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【イベントレポート】梶谷 健人さんに学ぶ、AI時代における人や組織の存在価値

【イベントレポート】梶谷 健人さんに学ぶ、AI時代における人や組織の存在価値

会社の境界線を越え、誰もが「学び合い、つながる」ことができるオープンなカルチャー作りをめざすパナソニック コネクト。その一環として、2025年9月2日に梶谷 健人さんをゲストに招いた特別イベント「生成 AI でどう変わる?日々の業務と組織の在り方」を開催しました。多くのパナソニック コネクト卒業生や現社員(CONNECTer)らが参加した当日の様子をお届けします。

オフラインとオンラインで、卒業生・現社員・一般の方が学び合いながらつながる場に

イベントは会場での参加のほか、ライブ配信も実施

イベントは会場での参加のほか、ライブ配信も実施

パナソニック コネクトでは、アルムナイ、現社員、当社に興味を持っている方たちがネットワーキングしながら学び合える場としてイベントを開催しています。今回は、『生成AI時代を勝ち抜く事業・組織のつくり方』などの著者であり、さまざまな企業の事業成長を支援するアドバイザーとして活躍する株式会社POSTS代表の梶谷 健人さんをお招きし、生成AIが業務や組織にどのような変化をもたらすのか、その未来について語っていただきました。

ゲスト

梶谷 健人さん

株式会社POSTS代表
「プロダクト戦略と先端テック活用を軸に、再現性のある事業成長を実現するアドバイザー」として複数社の顧問に従事。株式会社VASILYでのグロース担当や、新規事業立ち上げとグロースを支援するフリーランスを経て、2023年8月まで株式会社MESONの代表としてXR/メタバース領域で事業を展開。著書は『生成AI時代を勝ち抜く事業・組織のつくり方』『いちばんやさしいグロースハックの教本』。

活用力よりも「土台となる力」が重要。生成AIを使いこなすために必要なマインドセット

梶谷さん写真

――梶谷さん、本日はよろしくお願いいたします。まずは、生成AIを活用するにあたって重要なマインドセットについてお伺いします。私たちが意識しておくべきポイントは、どういったところでしょうか?

私は大手企業からスタートアップまで、幅広い企業をご支援しています。その中で感じるのは、日々流れてくるAIなどのトレンド情報と、実務におけるAIの話には乖離があるということです。

SNSやさまざまなメディアでは、AIを使うためのテクニックの話が多く出ています。しかし、その土台となるマインドセットを固めることの方が、はるかに重要です。私がとくに重要だと思う6つをピックアップしましたので、その中からいくつか紹介します。

投影資料5ページ

はじめに、「AIに0から100まで任せない」ということ。AIをなかなかうまく使えない人は、ほとんどの場合、0から100までAIに任せようとしています。反対に、AIをうまく使っている人は、最初と最後を人、中間をAIという形で使うことでAIの良さを引き出しています。

工程を0から1、1から90、90から100に分けた場合、最初の「0→1」は人が担い、方向性やゴール設定、注意点や避けるべきことなどを決めます。AIは問題意識や疑問を持ったりすることはできないため、ここは人の役割です。

中間の「1→90」は、AIに任せます。人が作った火種を展開し、肉付けしていくことはAIが得意とする部分ですから、時代のトレンドに逆らわず積極的に活用していきましょう。

最後の「90→100」は、人が責任を持つべき部分です。これは、マインドセットの2つめにある「LLMは物事を『理解しているわけでない』ことを理解する」につながるのですが、現在のChatGPTのような大規模言語モデルは、言葉や概念を理解しているわけではなく、前後の文脈から「もっともそれらしいもの」を出すモデルに過ぎません。原理的に100点のものは出力されないため、それを100点に仕上げ、最終的な判断と責任を持つのは人なのです。

次に、「AIの評価を1ヶ月以上固定しない」こと。たとえば、画像生成AIはこの1年でクオリティがぐっと上がりました。AIは指数関数的に進化しているので、今は「仕事には使えない」と思っていても、1年後には相当なクオリティになっている可能性があります。体感としては1ヶ月でできることがかなり変化するので、1ヶ月空いたらもう一度、「これはAIでできるのか」を調べることが大事です。

