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【イベントレポート】
伊達洋駆さんが語る、学び合い・一次情報・越境体験の価値

【イベントレポート】伊達洋駆さんが語る、学び合い・一次情報・越境体験の価値

会社の境界線を越え、誰もが「学び合い、つながる」ことができるオープンなカルチャーづくりをめざす「Connect Talent Community Hub」。2026年3月19日には、多くの組織づくりを支援されている株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役であり『越境学習⼊⾨ 組織を強くする「冒険⼈材」の育て⽅』や『組織内の“見えない問題”を言語化する 人事・HRフレームワーク大全』などの著書でも知られる伊達 洋駆さんをお招きし、「他者との関わりがもたらす深い学習:コンフォートゾーンの先にある自己変容」と題し、越境について理論と実践の両方から語っていただきました。コミュニティメンバーや、現役CONNECTer(パナソニックコネクト社員)など、さまざまな立場の方が参加したイベント当日の様子をお届けします。

リアルとネットをコネクトしながら、越境の理論と実践を語り合う

ゲスト

伊達 洋駆さん
伊達 洋駆さん

株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役
神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。近著に『組織内の“見えない問題”を言語化する 人事・HRフレームワーク大全』(すばる舎)、『世界の研究者はマネジメントをどう分析しているのか』(労務行政)、『越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方』(共著;日本能率協会マネジメントセンター)などがある。2022年に「日本の人事部 HRアワード2022」書籍部門 最優秀賞を受賞。東京大学大学院情報学環 客員研究員を兼務。

他者との「学び合い」が、一人ではたどり着けない高度な思考を可能にする

伊達 洋駆さんの写真

――伊達さん、本日はよろしくお願いいたします。組織を出て学ぶ「越境」が今回のテーマです。越境による学び合いの重要性について、教えていただけますか?

伊達

今までになく、学びの重要性が叫ばれています。成功体験に固執せず、自分の価値観や思考の癖に気づいて、物事の見方を変えていく「深い学び」が求められています。

深い学びを得るためにおすすめできるのが「他者との学び合い」です。人間は、理解しやすい情報を無意識に選り好みし、「自分は正しかった」と自己肯定をしようとします。前提を疑うことや、新しい視点を得ることを独学のみで行うのは限界があります。だから、他者から刺激を受けながら学ぶプロセスが必要なのです。

関わるなら「異質な他者」が望ましいです。バックボーンが違う他者とのコミュニケーションが、一人ではたどり着けない高いレベルでの思考を可能にします。

「一次情報」は、泥臭い問題の解決や自分のズレの発見に役立つ

伊達 洋駆さんの写真

――異質な他者と学び合うからこそ、学びが高いレベルになるわけですね。

伊達

学び合いで得られる情報は、その質が独学とは違います。当事者だけが持つ、加工されていない経験値が含まれる「一次情報」を得られるのです。

中でも、排除されてしまいがちな情報まで、学び合いでなら共有し合える可能性があります。これは例えば、絶妙な距離感やニュアンス、想定外のトラブルでの瞬時の判断基準など、マニュアルでは伝えられない「暗黙知」のことで、現実の泥臭い問題の対処に役立ちます。

異なる組織の生々しい話を聞き、さまざまな方法論を知ると「自分の考えは少し違う」「自分の常識は狭かった」と気づける場合もあるでしょう。

多様な人が学び合う場には、さまざまな立場からの「複数の真実」があります。この「多声性(ポリフォニー)」が、学びの質を上げるのです。

コンフォートゾーンからの越境が、学び・変容・成長につながる

伊達 洋駆さんの写真

――今回のテーマである「越境」には、どのような効果があるのでしょうか?

伊達

長く所属する会社や部署など、居心地の良い場所「コンフォートゾーン」では、学ぶチャンスが限られます。外部からの新しい情報や異質な価値観が入りにくいからです。だから、コンフォートゾーンを飛び出し、不慣れな環境(アウェイ)に身を置いて、また戻るという「越境学習」によって学びの停滞を防ぐ必要があります。

越境をすると、自分の常識が通用しないストレスから「混乱するジレンマ」(無力感・葛藤)が生じがちです。このジレンマが、深く学ぶためのエネルギーになります。すぐに解を出そうとせず、いろいろと考えることが、自分を根本から変容させる学びにつながります。「常識が問われる瞬間」=「成長のチャンス」として面白がりましょう。

越境体験者が登壇。アウェイでの経験を、伊達さんと一緒に深掘り

伊達 洋駆さんの写真

パナソニック コネクトの仲間の中にも、越境を体験したメンバーがいます。経験を語っていただくために、越境体験者の「原田千裕さん」をお呼びしました。ここからは、原田さんのアウェイでの経験について、伊達さんと一緒に深掘りしていきます。

越境体験者

原田千裕さん
原田千裕

2016年入社。流通業界向け営業(外食・小売)を担当。2022年の「新世代エイジョカレッジ」・2025年の「女性のための越境研修:キャリアを考える」という研修二つでの越境経験を持つ。女性営業職コミュニティ「P!COme true」も主催。

越境によって、自社の良さが見えた

原田千裕さんの写真

――原田さんが外に出て触れた一次情報にはどのようなものがありましたか?

