Connect Talent Community Hubパナソニック コネクトと接点を
持つ方々とのコミュニティ
積み重ねた技術力、つながりは裏切らない。「自分を試してみたい」とフリーランスの道へ
新たなステージで活躍している「パナソニック コネクト卒業生」をゲストに迎え、それぞれのキャリア観を紐解いていく「コネクトタレントコミュニティラジオ」。第3回のゲストは、渕上 竜司さんです。パナソニックに24年間勤め、現在はフリーランスとしてAIの開発などを行っている渕上さんに、キャリアの歩み方を聞きました。
自分が得意な技術で世の中の役に立ちたい。その想いが技術者としての原点
――まずは、これまでのキャリアを簡単に教えてください。
――パナソニックで担当されていた仕事について教えてください。
在籍中は、主に 3D センシングの研究開発に携わっていました。私はもともと計算機が大好きで、FPGA※という特殊なプログラミングができるデバイスを使って、一般的なパソコンではできないような計算の研究をしていました。
とくに印象に残っているのは、ダンサーにプロジェクションマッピングを投影したデモンストレーションです。当時、プロジェクションマッピングが流行していたこともあり、高速度カメラと私の計算機を組み合わせれば、動くものに対してもずれることなく光を投影できると考えたのです。当時のメディアエンターテインメント事業部と一緒に巨大なプロジェクターを開発し、アメリカの展示会にも出展しました。
クリエイターの方たちと一緒に朝から晩までコンテンツ制作に取り組んだことは、とても楽しい思い出です。
※Field Programmable Gate Array。当初、実際に使用するフィールド(現場)で論理回路を構成するプログラムを変更できる為この名のついた集積回路(IC)で、現在はGPUに代わるAIプロセッサとしても活用が広がっている。
――渕上さんは、もともとどのようなキャリアプランを描いていたのでしょうか。
キャリアプランとは少し違うかもしれませんが、子どもの頃から計算機やマイコンが大好きで、自分ではんだ付けをしてコンピューターを作ったり、基板を作ったりしていました。学生時代は、早くエンジニアになりたいと思っていましたね。
その中で、パナソニックの経営基本方針にもある松下 幸之助さんの「世界文化の進展に寄与せんことを期す」という考え方が私の想いとフィットしたのです。
技術を進化させて誰もやっていないものを作り、世の中を進歩させたい。マイナーなことでもニッチなことでもいいから、とにかく新しいことに挑戦したい。その想いをかなえ続けるために勉強をして、どのような仕事をすればいいのかを考えながら過ごしてきました。
また子どもの頃に読んだアインシュタインやマリ・キュリーなどの伝記にも影響を受けたのかもしれません。すごい人に憧れて、私も自分が得意な技術で世の中の役に立ちたいという想いがずっとあります。
渕上さん(左)とインタビュアーのパナソニック コネクト 川口さん(右)
社外のコミュニティや副業でできたつながり。技術者は外へのアンテナも必要
――パナソニック コネクトに在籍中、キャリアについて考え始めたきっかけはありますか?