そして、「AIへの指示は、部下への指示と同じ」ということ。良いプロンプトの特徴は、すべて部下に指示を出す時に気をつけるべきことと同じです。AIをうまく使えていないと感じたら、「部下への良い指示とは何か」を考えてみるのといいのではなないでしょうか。

AIに「良い指示を出す」ために押さえるべき8つのポイントとは

梶谷さん写真

――次に、これらのマインドセットを持った上で、実際にどう活用したらいいのかをお伺いします。梶谷さんが普段どのように活用されているのか、具体的なテクニックや事例などがあれば教えていただけますか?

まずは、プロンプトの基本テクニックをご紹介します。先ほど「AIへの指示は、部下への良い指示と同じ」とお伝えしましたが、以下の8つのテクニックを押さえておけば、ほとんどのプロンプトをマスターすることができます。

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最初に明記するのは期待する役割。これは、「君にこういう役割をお願いしたい」と部下に伝えるのと同じです。

次に、「何をしてほしいのか」というタスクのゴールを端的に書き、前提条件や制約となる与件を加えます。たとえば、プレゼン資料の作成を部下に頼む場合、案件の背景やプレゼン相手の課題などを伝えると思うのですが、それと同じでAIも文脈が必要です。もしAIにどのような与件を示せばいいのかがわからないい場合は、「どのような情報が必要か」をAIに聞いてみることをおすすめします。

そして、部下にプレゼン資料のラフをセットで渡すのと同じように、理想的な出力形態を指定します。

あとは、参照すべき具体的な良い例を示した上で、意識すべき点や避けるべき点などのルールを提示します。また、AIは人と似ていて、中間で伝えたことを忘れる傾向があります。そのため、守ってほしいルールなど「重要なことは最初と最後に記載する」ことがポイントです。

良いプロンプトのポイントは、これだけです。実務で使うプロンプトは、ほぼこのルールで作ることができます。

梶谷さん写真

その上で、普段私は音声入力をヘビーに使っています。音声入力はタイピングの8倍速いと言われていますし、パソコンやスマートフォンに入っている音声ソフトでも十分です。

文脈がないとAIは的外れな回答をすることが多いため、背景情報をしっかり入れることが重要なのですが、それをタイピングで細かく入力するのは大変です。部下に口頭で指示を出す時のように、音声入力で一気に伝えることで精度が数段上がります。

また、AI議事録もよく使っています。AIを「無意識のうちにAIを使っている状況」をいかに作るかが、個人においても組織においても重要です。その意味でも、ミーティングに自動で入ってきて議事録を作成してくれるツールを使うのがおすすめです。

AIとうまく付き合いながら、人にしかできない「入口」「出口」の専門性を高める

投影資料30ページ

――ここまで便利になると、自分の仕事がAIに奪われるのではないかと恐怖を感じる方もいるのではないかと思いますが、その点についてどうお考えでしょうか?

私は、きれいごと抜きに人の価値は失われないと考えています。それは、人の究極的な価値は「仕事の入口と出口に寄っていく」と考えているからです。

仕事を単純に「入口」「中間」「出口」とモデル化した際、中間の作業をAIが代替していくことは避けることのできない大きな流れです。今でも、ライティングやコーディング、電話応対などはAIが人以上のパフォーマンスを上げている現状があります。

その中で人がめざすべきルートは2つ。ルート1は、中間領域で世界トップクラスの職人として突き抜けていくこと。ルート2は、入口と出口に価値を寄せていくこと。AIは、ゴールの設定、課題の設定、問いの設定といった入口は苦手です。この役割を担う人材の価値は、現時点でもかなり高まっています。

そして、AIが大量のアウトプットを生成する中で、それを適切に目利きし、レビューする能力。冒頭でお話ししたように、AIが生成するものは100点ではありません。90点のものを100点に引き上げる専門スキルやディレクション力が重要です。

さらに、AIが作ったアウトプットを使って社内外の人を動かすための交渉力、マネジメント力、プレゼンスキルも必要です。中間領域は「with AI」というスタンスで取り組み、人だけが担える部分に自身の専門性や価値を寄せていくことが、ますます重要になると考えています。

より本質的に言えば、もはや人とAIを分けて考えない時代になっていくと思っています。AIを深く活用している人たちは、AIでできることまで含めて「自分の能力の輪郭」と捉えています。今後、AIはスマートフォンやインターネットと同じように、私たちの脳の拡張領域として機能していくはずです。

組織の変化に伴い、マネジメントのあり方も変わる。文化の共存を意識した環境づくりを

講演の写真

――少し未来の話も出たところで、これからの社会や組織がどうなっていくのかについて、梶谷さんの見解をお聞かせいただけますでしょうか?

