日本中央競馬会様 東京競馬場
課題
各エリアの用途に適した明瞭度の高い音響システムを導入したい。
解決策
他の競馬場と操作性を統一しつつ、東京競馬場ならではの運用に対応した音響システムを導入。
今回の設備更新では、来場者への効果はもちろん、私たち運用者にとっても使いやすい、非常に良い放送システムを導入できたと思います。
背景
日本有数の競馬場が19年ぶりに放送設備を更新
日本中央競馬会様が所有する東京競馬場は、日本ダービーやジャパンカップなどのビッグレースの舞台として知られる日本を代表する競馬場です。様々なレースの開催地としてはもちろん、競馬に関するイベントの会場としても使用される東京競馬場で、2021年9月に19年ぶりとなる放送設備の大規模更新が行われました。レースの開催に必要不可欠なメイン放送設備、場内各所のイベント放送設備に対し、既設設備のリプレイスに加え、機器の新設による拡声エリアの拡大も実施し、来場者の満足度と運用のしやすさを両立する音響システムを構築しました。
導入理由
競馬場設備に関する豊富なノウハウでスムーズな設備更新を実現
今回の改修では、場内への明瞭な拡声はもちろん、競馬場ならではの運用に適したシステムが求められました。「私たちは、JRAが管理する全ての競馬場でオペレーションを行うことがあります。そのため、どこの競馬場に誰が行っても確実に運用できる分かりやすいシステムを求めていました。パナソニックさんはこれまでにも全国各地の競馬場へ機器を導入されていたので、そのノウハウを生かした他場との操作性統一に加え、東京競馬場特有の運用に適したご提案もいただき、とても助かりました」と建築設備課の甲斐 一光様は語ります。
導入後の効果
場内の音響システムをそれぞれの運用目的に合わせて更新
東京競馬場で使用される放送設備は、主な目的によって、「メイン放送設備」と、「イベント放送設備」の2種類に分けられます。「メイン放送設備」はレース実況や運営上のお知らせなど、競馬場運営の根幹に関わる情報を場内全域へ拡声するための設備です。今回は既設設備のリプレイスに加え、より良い音響空間の整備を目的に、新たなエリアへの機器の設置も実施されました。「イベント放送設備」は、場内各所のイベント用スペースに設置された放送設備で、これらも今回大幅な更新を実施し、より柔軟な運用が可能なシステムを構築しました。
メイン放送設備
エリアに応じたスピーカー設置で、安定した拡声を実現
フジビュースタンドの裏に位置するパドックは、馬が音によって刺激を受けてしまうことを避けるため、これまでスピーカーが設置されていませんでした。今回は馬への刺激を防ぎながら来場者にしっかり音を届けられるよう、特別な設定を施して導入。パナソニックのプロオーディオシステムRAMSAの全天候型スピーカーWS-LB311とWS-LB301が活用されました。WS-LB311/301からの拡声には、レース開催時など馬が周辺にいる時の遮断モード、いない時の拡声モード、イベント用スペースからの音声を拡声するイベントモードの計3種類のモードを設定。これらは実況放送室の制御卓から簡単に切り替えることができるため、シーンに合わせた柔軟な運用が可能です。パドックへのスピーカー設置について、甲斐様は「東京競馬場は年間40日ほどレースを開催しており、他場でレースが行われている日は場外馬券場として多くのお客様にご利用いただいています。その際に、パドックの屋外表示装置を活用してレース中継のパブリックビューイングを行うのですが、これまでは映像のみの提供にとどまっていました。今回、パドックにスピーカーを導入できたことで、他場でレースを開催している時に来場されたお客様にも、迫力のレースを体感いただけるエリアになりました」と語ります。
フジビュースタンドの7階にあるゲストルーム、8階にある特別来賓室のバルコニーも、新たにスピーカーが設置されたエリアです。階下のスタンド席よりも奥まった位置にあり、大屋根に設置されたメインスピーカーでは拡声が不十分だったことから、今回、天井埋込スピーカーWS-5801を新設。各部屋に対して十分な音量でアナウンスを届けることが可能になりました。
既設スピーカーのリプレイスとしては、屋内スタンドであるメモリアル60スタンドの3階と、4階客席の天井スピーカーの計86台がRAMSAの天井埋込スピーカーWS-AC066へ更新されました。16 cm 2ウェイ同軸型スピーカー採用による広帯域再生とパワフルな拡声で、天井が高く客席とスピーカーの距離が離れた環境においても、高い明瞭度を実現しています。
イベント放送設備
場内各所でのイベント運営をサポートする音響システムを構築
東京競馬場には複数のイベント用スペースがあり、レースの開催に合わせて様々な催しが行われています。今回は、ウイナーズサークル、パドック、馬場内の表彰式開催場所、映像ホール、センターコート、イーストホール、勝利騎手インタビュー場所の7カ所の改修を実施。スピーカーやマイクシステムを更新し、ミキサーやパワーアンプ、ワイヤレスマイクシステム一式を格納した音響機器収納ワゴンを配置しました。その場で各種調整ができるシステムにより、効率的なオペレーションに貢献しています。
屋内のイベント用スペースのメインスピーカーにRAMSAを採用
記者会見の会場として使用されることもある映像ホールへは、RAMSA 15インチ2ウェイスピーカーWS-HM5104 を2台と、18インチサブウーハーWS-HM518L を2台設置しました。水平100°×垂直40°の広い指向性を持つWS-HM5104をWS-HM518Lと組み合わせ、前方の左右へ配置することにより、ホール全体へ均一な拡声を実現しました。