中途入社ということもあり、自分のキャリアについては常に考えていましたね。在籍期間が20年を超えると、会社と自分が合う時もあれば、そうでない時もある。そんな中で「パナソニックの外に出ても自分は通用するのか」ということはずっと問い続けていました。
ホールディングス化してパナソニック コネクトが設立されて以降、ジョブ型雇用への移行など会社が変わっていく中で、自分を試すなら今がチャンスだと感じて、外の世界に飛び出しました。
――「他でも通用するのか?」ということは、誰しも考えたことがあると思います。渕上さんは、どのような悩みや不安を抱いていたのでしょうか。
一番不安だったのは、「時間がとれなくなっていく」「やりたいことがやりづらくなっていく」ということでした。会社という大きな組織にいれば、いろいろなことに挑戦できます。一方で、事業として芽が出なければ、せっかくの研究や技術も世に出ないまま終わってしまう。技術者や研究者のやりたい方向性とビジネスの方向性が一致するかどうかは、タイミングや出会いの要素も大事だと感じています。
――外部の方たちへの情報発信など、インプットやアウトプットはいつ頃から始めていたのでしょうか。
社会人になる前からです。インターネットが普及する頃には、自分で作ったオペレーティングシステムのソースコードを公開していましたし、社会人になって以降も、会社としてAIに力を入れ始める前に自分で考えたAIを発表したこともあります。そういった活動でできたいろいろなつながりに、今でも助けられています。
会社の中では芯の通った技術の蓄積ができますが、新しい技術は外の世界の方が早いこともあります。そこにアンテナを張っておくことも、技術者には大切ですよね。
自然と身についたビジネススキルが、いざという時の助けになる
――現在のお仕事について教えてください。
フリーランスとして活動していますが、今はコンサルティング事業を主軸に展開しているフューチャー株式会社と行っているAIアクセラレーター※の開発がメインの仕事です。
フューチャーさんは、AI技術だけではなく、自分たちでハードウェアまで作ろうという、とても意欲的な取り組みをされています。しかも、人間の脳を模したスパイキングニューラルネットワークや、メモリ内で計算を行う技術など、まだ開拓されていない領域のアクセラレーターを作ろうとしている。そこに、私の持っている計算技術を活かしていただけるので、本当に楽しい仕事をさせてもらっています。
ハードウェアとソフトウェアの掛け合わせという点では、パナソニック コネクトと似ています。ただ、在籍時は会社もそこに苦戦していましたし、私自身もとても苦労したんです。
先ほどお話した、やりたいこととビジネスのマッチングにつながりますが、私の好きな計算技術と製造技術というのは、少し遠いんですね。そこに苦しんだ経験があるので、計算技術と相性の良い今の仕事で適性を発揮できていると感じています。
※AIの計算処理を高速化するために設計された専用のハードウェア
――パナソニック コネクト時代を振り返って、「よかったな」と感じていることはありますか?
最先端の研究に力を入れていくという方向に舵を切った時は楽しかったですね。コロナ禍で大変な時期だったのですが、IT化が進んだことで物理的に離れていても社内のコミュニケーションが活発になって、新たなつながりが生まれました。
他にも、外部で経験を積まれた方が経営層に入ったことで、仕事のフローも大きく変わっていく過程は、なかなか得難い経験だったと思います。「製造業がIT業に変わるとは、こういうことか」と知りました。
10年後を見据え、オープンな姿勢で自分が活躍できる場を広げておく
――今後は、どのようなキャリアを描いていますか?
技術者として自分を育てていきながら、技術を若い世代に渡していきたいと考えています。開拓することと後に残すことの両方をやっていきたいですね。
――最後に、パナソニック コネクトで働く若手社員にアドバイスをお願いします。
私たちが若い頃と比べて、今は「AIに仕事が取って代わられたり、教育の機会が奪われたりするのではないか」など、不安が多いと思います。でも、10年後の自分を作るのは自分自身です。10年後になりたい姿を実現するために、今何をすべきかを常に考えるといいのではないでしょうか。
そのためには、自分のスキルを棚卸して今の仕事がマッチしているのかを確認したり、社外の人と触れ合う時間を作ったりするといいと思います。
たとえば、副業もおすすめです。ただお金を稼ぐということではなく、社外の人たちと協力して何かを作ったり、情報発信したり、自分で判断しながら自分の活躍できる場を広げてほしいですね。
――渕上さん、ありがとうございました。目の前の仕事に全力で取り組みつつ、スキルアップすることでキャリアを広げていけることや、社外の方とのつながりの大切に気づかせていただきました。それでは、また次回お会いしましょう。
※記載内容は2025年7月時点のものです
ソフトウェアの会社に1年ほど勤めた後、2000年9月にパナソニック(当時は松下電器産業)に入社し、携帯電話の半導体を開発する部門に配属されました。その後、パナソニック コネクトR&D 部門で3Dセンシングなどの研究開発を行い、自分の夢を追うために2024年3月に退職。少しの間ベンチャー企業に勤めて、現在はフリーランスで仕事をしています。