ドラマ「相棒」(テレビ朝日様)
日本を代表するテレビドラマ「相棒」
「相棒」(あいぼう)は、テレビ朝日・東映の制作で2000年から放送されているテレビドラマシリーズ。警視庁の特命係に所属する杉下右京(水谷豊)が、自身の下についた相棒と共に超人的な推理力・洞察力を駆使して活躍していく刑事ドラマは常に高い視聴率を獲得している。最新作である「相棒season17」(毎週水曜 後9:00)が10月17日にスタート。第1話の番組平均視聴率は17.1%と、10月スタートの民放連続ドラマの初回としてトップとなった。
採用の経緯
小型軽量カメラの可能性に着目、実地テストを経て採用へ。
10月17日より放送が始まったテレビ朝日「相棒」season17の撮影において、パナソニック・コンパクトシネマカメラEVA1が全面的に採用されています。撮影監督の会田正裕氏(株式会社アップサイド)はEVA1採用の経緯についてこう語っています。
「以前から、小型で高画質のカメラに注目してきました。さまざまなカメラワークや条件の中で撮影する映画・ドラマでは小型軽量のカメラは現場での対応力が高く、また撮影スタッフに女性が増えており軽量な機材が好まれているからです。以前からVARICAM LTを使用しており、同じ色再現・画質が望め、かつ小型軽量のEVA1に注目しました。もちろんコストメリットもありますが、むしろ新しい画づくり、小型カメラでのドラマ制作への挑戦です。
“相棒”では、2018年初めにSeason16を撮る際に、EVA1を同じ条件で評価しました。画質も良く、とくに従来の小型カメラで苦労したSDI出力のRec.709映像が非常に良好だったので、Season17の撮影に採用しました」。
表現力を拡げる広ダイナミックレンジ、デュアルネイティブISO。
撮影に使用して、EVA1について会田監督は次のように語っています。 「テレビ用なので、ワークフローの軽いHDで収録していますが、高解像度センサーで得られる映像は4Kクオリティの解像感があります。ダイナミックレンジが広いので、グレーディングで上げてもハイライトがしっかりと残り、夜景やフェイストーンの色も飛んでいないのです。オンエア映像で見ても、従来の小型カメラとの差は充分に感じられるものでした」。
またEVA1の大きな特長であるデュアルネイティブISOについて、 「これは非常にありがたい機能です。ゲインアップとはまったく違う。夜だけではなく、昼間のセット撮影でもISO2500ベースを使っています。いままで大型のライトを何灯も点けないと得られなかった、柔らかく質の高い光が、100V電源の小型ライトで得られます。それを前提にライティングを考えられるので、創造的なイメージづくりに積極的に挑戦できる。ISO5000まで使いますよ。まるでカメラがふたつあるようです。表現の幅が拡がります」と評しています。
システムの紹介
2台のEVA1を常にセッティング、P2mobileでも収録。
小型軽量のカメラのジブ搭載によりカメラアングルが拡大。
EVA1は2台を常時用意。レンズはCanon シネマレンズ(CN7×17 KAS S/E1)をメインに、単焦点のEFマウントレンズも数本使用。カラーセッティングは、ダイナミックレンジがLOGなみにあり、かつRec.709で出力できるeV-LOOK2モードで撮ってグレーディング処理を行ないます。「理想としてきたフィルムのネガ撮影に近い感覚で、簡単に撮れるようになりました」。(会田監督)
収録映像は2K(HD)フォーマット。SDI出力されたRec.709映像信号をVEベースステーションに送り、従来から使用されているP2mobile(AJ-HPM200)でオーディオ信号と合わせて収録します。収録フォーマットはAVC-Intra100コーデックが使用されています。このシステムにより、監督とVEのチェックおよび編集と、次のカットのセッティングを並行して行なえるため、撮影の効率を高めています。
カメラは三脚のほか、ジブ(ミニクレーンとドリー)に搭載して運用。この撮影手法のパイオニアである会田監督は「軽いカメラは安定しないから撮りにくいという人もいるが、周辺機器も追いついてきたから問題はありません。むしろ、カメラを高くあげられる、ジブも軽くて済む、EVA1の小型軽量によってカメラアングルを拡げられました」と語っています。
撮影を終えて
作品の質を高めてくれる、新しい撮影手法に挑戦できる、
高画質の小型カメラの可能性に期待しています。
「EVA1を使うことで、良い画が簡単に撮れるようになりました。作品の質を上げるために、限られた時間と予算で一番有益な判断は何かを考えるのが撮影監督の仕事です。単純に画質が良ければ作品が良いというわけではありません。アングルの自由度、軽さ、カット数が多く撮れる、これらは最終的に作品の質につながります。カメラ本体の小型化は、三脚など周辺機器の軽量化や、予算節約にも大きく影響します。
そういった考えで総合的に評価を行い、今回は自信を持ってEVA1を採用しました。近年、画面で見るコンテンツにも映画のようなクォリティが求められている中で、テレビドラマの画づくりも、それぞれの作品に応じて進歩していかねばなりません。そのためには、フィルムカメラのように本体の大きさが変わってもほぼ同等の画を得られるカメララインナップが理想です。その点、パナソニックのシネマカメラは、ルックが安定したVARICAM 35、VARICAM LT、EVA1を使い分けできるラインナップがあるのは良いですね。今後も小型でさらに高画質・高性能のカメラに期待しています。」(会田監督)
会田正裕氏 プロフィール
1965年生まれ 日本撮影監督協会 会員 人気刑事ドラマ『相棒』シリーズの撮影を16年間務め現在に至る。現場には常に最新技術を積極的に導入、最新のワークフロー設計構築など、日本のTV/映画界におけるデジタル撮影を牽引する一人。近年は劇場映画の撮影監督としても活躍。『相棒-劇場版-』4部作とともに『HOME 愛しの座敷わらし』(監督:和泉聖治)、『少年H』(監督:降幡康男)『TAP -THE LAST SHOW』(監督:水谷豊)など。