シーンに合わせた拡声を可能にする可搬式スピーカー
ウイナーズサークル、パドック、馬場内の表彰式開催場所、映像ホールへは、可搬式の仮設スピーカーとしてRAMSA 30cm 2ウェイスピーカーWS-AR200-K、20cm 2ウェイスピーカーWS-AR080-Kを導入。イベント実施時にスペース内に拡声することはもちろん、メイン放送設備と連動させることで、混雑時などに常設スピーカーでカバーしきれないエリアへの拡声に使用することも可能です。建築設備課の石倉奈那様は「東京競馬場はビッグレースの開催地となることが多く、時に10万人を超えるお客様が来場されることもあります。特に、ウイナーズサークル付近は表彰式の際に混雑しやすく、常設のスピーカーだけでは十分な音量での拡声が難しい場合がありました。今回、可搬式スピーカーを導入したことにより、どの場所のお客様へも安定した音を届けることができるようになりました」と語ります。
シンプルな操作性にこだわった制御システムで運用者の負担を軽減
今回の改修では機器の更新に加え、レースの種類や観客の入り方など、様々な状況に合わせてメイン放送設備の拡声パターンをプリセット化し、場面ごとに切り替えられる制御システムも導入。パターンの選択は実況放送室に設置された制御卓、運営用PCから簡単に行うことができます。例えば、混雑によって音の通りが悪い時は「馬あり 混雑時」のパターンを選択するだけで、競走馬がいるコースへの拡声を避けながら、お客様エリアの音量を上げた放送を行うことが可能です。拡声パターンの他にも、パドックの拡声モードの選択など、様々な設定をスイッチ1つで切り替えられるシステムにより、運用者の負担軽減に貢献しています。
複数のシステムが混在する空間でも混信しづらい1.9 GHz帯のワイヤレスマイクシステム
場内のアナウンス用には、デジタルワイヤレスマイクシステムWX-SR200Aシリーズが採用されました。東京競馬場では、既に24種類のワイヤレスシステムを使用しており、レース開催時にはテレビ局などの持ち込み機材も加わります。1.9 GHz帯の周波数帯域を用いたWX-SR200Aシリーズは、従来の800 MHz帯のワイヤレスシステムと混信しないため、複数のシステムが混在するような環境下でも安心して使用することができます。
納入機器
- RAMSA 15インチ2ウェイスピーカー WS-HM5104 ×2台
- RAMSA 18インチサブウーハー WS-HM518L ×2台
- RAMSA 全天候型スピーカー WS-LB301 ×23台
- RAMSA 全天候型スピーカー WS-LB311 ×2台
- RAMSA 30 cm 2ウェイスピーカー WS-AR200 ×18台
- RAMSA 20 cm 2ウェイスピーカー WS-AR080 ×10台
- RAMSA ニアフィールドスピーカー WS-AC066 ×84台
- 天井埋込型防滴スピーカー WS-5801 ×42台
- RAMSA デジタルパワーアンプ WP-DM912 [販売完了] ×55台
- ワイヤレスマイクロホン WX-ST200/210 ×計45本
- ワイヤレスアンテナ WX-SA250A ×19台
- ワイヤレス受信機 WX-SR202A/204A ×計9台
- ラック形非常用放送設備 WL-8500A ×2台
- 壁掛形非常放送設備 WK-EK310 ×1台
- 電力増幅ユニット WU-PD182 ×77台
- HDインテグレーテッドカメラ AW-HE70SK9 ×2台
…他
お客様の声
競馬場の音響システムに精通した心強いパートナー
競馬場の放送設備は、運用方法に特殊な点が多いのですが、パナソニックさんは競馬場ならではの音響システムに精通しており、とても頼りになりました。今回の設備更新では、来場者にとってはもちろん、私たち運用者にとっても、非常に良い放送システムを導入できたと思います。競馬場の放送設備は、その不調がレースの開催可否に関わるほど重要な設備であるため、改修の中で実感したパナソニックさんの強力なサポート体制をとても心強く感じています。(甲斐 一光様)
「来てよかった」と思えるイベントを開催したい
東京競馬場ではレースの開催に合わせて、実際に足を運んでいただいたお客様に楽しんでいただけるような様々なイベントを開催しています。今回、場内各所の放送設備をより充実させることができたので、レースはもちろんイベントでもどんどん活用し、訪れたお客様が「東京競馬場に来てよかった」と感じられるような付加価値を生み出していきたいと思います。(石倉 奈那様)
お客様紹介
日本を代表するビッグレースの舞台
東京競馬場は目黒競馬場を前身として1933年に開場した日本中央競馬会所属の競馬場です。広大な場内にフジビュースタンド、メモリアル60スタンドの2つのスタンドを有し、コースも芝2,083.1m、ダート1,899.0mと国内有数の距離を誇ります。春の日本ダービーや秋のジャパンカップなど毎年数多くのビッグレースが、この競馬場を舞台に開催されます。
RAMSA WS-HM5000シリーズ 15インチ2ウェイスピーカー WS-HM5104 RAMSA 18インチサブウーハー WS-HM518L
ホールのメインスピーカーに最適なBiamp駆動対応スピーカー。