「AI×ネットワーク」はビジョンから実装へ ――NVIDIA・Microsoftとの共創と、顧客事例に見るBlue Yonderの現在地

「AI×ネットワーク」はビジョンから実装へ ――NVIDIA・Microsoftとの共創と、顧客事例に見るBlue Yonderの現在地
文:末岡洋子、写真提供:Blue Yonder

パナソニック コネクトの100%子会社であり、AIを中心にさまざまなサプライチェーンソリューションを提供する米ソフトウェア企業のBlue Yonderは、2026年5月17〜19日に米国サンディエゴで、顧客向けのフラッグシップイベント「Blue Yonder ICON 2026」(以下、「ICON 2026」)を開催しました。

今年のICONは、昨年発表された、Blue Yonderによる次世代AIソリューションが単なる「アイデア」ではなく、サプライチェーンに実益をもたらす「フレームワーク」として確立されたことを証明する場となりました。

AI記事要約 by ConnectAI

※ConnectAIは、パナソニック コネクトが社内で活用している生成AIサービスです。
  1. サプライチェーン専門AI「Model Training Factory」の発表
    Blue YonderはNVIDIAとの協業で、サプライチェーンのあらゆるフローで業務を遂行し、意思決定の自動化と高精度の予測を実現するAIモデルの生産プラットフォーム「Model Training Factory」を発表しました。

  2. コグニティブソリューションの実証
    Crate and Barrel社やUnder Armour社などの企業事例を通じて、AIによる需要予測と補充判断が、Sainsbury's社で廃棄15万件・値下げ販売80万件を削減するなど、具体的な成果と経済的メリットをもたらすことが示されました。

  3. 持続可能性とビジネス成果の両立
    Blue Yonderは「サステナブル・アバンダンス」を提唱し、Micron社の事例で、サプライチェーンの見直しが受注充足率の向上と温室効果ガス排出削減を両立させることを実証しました。

NVIDIAとともに築く、“サプライチェーン専門AI”の新基盤「Model Training Factory」

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今日のサプライチェーンが直面する大きな課題の一つが、「データのサイロ化」です。部門や企業ごとにデータが分割されており、情報が連携できていない状態では、サプライチェーン全体の動きが見えづらくなり、予期せぬリスクや混乱を招く要因となります。

その解決策として、Blue Yonderは、3,000社以上の取引パートナーをつなぐBlue Yonderネットワークを基盤に、サプライチェーンの意思決定の自動化と高精度の予測を実現する次世代AIソリューション「コグニティブソリューション」を展開してきました。(参照:サプライチェーンの「限界を超える」――Blue Yonderが発表した、人とAIの協働を実現する次世代ソリューションとは?

ICON 2026 基調講演のステージに立ったBlue Yonder CEOのダンカン・アンゴーヴは、「ClaudeやGeminiといった最先端のAIモデルは非常に強力ですが、サプライチェーンのトラブルは一般的な知識や推論だけでは解決できません」と語り、「サプライチェーン専門」のAIソリューションの重要性を強調しました。

「サプライチェーンの現場は、倉庫・輸送ネットワーク・サプライヤー・店舗・工場をまたぐ、極めて大規模で複雑な現場です。さまざまな厳しい制約条件の中でも、それぞれの現場で、リアルタイムで数千もの意思決定が絶え間なく求められています」

「AI×ネットワーク」はビジョンから実装へ ――NVIDIA・Microsoftとの共創と、顧客事例に見るBlue Yonderの現在地
(左)Blue Yonder CEO ダンカン・アンゴーヴ、(右)NVIDIA エンタープライズ向け生成AIソフトウェア担当ヴァイス・プレジデント キャリ・ブリスキ

こうしたサプライチェーンの現場では、従来型の画一的なシステムではなく、日々変化する環境に適応して進化し続けるソリューションが求められます。その具体策として今回発表されたのが、NVIDIAとの提携によるAIモデルの生産プラットフォーム「Model Training Factory」です。

アンゴーヴは、「Model Training Factory」について「サプライチェーンのあらゆるフローで、各分野の専門家と同等のレベルで業務を遂行できるよう訓練された、高度なAIエージェント開発が目的」と説明しました。

特筆すべきは、AIモデルの生成だけではなく、実際の業務の遂行からその結果の評価までを一気通貫で担うことにあります。生成・評価・改善、そしてオーケストレーション。このサイクルを自律的に繰り返すことで、Blue YonderのAIエージェント群は環境の変化に適応しながら、高精度・高スピードの意思決定を実現できるのです。(参照:Blue Yonder、NVIDIAとオートノマス(自律型)サプライチェーンを強化するAIモデル学習基盤を開発

