アイスランド「女性の休日」に学ぶ、日本企業のジェンダー平等実現への具体策
1975年、アイスランドで女性たちが仕事や家事を一斉に休んだ「女性の休日」。一般社団法人あすにはは、このムーブメントを描いた同名ドキュメンタリー映画にちなみ、2026年3月6日〜12日を「『女性の休日』WEEK」と位置づけました。
本プロジェクトは、日本全国の女性をエンパワーメントすることが目的です。会期初日には、昭和女子大学客員教授でジャーナリストの白河桃子氏による企画とモデレーションで、トークセッション「映画『女性の休日』から考える働き方未来会議」を開催。アクサ生命保険株式会社の安渕聖司代表取締役社長兼CEO(役職は登壇当時2026年3月時点のもの)、NPO法人ファザーリング・ジャパン の川島高之副代表理事、株式会社ワーク・ライフバランスの小室淑恵代表取締役社長、MPower Partners Fundの関美和創業パートナー、パナソニック コネクトから取締役 執行役員 シニア・ヴァイス・プレジデント CMO兼DEI担当役員の山口有希子が登壇し、企業のジェンダー平等や家庭内ワークシェアリングを実現するための具体策などを語り合いました。
AI記事要約 by ConnectAI
※ConnectAIは、パナソニック コネクトが社内で活用している生成AIサービスです。
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企業変革の成功には「制度×トップの本気」が不可欠
パナソニック コネクトは女性管理職比率30%のKPI設定により、8年で女性管理職数を4倍に増加。小室淑恵氏が事例として挙げたオンワードホールディングスは残業65%削減で賃金16%上昇を実現。成功企業に共通するのは、明確な数値目標とハラスメント撲滅への経営トップの強いコミットメント、そして外部知見を取り入れた意識改革です。 -
データが証明する「女性リーダー」への投資価値
日本のスタートアップ資金調達7,000億円のうち、女性起業家への投資はわずか2%。しかし調達額あたりのIPO時価総額は男性創業企業の1.5倍という実績も。女性創業者は「見過ごされてきた有望な投資対象」であり、ジェンダー平等推進は経営上の合理的判断でもあることが記事では説明されています。 -
理念だけでなく「実益」で語ることが変革の鍵
社会的大義だけでは組織は動かない──登壇者が共通して指摘したのは、ジェンダー平等を「収益性向上」「採用競争力強化」など経営メリットに翻訳する重要性。他社成功事例の積極的共有、社内インフォーマルグループでの仲間づくりなど、具体的アクションが求められます。
企業カルチャーを変えるカギは、制度設計とトップのコミットメント
1975年10月24日、アイスランド女性の90%が仕事や家事を一斉に休み、男女の賃金格差や家事労働の偏りの是正を求めるストライキが決行されました。女性の存在意義を可視化したこの運動は「女性の休日」と呼ばれ、現在ジェンダーギャップ指数で16年連続世界1位(2025年時点)を維持する同国にとって大きな転換点となりました。
「『女性の休日』WEEK」初日のイベントでは、この運動の軌跡をたどったドキュメンタリー映画を上映。参加者たちとジェンダー平等への理解を深めつつ、その後のトークセッションでは、日本でジェンダー平等を前進させるためのアイデアや具体策などが提示されました。
「本作の鑑賞は2度目ですが、アイスランド女性たちが連帯して課題を解決する姿に、改めて感動しました。現在、日本のジェンダーギャップ指数は118位。企業のカルチャー改革を推進する立場として『もっとできることがあるはず』と襟を正されました」
パナソニック コネクトで経営戦略としてDEI推進をけん引してきた山口は、こう述べました。
企業のカルチャー改革の実現には、「KPI設定と、その達成のためのPDCAサイクル構築が不可欠」と山口。パナソニックコネクトでは「2035年までに女性管理職比率30%実現」というKPIを2017年に設定し、現在の女性管理職数は当時と比較して約4倍に増加したといいます。
一方で、企業内に限らず日本社会全体のカルチャーに起因する構造的な問題である「ハラスメント」を撲滅するという強い意志を示しました。
「当社ではハラスメントに対し、非常に厳格な処罰規定を設けています。撲滅のために必要なのは、経営陣のパッションです。トップは、本気で取り組む意思を示すことはもちろん、結果が出るまでコミットし続けなければいけません」(山口)
アクサ生命保険株式会社 代表取締役社長兼CEO(役職は登壇時点のもの)の安渕聖司氏も、ハラスメント撲滅における、トップのコミットメントの重要性に同意します。
「ハラスメントの基準は年々上がっています。ただ、これは単にルールが厳格化したのではなく、かつて潜在化していた問題が可視化された結果です。経営層やマネジメント層にも、社会の変化に即した認識のアップデートを求めています」(安渕氏)
また、安渕氏は、企業が組織内の評価のみに終始することで、自社を過大評価してしまうリスクを指摘。「インクルージョン&ダイバーシティの知見をもつ著名人らを招き、外から見た自社の姿を学ぶ機会を設けることが、経営層の意識のアップデートにつながる」と、外部の知見を取り入れる必要性を語りました。
データが示す、女性創業者の「多さ」
