写真:仮面ライダーゼロワン 毎週午前9時よりテレビ朝日系にて放送。
写真:仮面ライダーゼロワン 毎週午前9時よりテレビ朝日系にて放送。

株式会社 東映テレビ・プロダクション様

歴代仮面ライダー撮影システムにVARICAMシリーズを投入
2000年以降、デジタル化された仮面ライダー撮影に不可欠なバリアブルフレームレート撮影をVARICAM LTで実現。

課題

仮面ライダーの作品はフィルム撮影の時代から、バリアブルフレームレート(VFR)による可変フレームレート撮影で行われていたが、デジタル撮影に移行した際に、どのようなシステムで撮影するのか?

解決策

初代VARICAMシリーズより、搭載されたVFR機能を使用して、24コマ以外の撮影が可能になった。現在放映中の「仮面ライダーゼロワン」でも、撮影の標準とされる22コマ撮影もVARICAM LTを使用して行われている。

VARICAM LTはVFRで撮って、その場でテストできるっていうのが一番いいんですよね。現場でプレビューができるというのは演出に直接関わってくるので、監督たちは大喜びです。

制作:株式会社 東映テレビ・プロダクション
撮影:倉田 幸治様/植竹 篤史様(アップサイド)

背景

昭和から令和へと続く『仮面ライダー』

現在、テレビ朝日系で放送中の『仮面ライダー』シリーズ。長年子供から大人まで親しまれているこのシリーズは、1971年(昭和46年)からスタート、昭和、平成そして令和へと続き、いまやTV番組だけでなく映画、ウェブ配信などでも展開されている。日本人なら誰でも知っている、石ノ森章太郎のマンガ原作の特撮ヒーロー番組です。テレビ番組は当初、フィルムカメラによる撮影だったが、ビデオカメラの導入が進む中で、報道番組やバラエティ番組が次々とビデオカメラを使う中、映画的な制作手法や画質を重視するドラマの撮影は長年フィルムが主流でした。

撮影時コマ数の変更で動きを演出

『仮面ライダー』シリーズは当初、16mmフィルムで撮影、フィルム時代には、お芝居を撮影するときは24Pで撮影し、キャラクターのアクションを撮影するときは22コマで撮影するなど、撮影のコマ数を変更することでスピード感を演出していました。
その後、ビデオの時代ではハイスピード撮影が出来なかったため、シャッター速度を上げたりなど、色々と工夫していましたが、ばらつきが出たり、編集でもどうしてもカクカクしてしまい、表現としては満足なものが出来ませんでした。
テレビ番組の撮影では、放送局の納品用にはインターレースが必要だが、合成チームにはコンピューター上でCGと合成するために、プログレッシブの映像が必要だったため、59.94iと30Pという異なるビデオフォーマットが混在していました。さらに、スローモーションで見せるためのハイフレームレート撮影では60Pで撮ることなどもあり、撮影時のコマ数の変更は演出上、重要な機能でした。

フィルム時代からデジタルシネマビデオ時代へ

そうした中、ビデオのデジタル化、テレビ放送のHD化といった放送の大きな潮流の中で、多くのテレビドラマがデジタルシネマカメラの採用が検討されました。『仮面ライダー』シリーズも2000年代前半からデジタルシネマカメラへと移行しています。従来のビデオカメラと比べ、映画製作に対応できるだけの解像度、ダイナミックレンジを持つデジタルシネマカメラが多く製品化されました。ただしそのいずれも、フレームレートは従来のビデオと同じ30コマで、フィルム上映で用いる24コマとは異なっていました。また、フィルムに撮影スピードを可変することで動きを変えることができないため、アクションの撮影には適してないものばかりでした。

人物写真:倉田 幸治様(写真左)  植竹 篤史様(写真右)
写真:屋外での撮影に使用されているVARICAM LTを側面から見た様子。
写真:屋外での撮影に使用されているVARICAM LTを前面から見た様子。

導入理由

決め手はバリアブルフレームレート

DVCPRO HD カメラレコーダ AJ-HDC270Fが出て、VFR(バリアブル・フレームレート)がビデオで出来るようになり、60コマのハイフレームレートの表現ができることで、仮面ライダーの撮影班は強く引き込まれました。『ファイズ(555)』の劇場版『仮面ライダー555 パラダイス・ロスト』(2003年8月公開)で、初代VARICAM AJ-HDC27F(2002年2月発売、以下27F)をテストし、その良好な結果から翌々年の2005年からテレビ放映でも採用されました。
2010年ごろ、P2 HD カメラレコーダ AJ-HPX2700Gが出て、P2システムをデータカメラシステムとして採用され、その後オフライン・オンライン編集から、現場の撮影まで、P2カードを使用、さらに時代は4K化へ進むに伴いVARICAM 35も採用されました。

4K×VFR×小型=VARICAM LTがメインカメラに

2015年の『ドライブ』のとき、4Kで合成素材を撮るために、VARICAM 35とVARICAM HSのラインアップを採用されています。しかし、仮面ライダーの撮影はほとんどアクションで、手持ちで走り回る撮影が多く、機動性が勝負となります。そこに登場したのがVARICAM LTです。VARICAM LTは2Kで4:2:2 10bit収録が可能。ハイフレームレートも最大240fpsまで撮影できるため、その後もメインカメラは2台ともVARICAM LTを採用されています。現在放映中の初代令和ライダー「仮面ライダーゼロワン」でも、VARICAM LTをメインカメラに撮影されています。