組織の未来はよくご相談いただくテーマですが、3つの大きな変化に絞ってお話しします。

1つめは、ヒエラルキー型組織から群的な組織形態へのシフトです。今はいろいろな組織形態があるものの、多くの組織はピラミッド型の階層構造をしています。しかしAIによって、1つの事業に必要な人員が大幅に減っています。実際に、AIを使ったコーディングで、ソフトウェア開発の効率がすでに10倍になっていると言われています。

人員を活かすためには、これまで1000人で1つの事業を回していた企業が、100人規模の事業を10個立ち上げる「スタートアップ連合」のような形態になっていくと考えられます。それに伴い、マネジメントのあり方や組織間の連携の再設計が必要になります。

2つめは、グローバル人材の採用と、文化的重要度の高まり。現在、AIによるリアルタイム音声翻訳技術の進化によって言語の壁はなくなりつつありますから、当たり前にグローバル人材を採用して戦う企業が増えていきます。

しかし、言語の壁はなくなっても、文化の壁はなくなりません。そのため、今以上に異なるカルチャーを持つ人たちが働きやすいような環境づくりが必要になっていきます。

3つめは、中間管理職の大移動。1000人で回していた事業が100人で回るようになると、中間管理職の人数も減っていくはずです。彼らが次のステップに進むためのリスキリングや、社内外でチャレンジの場を提供していくことが、新たなテーマとなっていくと考えています。

プロンプトの「型」とAIとの分業で、生産性は劇的に向上する

講演の写真

――これからかなり大きな変化が起こるとのことですが、それに備えて私たちが明日からどんな行動をするべきかについて、ご意見をお聞かせください。

個人レベルでできることをお話します。まずは、3つで構いませんので、自分なりのプロンプトの「型」を作ることです。たとえば、「記事執筆用プロンプト」「リサーチ用プロンプト」のように、用途に応じた型を作成し、すぐに呼び出せるようにしておくことをおすすめします。仕事をする上での下処理になる部分なので、長期的に見ると生産性は劇的に向上します。

次に、業務を「0→1」「1→90」「90→100」のプロセスに分けてAIと分業してみることです。AI活用力が高い人というのは、「これはAIでできる」という判断力の高い人です。ですから、すべての業務でこの分業を試していくことで、AIが得意なことと苦手なことを知ることができます。

最後に、毎週または隔週で1時間、AIのトレンドをキャッチアップする時間を設けること。忙しいとAIを試してみることが後回しになりがちですが、意図的に時間を確保することで大きな流れを把握することができます。

――まずは実践していくことが大切ですね。梶谷さん、本日はありがとうございました。

参加者の声&懇親会

懇親会の様子の写真

――講演終了後は、会場に集まったメンバーで懇親会を開催。参加した方からは、次のような感想が寄せられました。

参加者A:これからAIを使っていかなければいけないと思いつつ、きっかけが掴めずアクションを起こすことができていなかったので、「気づいたらAIを使っていた」という状況をいかに作るか、という部分にハッとさせられました。小さいことから始めて、ゆくゆくはAIを生活の一部に組み込めたらいいなと考えています。

参加者B:梶谷さんのお話を聞いてみたいと思って参加しました。AIで100点をめざすのではなく、 90点のものを100点に引き上げる力を磨くことが大切という話がとくに参考になりました。

参加者C:自分ではわりとAIを使っているつもりだったのですが、きちんと活用しきれていないかもしれないというモヤモヤした部分がありました。そこを整理してもらえた感覚があり、とてもすっきりしました。

懇親会の様子の写真

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