかしAV-HS8300は従来のSDI時代の操作性を維持しながらIPシステムを構築できるため、特に現場が混乱することなく運用を開始できました。運用を始めてから1か月ほどはIPシステムだと気付かれなかったくらいです。また、単に従来の操作性を踏襲しているだけでなく、1キーヤーで額縁ワイプを合成可能なリサイザー機能など、使いやすい新機能が搭載されている点もありがたいポイントでした」

専門知識がなくても扱えるブロードキャストコントローラー

ブロードキャストコントローラーは、全機器の設定・操作が可能なPSM(Panasonic System Manager)と、機器の状態監視が一括で行えるPSS(Panasonic System Surveillance)の2つのシステムで構成されています。宇野様は、「パナソニックさんのブロードキャストコントローラーはとても分かりやすくて使いやすいですね。運用する側が直感的に分かるようにつくられているので、技術側のスタッフがいなくても簡単に操作することができ、まさに属人化を解消するシステムだと思います。現在では、マルチビューの設定変更など基本的な操作は全て運用者自身の手で行っています。また、KVMを組んでいるため、複雑な設定が必要な時は現場に行かなくても我々のノートPCでどこからでもアクセスすることが可能です。カットオーバー直後でまだ誰も操作方法を知らなかった時にサブから設定を変更したいという連絡が入りましたが、外出先からPSMにアクセスしてすぐに設定を変更することができました」と語ります。


写真:フルIPサブとしてリニューアルしたDサブ
フルIPサブとしてリニューアルしたDサブ。マルチビューワーにはKAIROSを活用。
写真:DサブのスイッチャーAV-HS8300のコントロールパネル
DサブのスイッチャーAV-HS8300のコントロールパネル。
写真:PSMのマルチビュー割付け画面
PSMのマルチビュー割付け画面。KAIROSのMV機能と連動して簡単に設定変更が可能。
写真:PSSのダッシュボード画面
PSSのダッシュボード画面。機器の一括監視を行い、異常を検知するとアラートで知らせる。
写真:VE卓のモニターに表示させたPSM/PSS画面(写真右奥)
VE卓のモニターに表示させたPSM/PSS画面(写真右奥)。
写真:PSMのクロスポイント切り替え画面
PSMのクロスポイント切り替え画面。
写真:障害が発生した際、どこの系統で起きたかを示すPSSの系統図表示画面
障害が発生した際、どこの系統で起きたかを示すPSSの系統図表示画面。
写真:さらに、障害が発生した機器のラック内の位置を示すPSSのラック実装図表示画面
さらに、障害が発生した機器のラック内の位置を示すPSSのラック実装図表示画面。

KAIROSを使って花火大会の配信をスタッフ3名で運行

Dサブの室内につくられた「第二サブ」は、帯番組と同時間帯に特番が入った時などに活用されるほか、配信やサブチャンネルでも使われます。宇野様は、「ちょうど先週、花火大会の配信が帯番組の時間と重なったため第二サブを使用しました。その時はスイッチャーのオペレーターではなく、もともと記者だったスタッフが初めてKAIROSを操作したのですが、当日に『このボタンがスーパーでこのボタンがマイクで…』と教えただけですぐに習得することができ、最後までミスもありませんでした。以前の花火配信は12~13名で運行していたのですが、今回は技術2名とスイッチャー1名、アナウンサー2名だけで実施することができたので、KAIROSの使いやすさには驚かされました」と語ります。

自由な画角で思い描いたレイヤー合成が可能に

「KAIROSの導入によって、とても自由な映像制作が可能になりました。KAIROSは従来のようなME列やキーヤー数の制約が一切ないため、まるで編集機のように次々と画面を重ねていくことができます。また、サイネージ表示など16:9以外の映像を制作したい時も、GUIソフトのKairos Creatorを使って長方形の角を引っ張るだけで好きな画角の映像をつくることができます。さらに、Kairos CreatorもIP-KVMでリモートアクセスができるようにしているため、災害時などの緊急対応はもちろん、技術スタッフが別の現場に出ている時でもリモートで操作すれば通常通りの番組づくりが可能になります」と宇野様は語ります。

さらなるKAIROSの活用展開を目指す

実際に使用してみて、さらなるKAIROSの活用に期待が高まっていると中濱様は語ります。

「KAIROSほど簡単であれば技術のスタッフがいなくても問題なく放送ができると思います。少人数でも多彩な映像制作が可能なため、夕方の帯番組もKAIROSで放送できるのではと話しています。また、1台のKAIROSで複数の配信を行うことも可能なので、例えばサッカーの地方大会のような複数拠点で同時に試合が行われているスポーツなど、KAIROSで受けて4試合同時ライブ配信などを行うこともできますね。番組前のセッティングも読み込むだけで瞬時に行え、万が一何かあれば簡単に修正できるので、臆することなく様々なことにトライしていけると思います」


