医療現場のDXを支える顔認証付きカードリーダー。
ご利用者・医療機関 双方の利便性と限られた受付スペースの課題に挑んだ、新モデル開発の舞台裏。
Project Stories
公開日:2026年8月24日
厚生労働省様が進める医療DXの一環として、医療機関・薬局での手続きにおける従来の紙やカードの健康保険証が2026年7月末で利用終了となり、8月からマイナンバーカードの健康保険証(マイナ保険証)の利用が基本となった。医療機関・薬局に設置された顔認証付きカードリーダーで受付をすることで、これまで以上に迅速で正確な本人確認と医療保険の資格確認が可能となっている。
パナソニック コネクトは、2021年のマイナ保険証運用のスタート時より、オンライン資格確認のための顔認証付きカードリーダーを提供し、医療機関のDX推進に貢献している。
日々、医療現場でお困りごとをお伺いする中、新モデルの顔認証カードリーダーを開発するプロジェクトが発足。ご利用者様、医療機関様のさらなる利便性向上を目指し、社内から各分野の専門職能が集結した。
そして2026年8月24日、医療機関・薬局様向けの顔認証付きカードリーダーの新モデルを発売。本プロジェクトでの新機能追加や改良の取り組み、その裏側でどんな工夫があったのか、本製品に込めた強いこだわりを開発メンバーで語り合った。
メンバー紹介
永石 裕二
パナソニック コネクト株式会社 現場ソリューションカンパニー センシングSBU プロダクトマネジメント1部2課
機器開発のシステムエンジニアを経て現在は商品企画。
空港向け共用チェックイン端末、医療向け顔認証付きカードリーダーの現行モデル開発、顔認証付きカードリーダーを本人確認端末として展開する顔認証CDKの商品企画などに携わる。本プロジェクトでは、企画、開発、販売、保守までの管理をおこなうプロダクトマネジメントを担当。
高野 大夢
パナソニック コネクト株式会社 現場ソリューションカンパニー 開発センター ハード開発部 コンポーネント開発課
防災無線をはじめとした自営系無線システムの機器開発に従事。高周波回路設計を専門としながら、デジタル回路や電源設計も担当。開発業務だけでなく、量産立ち上げや工程改善まで幅広い業務に携わる。昨年度より、センシング商材の設計担当として、顔認証付きカードリーダー現行モデルの生産継続なども担当。本プロジェクトでは、主にハードウェア設計および開発全体の推進を担当。
大嶋 佑典
パナソニック コネクト株式会社 デザイン&マーケティング本部 デザイン統括部 第1エクスペリエンスデザイン部 GSOLデザイン課
車載機器や民生機器のデザイン開発に従事した後、パナソニック コネクトに入社。要素技術のデザイン開発や堅牢PC「タフブック」のデザインに携わるほか、パナソニック ホールディングスがFUTURE LIFE FACTORYにて未来の暮らしを探求するデザインプロジェクトに参画。その後、物流業界向けのサービスデザインや、プロダクトデザインなど幅広く従事。 本プロジェクトでは、外観のデザインだけでなく、画面、音など、ユーザー体験にかかわる部分のデザインも担当。
山本 健介
パナソニック コネクト株式会社 現場ソリューションカンパニー センシングSBU プロダクトマーケティング部 1課
モバイルPC「レッツノート」「タフブック」及び、PCライフサイクルマネジメントサービスの法人向け営業を経て、現在は生体認証(顔認証)領域のプロダクトマーケティングに従事。顔認証技術を活用した製品の市場開拓や販売戦略の立案に携わる。
本プロジェクトでは、プロダクトマーケティング全般の推進を担当。
医療現場のインフラとなった顔認証付きカードリーダー。
採用実績12.7万台※1の信頼と現場ニーズを受け止め、次なるステージへ。
山本:はじめに、医療機関・薬局向け顔認証付きカードリーダーのベースとなるオンライン資格確認について説明したいと思います。 オンライン資格確認とは、医療機関や薬局において、患者である利用者の方が、カードリーダーを使って顔認証で本人確認をした上でマイナンバーカードの情報を読み取り、利用者の健康保険の加入状況等をオンライン上で直ちに確認できる仕組みです。この仕組みは、いまや医療現場のデジタルトランスフォーメーションの根幹となっています。
導入メリット
医療機関や薬局などの事業者様
- 受付業務の負荷軽減
- 不備等による事後対応の削減
- 利用者情報のシステムでの共有による医療の質の向上
利用者様
- 高額医療費の事前の手続きが不要
- 医療費データの自動連携による、確定申告の手続きの簡略化
