【From the Inside】子どもの個性に向き合い、自立を促すために親はどうあるべきなのか ―不登校・子育て支援セミナー参加レポート―
皆さん、こんにちは! パナソニック コネクト、GEMBA編集部です。
パナソニック コネクトの取り組みを内側からレポートする【From the Inside】シリーズ。今回は、6月初旬にパナソニック コネクト内部で開催された、「不登校・子育て支援セミナー」の様子をお届けします。
「子どもの個性に向き合い、自立を促すために親はどうあるべきなのか」をテーマに開催された当セミナー。子どもたちの居場所づくりプロジェクトを行う、一般社団法人 ビリーバーズ 代表理事の熊野英一さんと、ホームスクーリングで輝くみらいタウン プロジェクト 代表の小沼陽子さんの二人の専門家をゲストにお迎えし、パナソニック コネクト DEI推進担当役員の山口有希子さんとトークセッションを行いました。
セミナーの動画はこちらから:https://www.youtube.com/watch?v=krfOUnQxyEE
当セミナーは社内向けに実施されましたが、そこで共有された考え方や生き方は、上司や同僚、家族など、様々な人間関係に悩む人の心にもきっと深く刺さるはず。周囲との人間関係だけでなく、自分自身を変えるきっかけになるかもしれないヒントの数々を、皆様にもご紹介します。
コロナ禍で生活環境が大きく変わったことも影響して、不登校生徒の人口は過去最多の約30万人となり(2022年度文部科学省調査)、本当は行きたくないのに無理に登校している「隠れ不登校」の子どもも含めると、かなり多くの子どもと親が登校の困難に直面している現在の日本。
パナソニック コネクトが、前身のパナソニック株式会社 コネクティッドソリューションズ社の時代から事業戦略の柱の1つとして取り組んでいるDEIの浸透を推し進める山口さんは、ご自身もお子さんの不登校を経験し、その時の悩みや経験を基に小沼さんと約7年、不登校の子どもと親を支援する取り組みをしてきたそうです(参考:【遠藤功氏×パナソニック コネクト】一人ひとりが一歩踏み出して実現する日本企業の再生。現場力を活かすカルチャーの耕し方)。
社内でも「実は自分の子どもも不登校で悩んでいる。話を聞いてほしい」という声が山口さんのところに多数届いており、今回のセミナーの開催に至りました。「子どもの問題は親にとってとても重要なことなので、きっと働くうえでも影響が出てきてしまうと思います」と山口さん。
2007年に「家族の幸せ最大化企業」の創造を目指して、株式会社子育て支援を創業した熊野さん。これまで、保育所や児童館、子育て支援センターの受託運営、ベビーシッター・サービスの提供、アドラー心理学に基づく研修やカウンセリング、書籍出版など多岐にわたる活動に取り組んできました。2021年には、一般社団法人ビリーバーズを設立し、学校に行かないという選択をしている子どもたちと保護者の居場所を創る非営利活動を行なっています(参考:子どもたちの居場所づくりプロジェクト「Believers / ビリーバーズ」)。
熊野さんは、VUCAと呼ばれる変化の激しい現代において、昔のように「どんな大学・会社に入れば安泰」といった「正解」を子どもに提示することが難しく、また「自分たちは答えのない世界を生きていかなくてはならない」ことを自覚している子どもたちにとっても、親から「正解」を押しつけられることが苦痛であるという現状を説明しました。
「『子どもに自立を求めるのなら、褒めても叱ってもいけない』というアドラー心理学の教えを知ったとき、子どもを『評価』・『操作』して自分の思い通りにするために褒めたり、叱ったりしていないか、と僕自身ドキッとしました」と熊野さん。
「そうではなく、信頼することが大事。時間がかかるかもしれませんが、それによって子どもは『不完全でも、ありのままの自分で大丈夫なんだ』と気づいて勇気が湧き、チャレンジができるようになるのです」
実践するのはなかなか難しそうに思えてしまいますが、熊野さん曰く、日々繰り返し「共感」をもって接していくことが大切なのだそうです。
「共感とは、相手の関心に関心を持つこと。『お客様の課題やニーズはなんだろう?』と仕事では自然に日々やっていることを、『この子は何が好きなのだろう?』といったように家庭でやってみる、というのを重ねていくとよい学びがあると思います」
そしてそこで大切になるのは、「テストで100点を取ったからあなたはいい子」といった条件付きの「信用」ではなく、根拠も求めず無条件で相手を「信頼」すること。それができれば親子の関係が強くなる、と続けた熊野さんの言葉に、山口さんも大きく頷きました。