Blue Yonder Chief Innovation Officerのアンドレア・モーガン=ヴァンドームは、「Model Training Factoryは、サプライチェーン向けに高度に最適化されたエージェンティックモデルを生み出します。お客さま固有のサプライチェーン環境に合わせて意思決定を行い、実行できるAIモデルなのです」とコメント。

現場の動きを予測、学習し、自ら進化し続ける——。AIはもはや未来のツールではなく、不確実な環境下でサプライチェーンを機能させる、実戦的な「フレームワーク」へと姿を変えているのです。

顧客事例が示す、コグニティブソリューションの確かなポテンシャル

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基調講演のステージには、Blue Yonderのコグニティブプラットフォームを実装する企業の経営陣も登壇し、その変革プロセスが語られました。

家具・インテリア小売 Crate and Barrel社 CTOのジェイソン・ブースは、パートナーにBlue Yonderを選定した決め手が「ビジョンの共鳴」にあったと明かします。ブースが求めていたのは、単なるソリューションの追加ではなく、サプライチェーンの明日を共に描けるパートナーシップ。場当たり的なトラブルへの対処ではなく、持続的な成長と卓越した顧客体験を実現するサプライチェーンの構築は、まさに両社が共有する一貫したビジョンです。

また、Under Armour社 SVP(上級副社長)のケリー・マーハー氏は、「イノベーションとは何を作るかだけでなく、いかに計画し、意思決定し、チームとして行動するかだ」とコメント。Blue Yonderのソリューションを通じて、自社の財務、需要、供給を同一のシステムに統合したことで、組織一体型の迅速な対応が可能になったとその手応えを語りました。

サプライチェーンの変革がもたらす実利を具体的な数値で示したのが、小売大手 Sainsbury's CEO サイモン・ロバーツです。「新しいテクノロジーを使うことが目標ではなく、確かな成果を出したかった」という同社は、Blue Yonderのソリューションを採用し、AIによる需要予測と補充判断をオペレーションに据えました。その結果、2025年のピーク期には、廃棄15万件・マークダウン(値下げ販売)80万件の削減を実現したといいます。

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(左)Microsoft Commercial Business CEO ジャドソン・アルソフ、(右)Blue Yonder CEO ダンカン・アンゴーヴ

さらに、Microsoft Commercial Business CEO ジャドソン・アルソフも、アンゴーヴとともに登壇。今後10年間のサプライチェーンをどのように変革していくのか、その展望を語りました。

アルソフは、AIデータセンターがこれからの10年を支える重要なインフラになると指摘。その構築と運用には、強固で信頼性の高いサプライチェーンが不可欠であるとし、Blue Yonderとの提携が自社のインフラ稼働を加速させるための「戦略的投資」であると語りました。

もちろん、このパートナーシップはメリットの一致だけが理由ではありません。アルソフは、「カスタマーファースト、イノベーション主導、そして信頼に基づく運営」という両社共通の価値観が、パートナーシップの成功要因であると指摘しました。

多くのグローバルリーダーたちが、AIによるサプライチェーンの高度化を、不可欠な経営戦略として捉えている。ICON 2026は、その事実が決定的なものとして示された場となりました。

AI時代の購買体験には、ネットワークの力が不可欠

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(左)Blue Yonder Chief Innovation Officer アンドレア・モーガン=ヴァンドーム、(右)Syndigo Chief Strategy and Alliances Officer スティーブン・カウフマン

Blue Yonderが提供するAIソリューションには、その情報源である「Blue Yonder Network」が欠かせません。2日目の基調講演では、デジタル上の計画を現場で機能させるためのネットワークの重要性が改めて強調されました。

モーガン=ヴァンドームは、「ネットワークがなければ、計画も実行も外部環境と同期されないまま行われることになります。ネットワークがあって初めて、外部環境に即した計画と実行が可能になるのです」とコメント。また、その有用性を高める一手として、Blue YonderとSyndigoによる新たなパートナーシップも発表されました。今回の製品データの管理・配信ネットワークを提供するSyndigoとの連携により、顧客の製品データをネットワーク上で一元管理、即時に実行することが可能になります。

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Blue Yonder Chief Innovation Officer アンドレア・モーガン=ヴァンドーム

SyndigoでChief Alliances & Strategy Officerを務めるスティーブン・カウフマンは「製品データを1回更新するだけで、ネットワーク上のすべての取引先に即時反映されます。遅延もデータの不一致も、棚の欠品も起きません」と提携の意義を訴えました。

