写真:イマーシブ・ファン・ゴッホ展
写真:イマーシブ・ファン・ゴッホ展

イマーシブ・ファン・ゴッホ展
トロント

プロジェクションマッピング
DLP®レーザープロジェクターを活用したプロジェクションマッピングでゴッホの作品に命を吹き込む

課題

トロント・スタービルの屋内を使って360度の映像体験を提供したい。1枚の巨大かつシームレスな映像を作り出したい。

解決策

レーザープロジェクターの「エッジブレンディング機能」と「カラーマッチング機能」を用いて、個々の画像の境界を融合させ、滑らかでシームレスな映像を大きく投写することに成功。

来場者に没入感のある体験を提供できており、初回販売分は完売。ネット上でも高い評価を集めています。展示開始後のメンテナンスや維持の作業も最小限に抑えられました。

ライトハウスイマーシブ社(Lighthouse Immersive社) プロジェクトマネジャー ショーン リチャーズ様(Sean Richard)
VanGogh展inトロント事例動画

背景

ゴッホの作品に迷い込む体験をつくる

Lighthouse Immersive社様が、オランダ人のポスト印象派画家フィンセント・ファン・ゴッホの作品を体感できるデジタルアート展の企画に着手され、歴史的にもグレータートロント圏と深い関わりを持つ地区にある、トロント・スタービルが会場に決定されました。没入感を実現するために、複数のプロジェクターを連動させ、剝き出しの床や壁を生まれ変わらせるための装置の設計を始められました。今回の展示では、金属やレンガ、コンクリートの壁や柱、床が映像を映し出すカンバスに。あらゆる角度から映像が迫り、ゴッホの作品の中に迷い込むような体験を楽しむことができます。


導入理由

ブレンディングにより巨大かつシームレスな映像をつくる

映像をブレンディングする上での精度を第一の条件に、エネルギー使用量、熱、耐久性なども考慮して、投写機器を検討されていました。その結果、DLP®レーザープロジェクターが液晶やランプ光源の製品よりも優れているという結論から、パナソニックのプロジェクター53台をご採用いただきました。この展示の設計では、53台のプロジェクターを連動させて、ビルの壁や柱に高さ約8メートル、幅最大約52メートルの映像を映し出します。理想的な没入感を実現するためには、設置の自由度が高く、優れたレンズシフト機能やエッジブレンディング機能を備えたプロジェクターが必要でした。


導入後の効果

ゴッホの世界を再現

Lighthouse Immersive社の共同創設者でプロデューサーのコーリー・ロス様によると、没入感を実現するためには、広さ約1020平方メートルの会場の仕様に合わせて、展示物を正確に設計する必要がありました。このイベントならではの特長は、従来とは違い、映像投写のために仮設のスクリーンや壁を設置せずに、施設本来の柱、壁、床、鉄、レンガ、コンクリートをそのまま映像を投写するためのカンバスとして活用されました。Lighthouse Immersive社のプロジェクトマネージャーであるショーン・リチャーズ様は、クリエイティブなコンセプトを物理的に実現できるよう、プロジェクターの選定と設置に工夫をされました。最も苦労したのは、トロント・スタービルの壁に映像をマッピングできるよう、プロジェクターのレイアウトを設計することだったとおっしゃいます。Lighthouse Immersive社は、ヨーロッパのクリエイティブチームや美術チームと協力してこのイベントを展開。真に作品世界に没入できる体験を創造するという目標達成のためには、正確さに妥協は許されないことを双方が認識されていました。


写真:広さ約1020平方メートルの会場の仕様に合わせて映像を投写

広さ約1020平方メートルの会場の仕様に合わせて映像を投写。

写真:360度の没入体験を実現

施設本来の金属やレンガ、コンクリートの壁や柱、床すべてを映像を映し出すカンバスにすることで、360度の没入体験を実現。


レンズシフト機能とDLP®レーザープロジェクターの特性を活用した空間設計

Lighthouse Immersive社様のチームはPT-RZ770プロジェクターの幅広いレンズシフト機能を駆使。360度全方位に設置できる機能を活かし、最大下方角度6度に設定し、プロジェクターを壁から5メートルの位置に設置されました。これにより、あらゆる角度からの投写が可能となります。「プロジェクターを縦向きで使用していることを考えると、このシフト幅はかなりすごいですね」とリチャーズ様はおっしゃいます。「横向きの場合なら想定内ですが、レンズが映像のほぼ上端にあり、プロジェクターの位置が壁にかなり近いことを考えると、縦向きとしては非常に長い映像になります。」単に左右にシフトするだけでなく、それぞれのプロジェクターの投写が全体の映像を構成する1つのピースであるため、これらの映像を継ぎ目なく融合させる必要があります。リチャーズ様によれば、このようにシフト幅が大きい場合の懸念は、映像の歪みとして端がぼやけてしまうことです。端がぼやけると、別々の映像を継ぎ目無く繋ぎ合わせることができなくなり、全体的な没入感に影響を与えてしまいます。「幸い、パナソニックのプロジェクターは同等に精密で鮮明でした。」とリチャーズ様はおっしゃいます。「(ランプ光源や液晶プロジェクターの場合)ある程度の個体差があると思われますし、さらに経時変化が起こる可能性もあります。精度が十分ではないため、映像の端を使用することはできません。」(Lighthouse Immersive社 リチャーズ様)