では、企業カルチャーの変化は、実際の現場や経営にどのような実益をもたらすのでしょうか。株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長の小室淑恵氏は、国内アパレル企業であるオンワードホールディングスの事例を挙げます。
同社では2018年からの働き方改革により、残業時間を65%削減。これにより「時間あたりの生産性」を重視する評価軸が浸透し、「管理職=多忙」というネガティブなイメージが払拭されたことで、女性役員数の増加につながりました。さらに近年では、男性の育児休業の平均取得期間が4カ月に到達。それによって削減された残業代を給与へ還元し、賃金が16%も上昇するという成果が出ています。
こうした実績を背景に、小室氏は日本の働き方改革の課題をこう指摘します。
「海外では、夫婦双方の労働時間を抑えることで、育児のリソースをまかなう社会設計が進められてきました。一方、日本では延長保育を重ねながら長時間労働を強いる構造が続いています。その結果、育児と仕事を両立したい妻はもちろん、夫も疲弊するという状況が起きているのです」(小室氏)
ワークライフバランスの議論を受け、NPO法人ファザーリング・ジャパン 副代表理事 川島高之氏は、企業がめざすべき職場像を「一人ひとりが仕事に満足感を持ち、同時に私生活の時間もしっかり確保できる環境」と定義。そして、川島氏が提唱し、現在は行政の施策にも採用されているマネジメント概念「イクボス」を引き合いに、その本質を次のように語りました。
「イクボスとは、経営者や管理職のあり方を3つの定義と10カ条に整理したものです。3つの定義は、『部下の仕事と私生活の両方を応援すること』『上司自身も仕事一本ではなく自分や家族を大切にすること』『組織の目標達成に強い責任感を持つこと』。ワークライフバランスは、決して『仕事はほどほどでいい』という緩い考え方のものではないのです」(川島氏)
MPower Partners Fund 創業パートナーの関美和氏は、ベンチャーキャピタルやスタートアップ業界の視点からのジェンダー格差を指摘。年間約7,000億円に上るスタートアップ資金調達のうち、女性起業家に投資されるのはわずか2%で、上位100社に限ると、その比率は0.3%まで下がると説明します。
「調達額あたりのIPO時価総額を比較すると、女性創業企業は男性創業企業の1.5倍に達するという結果も出ています。投資家の立場から見れば、これは『見過ごされてきた有望な投資対象』と言えるのです」(関氏)
理念の主張だけではなく、「経営上のメリット」に翻訳を
セッション後半では、トップを筆頭とした社内のコミットメントをいかに引き出すかが議題に上がりました。
山口は「他社で成果を出している経営者の声は、トップに届きやすい。他社事例を積極的に共有することが、変革の有効な手段になる」とコメント。
これを受け川島氏は、経営層への訴求には、「経営上のメリット」への翻訳が重要であると指摘。収益性向上や採用競争力の強化といった、事業成長に直結する実益を提示するアプローチの有効性を説きました。
「社会的な大義や理念で組織が動くのが理想ですが、どうしてもそれだけでは企業を変えることは難しい。だからこそ、実益が明らかな事例を提示し、経営上の納得感を得ることが重要です」(川島氏)
小室氏も、オンワードホールディングス等の成功事例は、経営上のメリットが伝わるよう整理していると言及。山口と同様に、積極的な事例の共有を参加者に促しました。
また、安渕氏がジェンダー平等へのアプローチとして挙げたのは、社内にコミュニティを作り仲間を増やすこと。「誰か1人でも耳を傾けてくれる人がいれば、そこから議論が広がる可能性がある」と、本イベントのメインテーマでもある「連帯」の重要性をアピールしました。
データが示す、女性創業者の「多さ」
トークセッション終了後には、「仕事・家庭の平等を目指すMy宣言」をテーマに、各界のリーダーがコメントを寄せたほか、日本版「女性の休日」を試みる各地の女性グループ約15カ所をオンラインで結ぶ「全国リレートーク」も実施。各地域の参加者が、それぞれの立場から「仕事と家庭の平等」を実現するための目標と想いを、参加者と共有しました。
各登壇者が、アイスランドの「女性の休日」が示した平等のあり方を、日本企業のケースに引き寄せながら、具体策を提示した今回のトークセッション。パナソニック コネクトも、すべての人々が心理的安全性を保ちながら能力を最大限に発揮できる社会の実現をめざして、これからも歩みを進めてまいります。
■作品情報
『女性の休日』
全国順次公開中
監督:パメラ・ホーガン
出演:ヴィグディス・フィンボガドッティル、グズルン・エルレンズドッティル、アウグスタ・ソルケルスドッティル 他
エンドクレジットソング:ビョーク
2024年/アイスランド・アメリカ/アイスランド語・英語/71分/原題:The Day Iceland Stood Still
後援:アイスランド大使館
提供・配給:kinologue
公式サイト:kinologue.com/wdayoff
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X: @wdayoff_1975 Instagram: @shw_wdo Facebook:@shousewives.wdayoff