今回の提携は、実店舗のみならず、オンラインでも真価を発揮します。現在、小売業界ではAIエージェントが消費者の代わりに買い物を担う「エージェンティック・コマース」が急速に普及しています。例えば、消費者が「結婚式」「大事な会議」といった目的を伝えるだけで、AIが最適なコーディネートを提案し、決済まで行う――。AI時代の新たな商取引の形態です。

しかし、こうした購買体験は、正確な在庫管理がなければ成立しません。オンラインの顧客やAIエージェントは、目当ての商品が「在庫切れ」と知れば、即座に他社サイトへと離脱してしまいます。ECの重要性が増す現代において、オンライン上の在庫管理とそのデータの正確性は、まさにビジネスの生命線といえるでしょう。

今回のSyndigoとの連携を通じて実現しようとしているのは、消費者が欲しい商品を確実に手に取れるという「当たり前」を、ビジネスの現場で守り抜くこと。この企業姿勢は、Blue Yonderが掲げる「エンドツーエンド」の思想が、単なるソリューションの提供にとどまらず、最終的な成果にまで責任を持つものであることとも共通しています。

データが示す、「サステナブル・アバンダンス」の実現

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Blue Yonder Chief Sustainability Officer サスキア・ヴァン・ヘント

Blue Yonderは、一貫してサステナビリティをビジネスの成果と切り離せないものとして捉えています。ICON 2026では、Blue Yonder Chief Sustainability Officer サスキア・ヴァン・ヘントが、この考え方が具現化された事例として半導体大手 Micronの取り組みを紹介しました。

Micronの製品は、1つのチップが複数の国にまたがる数百の製造工程を約6カ月かけて通過します。この極めて複雑なサプライチェーンを見直すにあたり、同社のサプライチェーン・マネジメント担当VP、シヴァ・エストゥリ氏は、一つの大きな「問いの転換」を行いました。

それは、「サステナビリティにコストをかける余裕があるか」という従来の問いを捨て、「持続可能性と競争力をいかに両立させるか」という新たな問いを立てることでした。

「『従来の問い』は、トレードオフを前提にしています。つまり、速くて収益性が高いか、環境に優しいかという二者択一の発想です。しかし『新たな問い』を立ててみると、廃棄や非効率こそが最大のコストであることに気づきます。サステナビリティと収益性は実は同じ方向を向いているのです」

新たな認識のもと、同社はBlue Yonderの「Supply Planning」と「Order Promising」を導入。その結果、初日からフィルレート(受注充足率)が4%向上、カスタマーコンフォーマンス(顧客要求充足率)は25%上昇しました。さらに、45%近くの顧客から推奨ベンダーにも選ばれ、温室効果ガスの排出原単位を56%削減するなど大きな成果を挙げることができたといいます。

アンゴーヴが数年前から提唱する「サステナブル・アバンダンス」――サプライチェーン改革を通じて世界をより豊かで持続可能にするというビジョンは、具体的な数字を伴い、着実に現実のものとなっているのです。(参考:Blue Yonder ダンカン・アンゴーヴCEOが明かす夢 AI×ネットワークで、人類に「豊かさ」をもたらすサプライチェーンに

「AI×ネットワーク」は理想から実装へ

「AI×ネットワーク」はビジョンから実装へ ――NVIDIA・Microsoftとの共創と、顧客事例に見るBlue Yonderの現在地

ICON 2026では、多数の新ソリューションや機能強化も発表されました。新たなコグニティブソリューション「Space Planning and Category Management」は、サプライヤー、店舗スタッフ、カテゴリーマネージャーがリアルタイムで棚割りを共同作成できる環境を提供します。また、「Production Planning and Scheduling」は、サプライ計画と工場の現場をリアルタイムでつなぎ、計画と実行のギャップを解消します。

その他にも、発注承認を加速させながら各拠点での意思決定の根拠を明示するAIエージェントの新スキル「Inventory Ops Agent」や、倉庫管理者向けの新たなモバイルアプリなど多くのソリューションが発表されました。

Blue YonderがICON 2026で提示したのは、「AI×ネットワーク」のシナジーによる、サプライチェーン変革の力です。それは遠い未来のビジョンではありません。不確実性の高い現代において、ビジネスに実利をもたらす実戦的な基盤として、今まさに現場を動かしています。

「Blue Yonder ICON 2026」会場の様子はこちら(動画)

「AI×ネットワーク」はビジョンから実装へ ――NVIDIA・Microsoftとの共創と、顧客事例に見るBlue Yonderの現在地
「Blue Yonder ICON 2026」会場の様子

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