原田

越境研修では、他社の年代や立場が近い参加者と共に他参加企業の女性役員の方と会話させていただく機会があったのですが、「確かに自分も気になっていたことかも」や「この人はこう考えているんだ」など、他の人の質問からも気づきがありました。普段何気なく使っていた言葉が、他社の人からすると当たり前ではないという点も発見でした。

伊達

越境すると戻ってこないのではと不安がる経営者もいますが、越境体験者の中では、自社のいいところが見えてきたという人もいます。原田さんはいかがでしたか?

原田

ご指摘のとおり、自社の環境の良さに気づくきっかけになりました。女性の場合、子育てや保育園の送迎を気にする声もある中で、自社には様々な働き方を支援する制度やそれを積極的に活用していこうという風土があるなと感じました。環境改善に尽力してくださった先輩の苦労も目に浮かびます。

時間が得られたからこそ、自分のキャリアを考え直せた

原田さん、伊達さんの写真

――越境研修を通じて得られたものはどのようなものですか?

原田

「自分はどうしたいんだ・どうなるんだ」と考える時間が取れたのは、ホームを離れたからだろうなと思います。長期的なキャリアについて考え直せたのは間違いないです。

伊達

人はホームに適応しています。しかし適応しすぎると、会社と自分の区別ができなくなってくる。アウェイに出れば、会社と自分を切り離して考える時間が取れます(=脱社会化)。脱社会化によって、キャリアの考え直しや学び合いの機会が得られたわけですね。

キャリアの中でさまざまなライフイベントが起きますが、二次情報で得ていた話と、当事者から聞く実態に違いはありましたか?

原田

二次情報からのイメージと、自分が体験してみるのとではまったく違うものでした。正解がないからこそ、自身の状況が変化していく中で、情報を取り続けるのがポイントかなと思います。問題に対応するパターンをいくつか持っておき、状況によって選択肢を変えるようにすれば、気持ちにも余裕ができると感じました。

伊達

女性営業職のコミュニティを主催されているとおっしゃっていましたが、コミュニティづくりは簡単ではありません。どのような問題意識・タイミング・経緯だったのかを教えてほしいです。

原田

コミュニティを立ち上げたのは、2022年の「新世代エイジョカレッジ」が終わってすぐ、モチベーションが高い時期でした。日常に戻って業務に頭がいく前です。研修でせっかくできたつながりを継続し、日常以外の時間や場を持てないかと思っていました。

あとは、営業の仕事が好きなのに、結婚・出産・育児を前にして「どのように働いていけばいいんだ…」とモヤモヤしながら私は20代後半を過ごしていました。女性営業の約9割が所属を離れるとのデータもありますよね。
だからこそ、コミュニティを立ち上げて女性営業の横の繋がりを広げたい、モヤモヤを一緒に解決していきたいという思いもありました。

現状、トライアンドエラーをしながら、少しずつ認知を集めていっているところです。越境も、コミュニティづくりも、自分の興味のある身近なテーマだったからこそ始められたと思っています。周りに賛同してもらえる環境も、大きかったです。

AIとも対話はできるが、深い話や場づくりは難しい

原田さん、伊達さんの写真

――Q&Aツールを使って参加者から質問を受け付けていました。伊達さんに回答いただきたいと思います。

質問(1):伊達さんは一次情報をどのように得ていますか?越境学習の機会をどのように作っていますか?

伊達

イベントに登壇する・知らない人と話をすることが、貴重な機会になっています。あとは、仕事でも本来の目的と関係ないことをあえてやってみるような工夫をしています。

質問(2):対話の重要性が語られていましたが、生成AIは対話の相手として成り立つのでしょうか?

伊達

成り立ちます。やってみると、相手が人間か・AIか気づかない人もいるのではないでしょうか。ただ、人間のように共感してくれるわけではないので、自己開示のレベルが下がったり、深い話がしにくかったりします。 あと、人間の生活においては「場の力」が働いているケースがあります。「この場だから」と、深まる話があるわけです。AIには場づくりが難しい点を押さえておくのが重要だと思います。

質問(3):伊達さんの越境体験を聞いてみたいです。

伊達

アカデミズムからマーケットに来たのが、一生忘れないと思うほどすばらしい越境体験でした。失敗の連続でしたが、自分で方法を発明したり、アカデミズムに還元できたりした部分があります。

参加者の声&懇親会

懇親会の写真

――講演後は、会場に集まったメンバーで懇親会を開催しました。参加した方から、次のような感想が寄せられました。

参加者A:越境した際に感じるモヤモヤや違和感はすぐに解決しないほうが良いという伊達さんの言葉が、これまでの経験と結びついて心に響きました。

参加者B:越境=研修のイメージだったのですが、例えばマンション管理組合への参加というのも、日常とは違う環境に飛び込むという意味では越境活動だと聞いて「なるほどな」と思いました。

参加者C:「越境学習」というワード自体知らずに今回参加しました。仕事でいろいろな業界の方と会う中で、さまざまな価値観と触れる機会があるという指摘に共感しました。一方で、今回挙がっていたような視点がなかったというのが気づきです。「外に踏み出していこう」という新しい価値観を知れたことが一番の学びになりました。

懇親会の写真

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