演出に欠かせないVFR

毎年シリーズごとにカメラの選定会議がされていますが、仮面ライダーにおける撮影カメラの変遷を見ると実にVARICAMの歴史とも言えるほど、ここ数年はほとんどVARICAMが採用されています。発売当初からの特徴であった、VFR(バリアブル・フレームレート)を駆使し、キャラクターの動きを少し早く見せるための22コマ撮影など、いまや仮面ライダーの演出には欠かせないカメラシステムになっています。

写真:室内での撮影に使用されているVARICAM LT。
写真:側面から見たVARICAM LT。
写真:仮面ライダーゼロワン他登場ライダーが並ぶポスター。
©️2019 石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映

導入後の効果

新たなコマ数の試みも

現在放映中の「仮面ライダーゼロワン」では、さらに細かいフレームレート設定、例えば21コマや20コマも試みています。その2コマの違いだけでも、動きがクイックになり、その効果を撮ってすぐ撮影現場でプレビューできるので、もっとスピード感がほしいときは18fpsなどもテストされます。こうした挑戦は仮面ライダー撮影において伝統的なものであり、フィルム時代から、アクションや長さによって現場で試されています。VARICAM LTはバリアブルフレームレートで撮って、撮影現場でテストプレビューできることで、その機能は演出に直接関わってくるので、監督たちも喜んでいらっしゃいます。

光の演出もLUTで可能に

仮面ライダーシリーズで重要なのは、合成シーンのカットです。当初は編集で後からコマをあわせたデータを合成チームに渡していましたが、コマをあわせる作業が大変で、作業スピードが合いませんでした。これが現行のVARICAMシリーズになった2016年以降は、ネイティブで指定したLUTとともに合成チームに渡すことで、コマに対して光をつけるといった細かい対応もスピーディになっています。それまでは、ラボも絡めて変換・統一して、フレームレートが正規のものに上がってるまでに、中一日から2日かかっていたものが、現在では撮った翌日には仕上げ作業に着手出来るようになりました。

ハリウッドの100分の1のコストと時間で仕上げ

収録コーデックは、AVC-Intra 200Mを使用されています。さらにハイスピード撮影でフレームレートが上がってくるとAVC-Intra 100Mに変更するなど、撮影状況に応じて機能を使いこなしていらっしゃいます。ワークフローの改善として大きかったのは、ネイティブのデータを合成シーンで一緒にして作業できる環境になったことで、これにより今までデータ変換していた時間を省くことができ、なおかつ、コーデックが軽いので、コンピュータの負荷が掛からなくなりました。仮面ライダーの現場は、常にデジタルシネマ・テクノロジーの先駆的な現場です。
この5年ぐらい、技術的な大きな変更はありませんが、ワークフローの大幅な改善でカット数はかなり増えているそうです。現在、仮面ライダーは、テレビ番組を年間50本走らせている間に、その裏では劇場版3本を撮影。それ以外に、ウェブ配信向け、出版社向けなどのサブコンテンツが同時に走っていて、この20年間、仮面ライダーは毎日のように撮影されています。
ある意味、仮面ライダーの撮影はワールドスタンダードではなく、米国ハリウッドのスタッフが見学に来ても、彼らと比べて、100分の1コストと時間で仕上げていることに驚かれます。

カメラ選定で重視するワークフローにおけるデータ共有

常に最新のカメラを投入している仮面ライダーの現場ですが、最新機種を投入する際に最も注意している点は、技術的なことや数値以上に『現場とデータを編集するオフライン、オンライン、合成チームが全ての人がネイティブでデータを開けることができるのか?』ということです。これらを前提にAVC-Intraコーデックを選択されています。最近はドローンなどを含め、多様なカメラを使うケースが増えており、かなりいろんなカメラを使用されていますが、その中のキーになっているのはパナソニックのシネマカメラです。


システム概要

仮面ライダーシリーズ・2016年以降の撮影機材遍歴。2016年、作品名:ゴースト、カメラ機材:VARICAM 35+HS、フレームレート:23.98P、撮影時カラースペース:V-Log_pana LU

納入機器

  • 4Kカメラ/レコーダー VARICAM 35
  • 4Kカメラ/レコーダー VARICAM LT

関連機器・サービス

製品写真:4Kカメラ/レコーダー VARICAM 35

4Kカメラ/レコーダー VARICAM 35

4K/120fps対応、スーパー35mm MOSセンサーを搭載した4Kシネマカメラ。VARICAM 35は14+ストップのダイナミックレンジを実現。暗部からハイライトまで豊かな描写が可能です。AVC-ULTRAやApple ProResなどのマルチコーデック4K収録やビットレート3.5Mbpsのプロキシー記録にも対応。
VARICAM 35は、4Kカメラモジュールとレコーディングモジュールを組み合わせたモジュラーデザインを採用しています。


製品写真:4Kカメラ/レコーダー VARICAM LT

4Kカメラ/レコーダー VARICAM LT

スーパー35mm MOSセンサー搭載4Kシネマカメラ。ハイエンドのシネマクオリティをコンパクトで軽量な一体型カメラレコーダーで実現するVARICAM LT。ショルダーマウント、ステディカム、ジブアーム、クレーン、ジンバル、ドローン搭載などの撮影で柔軟なカメラワークが可能です。
VARICAM LTは、EFレンズマウントを搭載。ホットスワップ対応バッテリー、赤外線(IR)撮影機能、23.98PsF出力やシネマ形式のファイルネーミング、シーンファイルなどの最新機能にも対応しています。