写真:Dサブ内につくられた第二サブにはKAIROS(AT-KC1000T)を導入
Dサブ内につくられた第二サブにはKAIROS(AT-KC1000T)を導入。
写真:KAIROSのコントロールパネル
KAIROSのコントロールパネル。
写真:KAIROSのマルチビューワー
KAIROSのマルチビューワー。自由にレイアウトができ使いやすいと好評。
写真:GUIソフトウェアKairos Creatorはレイヤーを重ねるだけで誰も簡単に操作できると好評
GUIソフトウェアKairos Creatorはレイヤーを重ねるだけで誰も簡単に操作できると好評。
写真:KAIROSメインフレーム
KAIROSメインフレーム。上がAT-KC1000T、下2台はMV/EMG用のAT-KC100T。
写真:AV-HS8300メインフレーム(ラック左)とIPゲートウェイ(ラック右)
AV-HS8300メインフレーム(ラック左)とIPゲートウェイ(ラック右)。
写真:2つのサブのVIDEO架が3本にまとまる 省スペースを実現
2つのサブのVIDEO架が3本にまとまる省スペースを実現。
写真:IPシステムの根幹となるメディアスイッチと制御スイッチ
IPシステムの根幹となるメディアスイッチと制御スイッチ。

システム概要図

■ Dサブ IPスイッチャー

IP対応ライブスイッチャー AV-HS8300 ×1

  • 3ME、4KEYER/ME、8USK
  • DVE2ch/ME内蔵(BKGD用)
  • 各キーヤーにリサイザー装備
  • 静止画/動画 各8ch(V+K)
  • 2K:80入力、40出力 ・電源二重化

■第二サブ IPスイッチャー

IT/IPプラットフォームKAIROS

  • メインフレーム Kairos Core 1000 AT-KC1000T ×1
  • コントロールパネル Kairos Control AT-KC10C1G ×1
  •  GUIソフトウェア Kairos Creator AT-SFC10G ×1

共通設備

MV

  • メインフレーム Kairos Core 100 AT-KC100T ×1
  • GUIソフトウェア Kairos Creator AT-SFC10G ×1

EMG

  • メインフレーム Kairos Core 100 AT-KC100T ×1
  • GUIソフトウェア Kairos Creator AT-SFC10G ×1

IPペリフェラル

  • 棚板(ペリフェラルフレーム) AV-PF80U2 ×5
  • IP/SDIゲートウェイユニット AV-PF80GW1 ×31

2Kペリフェラル

  • 棚板(ペリフェラルフレーム) AV-PF30U2 ×1
  • SDAユニット AV-PF30M1 ×14

ブロードキャストコントローラー

  • PSS/PSMライセンス ×1
  • PSSサーバー ×1

お客様の声

KAIROSを活用した未来の映像制作に向けて

フルIPサブ構築にあたり様々なシステムを検討しましたが、パナソニックさんは横浜の工場に実際に触れられるデモ機をお持ちのため、しっかりとイメージが湧いた上で構築することができました。おかげで使いやすいサブになりましたので、今後はさらなる活用展開を計画しています。例えば、KAIROSならリソースシェアでつなぎ先を変更するだけで運用できるので、第二サブ自体を他社に貸し出すこともできると思います。さらにKAIROSが全国に普及すれば、他局のKAIROS同士を接続して、局を超えた一大ネットワークでの大規模放送も可能になるのではと思います。KAIROSが持つ可能性を存分に感じることができたので、これから新しい放送のかたちがつくれることを楽しみにしています。

株式会社 静岡第一テレビ 中濱 央友様
株式会社 静岡第一テレビ
技術局技術部システム室 マネジャー
兼 技術部
兼 編成局メディアイノベーション室
中濱 央友様
※所属は取材時のものです。

リモートプロダクションに挑戦していきたい

今回の更新にあたり、パナソニックさんとは毎週のように打ち合わせをして、打ち合わせの度にブラッシュアップの提案をいただくなど、真摯に向き合い対応していただきました。静岡第一テレビならではの運用に合わせた使いやすさを一緒になって考えてくださったことにも感謝しています。約2か月という時間のない中、工期も柔軟に対応していただき無事に期間内に終えることができました。今後の目標としては、さらなる業務効率化を叶えるべくリモートプロダクションに挑戦していきたいと思っています。KAIROSはもちろん、ST 2110システム全体を生かしたリモートプロダクションなど、ベースバンド時代にはできなかった様々なことに挑戦していきたいですね。

写真:株式会社 静岡第一テレビ 技術局 技術部 主査 宇野 馨様
株式会社 静岡第一テレビ
技術局 技術部
主査
宇野 馨様
※所属は取材時のものです。

お客様紹介

静岡に寄り添い、静岡の地域振興に貢献

1979年に静岡県全域を放送エリアとして開局し、今年45周年を迎えた株式会社静岡第一テレビ様。大人気番組「まるごと」をはじめ、地域に根差した多種多様な番組を制作し、多くの県民に愛され続けています。2022年には緑あふれる美しい庭園に取り囲まれた新社屋が完成。静岡県景観賞最優秀賞を獲得して話題を呼びました。

所在地:静岡市駿河区中原563番地
URL:https://www.tv-sdt.co.jp/


写真:静岡第一テレビ様の本社社屋外観
静岡第一テレビ様の本社社屋
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自在の映像クオリティと先進のオペレーションでライブ映像制作を革新するプラットフォーム。