「私の子どもが不登校になった時も、『学校に行ってほしい』という期待値を下げて、『ただ、笑って健康でいてくれれば良い』と思うようになってから、子どもが元気になっていきました」
ホームスクーリングで輝くみらいタウン プロジェクトを通して、家庭を拠点に本人の興味や意欲を大切にしながら学ぶホームスクーリングの浸透、環境整備に取り組む小沼さん。
「自分自身は親の理想通りのレールに乗った安定した人生を送ってきたので、うちの子はそういうタイプではないと勝手に思ってしまっていました。まさかうちの子が?という感じ」と、自身のお子さんの不登校の経験を振り返りました。
最初は何とか学校に通わせようとしましたが、登校を拒否する中でお子さんが事故にあいかけた経験によって、「ここまでして学校に通わせるのは本当に子どものため?」と考え直すようになったとのことです。
「家族や親せきにも猛反対され孤独も感じましたが、『自分だけは子どもの味方でいる』と覚悟を決めました。やりたいことをやらせてあげることで、子どもの表情が明らかに柔らかくなっていったんです。息子が自分の人生を生きている、と感じられるようになりました」
そして、「私って本当に今の仕事がしたいのかしら?」と自身の生き方をも見つめ直すきっかけになり、同じような子どもたちのために何か力になりたい、と仕事を辞めて今のプロジェクトを始めた小沼さん。
「大事なのは子どもがやりたいこと、学びたいことを自分で選んで活動すること。そのための環境を大人が作ることが大切なんですが、親子だけで作るのは難しい。地域全体で子どもを育てるために、子どもたちの現状を伝え、理解してもらう活動を続け、優しい地域を作っていこうとしています」
「親は自分の課題を子どもに押しつけてしまいがちなんですよね」と熊野さん。
「良い学校に行って、良い人生を送ってほしい、という気持ちはよくわかります。愛しているからこそ親が子どもの心配をしてしまうのはとても自然なことで、全く悪いことではないですが、それは親の課題。悩むのは良いですが、その解決を子どもに押しつけてしまうべきではないですよね。親は、地域やコミュニティで仲間をつくるなど、自分の心配を解決するための方法を他に見つけられるはずです」
だから、「しんぱい(心配)」の「ぱ」を「ら」に一文字だけ変えて、「しんらい(信頼)」にしましょう。熊野さんのその言葉に、小沼さん、山口さんからは感嘆の声が洩れました。
「共感を持たなきゃいけないのは家庭も仕事も一緒ですよね」と山口さん。パナソニック コネクトのパーパスの実現のために、CONNECTer(社員)一人ひとりが実践していくCore Values(Connect, Empathy, Results, Relentless, Teamwork)でも、共感(Empathy)は大切にすべき行動指針として明確に定められています。
「価値観が多様化している今、家族でも仕事でも『共感』はとても大切ですよね。『共感』を大切にするということは相手を認めるということ。一人ひとりの個性や価値観が尊重されるからこそ、家庭や職場でも、多様な人々が一つのことに向かって協力し合える」と、熊野さんも大きく頷き賛同しました。
「自分のことを認めてくれている、大切にしてくれている、信頼してくれている人に対して、人って自然と協力したくなっちゃうと思うんです。その気持ちを生むためにできることって何だろう?と一人ひとりが考えることで、今から変えられることが見つかっていくのではないかなと思います」
親という立場であっても、子どもという立場であっても、参加した誰もがハッとし、自分に向けられた言葉だと受け止める学びが多かったのではと感じる当セミナー。
最後は、「子どものことで悩むことも多いと思うけれど、自分自身の人生を楽しんでいければ一番良いのかなと思います」という小沼さんのメッセージと、「自分の不完全さを認めることは勇気がいることだけれど、『ちゃんとしなきゃ』の呪いを解いて自分を緩めることが大事です」という熊野さんのメッセージに加え、「子どもは本当に大切な存在だからこそ『きちんとしてほしい』とたくさん期待してしまうけれど、ありのままの子どもの姿を受け入れること、そして自分自身をも認めることで、自分の価値観のアップデートにも繋がるのだと思います」という山口さんの言葉で締めくくられました。
私自身も自然と家族の顔を思い浮かべながら当セミナーに参加しましたが、今回得られた学びは、家族だけではなく、職場や友人など、自分の周りの全ての大切な人々との関係をより良くしてくれるものだと強く感じました。これを機に、親しい関係だからこそ期待してしまっていることや、当たり前のように受け取ってしまっていることがないか、自分自身を見つめ直してみようと思います。
GEMBA編集部はこれからも、働く人々のウェルビーイングを応援するパナソニック コネクトの取組を発信して参ります!