現場力を経営力へとつなげる
ヤマト運輸様の業務プロセス改革

case01_「物流」の現場を、再発明する。
「かなえよう。ヤマトの現場(ヤマト運輸)」篇

ヤマト運輸ベース構造改革プロジェクトマネージャー 宮坂 喜⼀

CONNECTer 宮坂 喜⼀

パナソニック コネクト株式会社
現場ソリューションカンパニー
ヤマト運輸 ベース構造改革プロジェクトマネージャー



パナソニックの「終わりなきカイゼン」

パナソニックは100年以上にわたり、電化製品などのハードウェアを製造し、販売してきました。その歴史は、工場における人の動きの効率性を進化させてきた歴史でもあります。工場設備のレイアウトから、人の動き、各設備が果たす機能を計測して可視化しつつ、そこから課題を抽出。その課題をひとつひとつカイゼンして、また計測、カイゼンにつなげていくというプロセスを100年にもわたって続けてきました。

製造業の世界で確立したこの「終わりなきカイゼン」を、今度は「物流」の世界へ持ち込むことでお役に立ちたい。その思いをこめて、ヤマト運輸様とともに現場のカイゼンを進めています。


宮坂 喜⼀

ヤマト運輸様の課題

現在、物流は大きな変革期を迎えています。労働人口の減少や地域の過疎化が進む一方、お客さまニーズの多様化、進展する産業のEC化など、社会の急速な変化への対応が迫られています。ヤマト運輸様では、ECの浸透などを背景に今後増加していく荷物にしっかりと対応するため、特に荷物が集中するターミナルであるベース店のオペレーション業務の最適化に向け、ベース構造改革プロジェクトが推進されています。この改革を一緒に推進するパートナーとして、私たちがサポートしたカイゼンは大きく2つあります。


ヤマト運輸 ベース

現場カイゼン - ① 標準工数の策定

まず最初に行ったのは「標準工数」というモノサシづくりです。

ひとつの荷物をお客様の元に届けるまでに、ベース店だけでも、荷物の運搬ベルトコンベアへの投入、送り先別に仕分け、積み込みなど、15以上もの工程があります。しかし、これらの工程で行われる作業は現場の方それぞれの経験やノウハウに依存していることが多く、正しい作業の定義が定まっていませんでした。

そこで、私たちがご提案したのが「標準工数の策定」です。

センシング技術など、パナソニックのテクノロジーを導入いただき、それぞれの工程で、どれくらいの秒数がかかっているかを見える化。ひとつの工程を何秒で行うべきか、各作業単位での「標準工数」を定め、業務を遂行する上でのモノサシをつくりました。

このモノサシがあることで、現場の方々は、自分たちの作業が標準通り行えているのかを判断できるようになり、そうしたカイゼンが各工程で進むことで、全体の工数のカイゼンにつながり、人時生産性(1人が1時間に何個の荷物を処理できるかを示すKPI)を向上させることができると考えました。


ヤマト運輸 ベース

また、標準工数を定めることで、適切な人員配置も可能になります。

現場をカイゼンする上で、人の動きだけではなく、配置と荷物量も大きなポイントです。配置している人数に対して、荷物が少なければ、手待ち時間が発生し、荷物1個当たりのコストが過多になります。逆に荷物が多ければ、人が足りず、時間内に作業が終了しない可能性があります。そのため荷物量に対して、適切な人員数で作業をすることが、ヤマト運輸様の品質を保つ上で、非常に重要なのです。

この人員配置は今まで現場の方々によって、過去の実績をもとに計算されていました。今回、荷物1個当たりの標準工数を定めたことで、荷物量に対する最適な人員数を導き出すことが可能になりました。そして、荷物の種類や荷物量など、日々変わる現場の状況に合わせ、動的に作業体制を変更しながら対応できる現場づくりをサポートしました。


ヤマト運輸 ベース仕分け作業
ヤマト運輸 設置カメラ

現場カイゼン - ② 現場状況の見える化

標準工数を策定することで「人時生産性」を向上させ、そこから最適な人員配置を導き出すことで、「荷物1個当たりのコスト」を削減していく。こうした現場カイゼンを加速させていくためには、この2つのKPIを経営と現場が同じ視点で見る仕組みが必要です。

そこで私たちがサポートさせていただいたのが、現場状況の見える化です。

現場のあらゆるプロセスに360度カメラを設置し、それらを現場カイゼンのシステムと連携することで「人時生産性」と「荷物1個当たりのコスト」を見える化。データが生産性の低下を指し示すと、そのデータと連動する動画を表示させ、現場の状況を把握。生産性がなぜ低下したのか、その原因を経営側でも特定でき、解決策を検討できるようになりました。

このように経営と現場が同じ視点でつながることで、現場の活動が経営効果にしっかりと結びつき、現場中心の経営へと舵をきることができるようになります。


ヤマト運輸 ベース
ヤマト運輸 ベース

カイゼンはつづく

私たちがサポートしている現場カイゼンはまだ途上であり、日々進化を続けています。

現在構想しているのは、パナソニックの製造業で培った「設計」のノウハウを取り入れること。物流の作業ラインの設計やネットワーク自体を見直し、デジタル・ITという武器を導入することで、カイゼンに拍車をかけ、作業の付加価値を高めていきたいと考えています。

こうしたカイゼンによって、現場で働く人のやりがい、現場競争力の向上、ひいては日本の物流産業の強化につながると信じています。今後の我々の現場プロセスのカイゼンに、ぜひご期待ください。


ヤマト運輸様 お打ち合わせ
GP改善システム画面

ヤマト運輸 GPシステム画面/カメラ映像

ヤマト運輸様から一言

ベース店の作業に「標準工数」を定めたことで、作業のムリ・ムダや解決すべきポイントを客観的に把握できるようになりました。また、現場メンバーが自らの作業オペレーションの良し悪しをデータやグラフで定量的に確認し、何が課題で、どこをカイゼンするべきかを話し合うことで、日々カイゼンサイクルが回り、着実に精度を高めています。

結果として、「人時生産性」や「荷物1個当たりのコスト」の最適化だけでなく、お客さまへの輸送品質も良くなることで、ベース店で働く社員のやりがいにも繋がると考えています。

今後は、「標準工数」の活用範囲を広げ、全体最適な作業オペーションを設計していくなど、現場と本社がそれぞれのカイゼンを行うことで経営効果を高めていきます。

パナソニック様にも工場という「現場」があり、現場が生み出す価値をいかに高めるかというテーマを共有する良きパートナーとして、これからも一緒にカイゼンを進めていきたいと考えています。


ヤマト運輸様 スタッフ
ヤマト運輸様 スタッフ
ヤマト運輸様 CONNECTer 宮坂 喜⼀