優れたメンテナンス性

ブレンディングと精度の向上をもたらしたレーザープロジェクターによる投写は、メンテナンスの面でもプラスに作用しました。リチャーズ様は、その必要コストと時間を「最小限」と表現されました。これは、レーザープロジェクターがランプ光源のプロジェクターに比べて耐久性に優れているためです。さらに、ランプ光源ではなく、レーザー光源のプロジェクターを採用するメリットとしては、ランニングコストの低さも挙げられます。SOLID SHINEレーザープロジェクターを活用することで、メンテナンスがほとんど不要となり、さらにはさまざまな省エネ機能を搭載しているため、プロジェクター連続運転時のエネルギー消費量も少量で済み、最終的にはコストを抑えることが可能となります。

写真:継ぎ目のないシームレスな映像表現を実現
DLP®プロジェクターのブレンディング機能により、継ぎ目のないシームレスな映像表現を実現

ソフトウェアで可能性を広げる

今回の映像の実現にあたっては、投写用プロジェクターもさることながら、パナソニックのソフトウェア幾何学歪補正・設置調整ソフトウェア(Geometry Manager Pro)のエッジブレンディングやカラーマッチング機能を使用することでプロジェクターの潜在能力を最大限に引き出すことができた、とリチャーズ様はおっしゃいます。映像を寸分の狂い無く繋げるため、チームは800枚のテープを使って壁にグリッドを作成されました。 プロジェクター管理ソフトを活用し、ノートパソコンからワイヤレスで映像の境界部分を調整することで、1枚の映像のような効果を出すための精度を実現されました。「この映像を繋げる工程には10日間ほどかかりました。専門の映写技師を呼んだのですが、彼はこの作業の天才なんです。」とリチャーズ様はおっしゃいます。 「会場の一方の壁からスタートして、各プロジェクターに割り当てたグリッドに合わせて投写していきます。そしてこの工程が終わったら、最初に戻り、正しい状態になるまで微調整を4、5回繰り返します。調整を重ねるたびに、どんどん精度が上がっていくのです。」10日間という限られた時間の中でこの仕事をゼロから成し遂げるためには、ノートパソコンを使って現場からこのような調整やプロセスを完了できることが何よりも大切だった、とリチャーズ様は振り返られます。


写真:立ち位置をプロジェクターで投写
ソーシャルディスタンスを図るための立ち位置(円)をプロジェクターで投写。
写真:投写する画像の高さを出すためプロジェクターを縦型に設置
投写する画像の高さを出すため、プロジェクターを縦型に設置。
写真:レーザープロジェクターの投写による高精細で色鮮やかな映像
DLP®レーザープロジェクターの投写による高精細で色鮮やかな映像。
写真:来場者はゴッホのアートの世界観に浸る
来場者はゴッホのアートの世界観に浸る。

「車でゴッホ」美しい憩いの場を提供

Lighthouse Immersive社様のチームがこのプロジェクトに着手した時には、新型コロナウイルス感染症の広がりが全世界にどのような影響を及ぼすのか、まったく想像もできない状況でした。当初は2020年5月の公開を予定されていたものの、ソーシャルディスタンスに関するガイドラインを遵守するために公開日を延期し、制作期間を短縮されました。開幕直前には建物の中に2つ目のスペースを活用し、「車でゴッホ」、ドライブインで楽しめるアート展を作成。安全な車の中から展示を楽しめるようにされました。その結果、ゴッホの名画の中に迷い込むことで、この未曾有の時代からの束の間の逃避体験を提供することが可能になりました。ウォークイン、ドライブスルーともに、当初の販売分は完売しており、ネット上での評判も上々です。「コロナ禍のご時世における素晴らしい芸術鑑賞の方法でした。」と、現地観光ガイドのアニータ様はオンラインレビューで語られました。「最高の体験でした。」


写真:来場者は車の中からゴッホのアートを楽しめる

来場者は車の中からゴッホのアートを楽しめる。

写真:ドライブイン・アート展

ソーシャルディスタンスを意識した、車の中からゴッホのアートを楽しむドライブイン・アート展。


納入機器

  • 1チップDLP®方式レーザープロジェクター PT-RZ770B ×53台
  • ズームレンズ ET-DLE060 ×53台

お客様紹介

ゴッホの世界観に浸る新しい体験

2020年夏、トロントで、フィンセント・ファン・ゴッホ(Vincent van Gogh)の世界を楽しめるデジタル美術展が開催されました。会場であるトロント・スタービルの倉庫の壁や床に、ゴッホ作品をプロジェクターで映し出すことで360度の映像体験が実現され、来場者はゴッホの世界観に浸ることができます。

写真:トロント・スタービル
トロント・スタービルは、世界で最も長い通り「Yonge Street」のふもとに位置されている。

関連機器・サービス

製品写真:PT-RZ770B

1チップDLP®レーザープロジェクター PT-RZ770B ×53台

1チップDLP®方式SOLID SHINEレーザーによる高画質投写を実現した1チップDLP®プロジェクター。


製品写真:ET-DLE060

ズームレンズ ET-DLE060 ×53台

幅広い投写距離に対応できる、1チップDLP®プロジェクター用ズームレンズ。