DEIを職場の「当たり前」にするには? Pride Action30参画企業アンケートに見る、アライの輪を広げる実践

DEIを職場の「当たり前」にするには? Pride Action30参画企業アンケートに見る、アライの輪を広げる実践
文:松本 友也、写真:稲葉 真也

「人権の尊重」を事業活動の大前提かつ競争力の源泉と位置づけ、DEI(多様性・公平性・包摂性)推進に取り組むパナソニック コネクトと、LGBTQ+に関する情報発信や居場所づくりを通して、よりよい社会の実現をめざすプライドハウス東京。LGBTQ+をはじめとするマイノリティの方々にとって働きやすい環境づくりを目的に、両者が共同で立ち上げた企業連合プロジェクトが、「Pride Action30」です。

誰もが日常生活の中で実践できる具体的なLGBTQ+アクションを提示し、社会への発信を促す同プロジェクトは、年々賛同パートナーの輪が広がり、3年目を迎える現在では100を超える企業・団体・学術機関などが参加しています。理念に賛同したパートナー各社は、日々の現場で「Pride Action30」の取り組みをどのように活かしているのでしょうか。今回、パナソニック コネクトとプライドハウス東京は「Pride Action30」有償パートナー企業を対象に、DEI推進に関するアンケートと、各社でのPride Action30やプライドマンスの取組を共有するワークショップを実施。寄せられた声から見えてきたのは、自社のDEI方針を社員の日常の行動へと落とし込む、各社それぞれの工夫でした。

AI記事要約 by ConnectAI

※ConnectAIは、パナソニック コネクトが社内で活用している生成AIサービスです。
  1. DEIを経営課題として捉える企業姿勢
    「Pride Action30」への参加企業は、DEIを単なる社会貢献活動ではなく、多様な人材が安心して力を発揮できる職場づくりを通じた「経営課題」として重視しています。これは、イノベーション創出や企業競争力向上、従業員のエンゲージメント向上に繋がるという認識に基づいています。
     

  2. 日常の動線に沿った学びの機会創出
    各社は、Pride Action30が提供する、カレンダー形式のポスターなどのコンテンツを、エレベーターやオフィス扉、社内ポータルサイト、食堂のスクリーンといった日常的に社員が利用する場所に掲示し、誰もが実践できる具体的な30個のアクションを共有することで、LGBTQ+への理解を促進しています。これにより、無意識の偏見解消や意識向上を図り、社員一人ひとりの主体性を育んでいます。
     

  3. 情報共有から対話と実践へ
    Pride Action30のコンテンツは、単なる情報共有にとどまらず、日々の業務やコミュニケーションに組み込まれ、対話と実践のきっかけとなっています。SNSでの情報発信や、各アクションを日々のオペレーションに反映させることで、DEI推進を一部の担当者だけでなく職場全体で考えるべき課題として共有し、Ally(支援者/理解者)の輪を広げています。

共通するのは、「DEI=経営課題」

DEIを職場の「当たり前」にするには? Pride Action30参画企業アンケートに見る、アライの輪を広げる実践
アンケート後には、パートナー企業と共に、Pride Action30の取り組みの共有や「働きやすい環境づくり」の課題解決のためのワークショップも実施した。

そもそも、パートナー企業各社はどのような経緯で、「Pride Action30」への参加に至ったのでしょうか。アンケートで参加理由をひもとくと、共通するある企業姿勢が浮かび上がりました。それは、多様な人材が安心して力を発揮できる職場づくりを、単なる社会貢献活動としてではなく、企業の「経営課題」として捉えているということです。

たとえば、マニュライフ生命は、「すべての従業員が安心して自分らしく働き、それぞれの力を最大限に発揮できる職場環境づくり」を「重要な経営課題」と位置づけ、一人ひとりを尊重するインクルーシブな企業文化の醸成に取り組んでいるといいます。

「多様な視点を受け入れることは、イノベーションの創出や企業競争力の向上につながるだけでなく、従業員一人ひとりのエンゲージメントを高め、優秀な人材が安心して長く活躍できる環境づくりにもつながると考えています」(マニュライフ生命)

「違いを価値に、世界をつなぐ。」というステートメントを掲げるJTBグループは、従来のDEIに「B(Belonging:心理的安全性)」を加えた「DEIB」を全社で推進。「多様な人財を仲間として尊重し、一人ひとりが自分らしく輝き、活躍できる企業カルチャーの醸成」という、同社がDEIB推進を通じて実現したい姿が、Pride Action30の趣旨と合致することから、2024年度からプロジェクトに賛同していると回答しました。

パートナー企業の業界は多岐にわたり、参加理由も各社で異なります。しかし、一連の回答が示しているのは、LGBTQ+への理解促進や環境づくりを、企業カルチャー醸成や人材活躍など自社全体に関わるミッションとして位置づけているということです。

日常の動線に学びの入り口をつくる

各社の独自性が特に顕著に現れたアンケート項目が、Pride Action30が提供するコンテンツの「使い方」についてです。あるグローバル企業が活用しているのは、毎日1つのアクションを紹介する日めくりカレンダー。同社はこのカレンダーを、社員が日々利用するエレベーターやオフィスの扉などに掲示しているといいます。

DEIを職場の「当たり前」にするには? Pride Action30参画企業アンケートに見る、アライの輪を広げる実践
Pride Action30日めくりカレンダー。プライドマンスである6月の1日〜30日までの毎日に合わせ、「誰もが日常生活や職場で今すぐ実践できる30個の具体的なアクション」が1日1つずつ紹介されている。

「データで共有するだけでなく、日々社員が利用するエレベータ―やオフィスの扉などに掲示することで、社員がLGBTQ+について楽しみながら理解を深められるよう啓発活動を行っています。その積み重ねにより、無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)の解消や、互いを尊重し合える職場環境づくりにつながっています。実際に、社会課題に対する意識の向上や、『まずは行動してみること』の重要性に気付くなど、社員一人ひとりの主体性が育まれていると感じます」

あおぞら銀行が実施しているのは、複数のメディアを組み合わせたアプローチ。Pride Action30提供の画像データを本社食堂のスクリーンに投影するほか、印刷したポスターを各フロアに掲示したり、社内ポータルサイトでもPride Action30のアクションを継続的に紹介したりしています。

JTBグループでは、情報発信とその後のアクションをセットにする工夫を取り入れています。

「2025年度の『Pride Action30』では、社内イントラ上にて概要を発信すると同時に、『Pride Action30』より提供いただいたコンテンツを掲載し、自社のAlly(支援者/理解者)ネットワークへの案内も行うことで、新たなAllyメンバーの登録増加につながりました」

食堂やフロア、社内ポータルなど、社員の日常の動線に「関心の入り口」をつくる──。このような身近なファーストステップの創出こそ、「Pride Action30」の大きな目的の1つです。

DEIを職場の「当たり前」にするには? Pride Action30参画企業アンケートに見る、アライの輪を広げる実践
パナソニック コネクトのオフィス風景

情報共有だけではなく、対話と実践につなげる

DEIを職場の「当たり前」にするには? Pride Action30参画企業アンケートに見る、アライの輪を広げる実践

Pride Action30提供コンテンツや情報の発信を確かな足がかりとして、パートナー各社は自社の業務や組織特性に合わせた、Pride Action30のコンテンツ施策も展開しています。

HOTEL GROOVE SHINJUKU は、各アクションを日々のオペレーションや接客にも反映。社内で検討・実施したアクションは、LinkedInやInstagramなどのSNSを通じて社外にも発信するなど、ホテルという空間・施設だからこそ実現できるDEI推進を、自社ならではの視点で伝えています。

「ホテル業界の中でも、継続的にDEI推進に取り組むホテルとして一定の実績を積み重ねることができていると感じています。実際に、LGBTQ+当事者のお客さまからの支持や共感のお声も増えており、昨年は2025年World Luxury Awards “Best LGBTQ friendly Hotel”を受賞することができました」( HOTEL GROOVE SHINJUKU )

海外発のSNSプラットフォームを展開するある企業では、国籍やバックグラウンドの異なるメンバー同士でPride Action30のアクションを共有。それぞれの視点から対話するきっかけとして活用するほか、社外に向けても、メンバーが「#プライドアクションやってみた」と投稿を発信し、プラットフォーム企業としての姿勢を明確に示しています。

これらの事例に共通するのは、Pride Action30を日々の業務やコミュニケーションに組み込んでいる点です。小さなアクションを普段の仕事と結びつけることで、DEI推進を一部の担当者だけの施策に閉じず、職場全体で考えるべき課題として共有しやすくなるのです。

1人の100歩より、100人の一歩へ

DEIを職場の「当たり前」にするには? Pride Action30参画企業アンケートに見る、アライの輪を広げる実践

アンケートでは、制度や方針を整えた先にある「現場への浸透」をいかに進めるかという、各社それぞれのリアルな課題感も共有されました。たとえば、複数部署が関わる施策で合意形成に時間を要することや、カミングアウトをともなうために当事者が代表して声を出しづらいといった、DEI推進特有の課題のほか、グローバル企業では、本社のDEI方針を日本拠点へ「自分ごと」として翻訳して、浸透させることが難しいという声も寄せられました。

マニュライフ生命は、「DEIのさらなる推進に向けては、制度の整備にとどまらず、その趣旨や重要性まで職場に浸透させ、一人ひとりの行動につなげていくことが重要と認識しています」と回答。同社は制度改革と併せて、個別の無意識バイアスの低減やマネジメント層の意識改革にも取り組んでいるといいます。

JTBグループでは、DEIB推進に5つの活動軸(組織開発、ワークスタイル変革、キャリア開発支援、障害者雇用と活躍推進、ジェンダー平等)を策定し、各施策への取り組みを強化しています。

「全社的にDEIBは浸透しつつあり社員意識調査におけるエンゲージメント指標のポイントも上昇してきておりますが、関心が薄い層へのアプローチ強化にも取り組んでいます」(JTBグループ)

DEIを職場の「当たり前」にするには? Pride Action30参画企業アンケートに見る、アライの輪を広げる実践
プライドハウス東京代表理事 五十嵐ゆり氏

プライドハウス東京代表理事の五十嵐ゆり氏は、「1人の100歩より、100人の一歩」という言葉を大切にしているといいます(参考:プライド月間における「Pride Action30」プロジェクト、賛同パートナーが100社を突破)。ポスターを掲示する、社内ポータルでアクションを紹介する、自社の業務に置き換えて考える――。その一つひとつは小さく見えても、間違いなく職場の中に当事者の方への理解の入り口をつくる大切な一歩になります。

アライに、特別な知識や資格は必要ありません。日々の言葉遣いを見直したり、LGBTQ+について検索して知識を深めるといった些細な心がけが、アライの輪の拡大につながります。プライド月間である6月をきっかけに、30個のアクションからまずは1つをやってみる。それこそが、誰もが自分らしく働き、生きられる社会の実現に向けた、確かな第一歩となります。

プライドハウス東京代表理事 五十嵐ゆり氏 コメント

DEIを職場の「当たり前」にするには? Pride Action30参画企業アンケートに見る、アライの輪を広げる実践

先日のミーティングで各社のみなさんと話す中で印象的だったのは、成功事例だけでなく「まだここが難しい」といったリアルな悩みまで率直に分かち合ってくださったことです。

立派な制度をつくって終わり、ではなく、それをどう現場の一人ひとりに浸透させていくか——その試行錯誤をオープンに語り合えること自体が、DEIを一部の担当者の仕事からみんなの文化へと育てていく土壌になると感じています。

ポスターにふと目を留める、いつもの言葉づかいを少しだけ見直してみる。一つひとつは小さくても、その積み重ねが職場の空気を確実に変えていきます。賛同パートナーが100社を超えた今、この輪を一過性のブームで終わらせず「当たり前」として根づかせていけるよう、これからも企業のみなさんとご一緒に歩んでいきたいと思います。

パナソニック コネクトグループ シニア・ヴァイス・プレジデント CMO、DEI推進担当 山口 有希子 コメント

DEIを職場の「当たり前」にするには? Pride Action30参画企業アンケートに見る、アライの輪を広げる実践

多様性は企業の成長に不可欠であり、多様な人々が活躍できる環境を作るのは企業の責任であると考えています。

LGBTQ+への理解と支援を、企業として社会に発信し続けることが、LGBTQ+当事者の方を含め、あらゆる人々にとって働きやすい環境づくりを前進させ、より良い社会へと繋がると信じて、パナソニック コネクトでは2024年よりこの活動に取り組んで参りました。

趣旨にご賛同いただき、ともに社会の前進に取り組んでくださる企業・団体様が100社を超えたことで、この活動が着実に日本社会に広がっていることを実感しております。ご協力いただいたすべての皆様に、心より感謝申し上げます。

「gemba」読者アンケート​

いただいた回答を今後の運営に活用させていただきます。なお本フォームにご氏名やメールアドレスなどの個人情報は記入しないでください。​

回答​はこちらから