- 手続きがスムーズになり、待ち時間が短縮
- 過去のお薬や診療データに基づいたより良い医療を受けることが可能
医療関係者、利用者双方におけるメリットの浸透や、政府の積極的な政策もあり、オンライン資格確認で必須となるマイナンバー保険証の利用率は年々増加し、マイナンバーカード保有者の内、90%を超える高い普及率※2(2026年6月26日時点)となっています。これはマイナ保険証が広く受け入れられ、顔認証付きカードリーダーが医療現場で不可欠なインフラの一部となっていることの証でもあります。
パナソニック コネクトは、2021年のマイナ端末の運用開始にあたり、顔認証付きカードリーダー(現行モデル)を発売しました。皆さんも一度はお使いいただいたことがあるのではないでしょうか。カードを無造作に置くだけで正しい読み取り位置にセットされるユーザビリティ、クリニックなどの限られた受付スペースに設置可能なコンパクトな設計といった特長が評価され、グッドデザイン賞2021を受賞しました。
また、メガネやマスクをしたままでも高速に認証可能という精度の点でもご好評いただき、これまでに全国の医療機関・薬局様に、累計12.7万台※1導入いただいています。
その顔認証付きカードリーダーは、2026年3月末から購入タイミングによって順次、5年間の無償保守期限が満了を迎えていることや、従来型健康保険証が利用可能となる特例措置が2026年7月末で終了していることもあり、現行モデルでの課題や今後のニーズを踏まえ、後継となる顔認証付きカードリーダーの新モデルを発売することになりました。
※1:パナソニック コネクト顔認証付きカードリーダー 出荷済の端末台数(2026年5月19日時点)
※2:デジタル庁webページ参照:マイナンバーカードの普及に関するダッシュボード|デジタル庁 (2026年6月26日時点)
※3:外来におけるオンライン資格確認を導入済みの医療機関・薬局リスト(マイナンバーカードの健康保険証利用に対応)(2026年3月29日時点)より
世界最高水準※4の顔認証技術はもちろん、資格確認端末(PC)とスマホマイナ保険証対応を一台に。多くの機能をコンパクトに収めた新モデル。
永石:では次に、私から顔認証付きカードリーダー新モデルの特長をお話します。
何といっても世界最高水準※4の顔認証技術が強みです。メガネ・マスクをしていても安定して認証し、認証エラーや受付スタッフの手間をかけません。
また、これまで別途必要だった「資格確認端末(PC)」を顔認証付きカードリーダー本体に内蔵する業界初※5の独自設計をするとともに、スマートフォンのマイナンバーカード対応を実現しました。現行モデルでは外付けの汎用カードリーダーが必要でしたが、新モデルではスマートフォンのマイナンバーカード読み取り機能を本体に内蔵しています。
ユニバーサルデザインによる操作性も向上しました。誰もが使いやすく、高齢者の方への見やすさ、わかりやすさを追求した「画面UI」、カードを無造作に置いても自然に正しい位置へ収まる「独自構造のカード置台(特許取得済み)」、そして手元で操作できる「外付けテンキー」をオプションとして用意しました。
さらに、障害発生時に音声やランプで素早くお知らせできる「背面インジケーター」も搭載しました。エラー発生時に医療スタッフの方が迅速に対応でき、利用者をお待たせする時間を削減することができます。
これらの新機能を追加しながら、現行機とほぼ同じコンパクトなサイズに仕上げました。サイズ感は、お客様から好評だったため、開発・デザインの総力を挙げて、この形に収めたものになります。
参考: スマホマイナ保険証対応 顔認証付きカードリーダー - パナソニック コネクト
※4: 2022年11月6日に公開されたNIST FRTE 1:1評価結果において、Mugshot(人種・経年変化を含む正面顔データ。他人受入率10万分の1)で世界1位を獲得。更に、2024年3月26日に公開されたNIST FRTE 1:N評価結果(検索精度)において、Mugshot(経年変化を含む正面顔データ。160万名登録)、Border(顔の向き変化や画質劣化を含む顔データ。160万名登録)の2つの評価カテゴリで世界1位を獲得。
※5:保険証オンライン資格確認用途カードリーダー業界において。(パナソニック コネクト調べ。2026年7月22日時点)
医療機関・薬局の限られた受付スペースの課題に挑む、「コンパクトさの追求」。
山本:永石さんから説明のあった新モデルの特長の中でも、「コンパクトさの追求」と「使いやすさの追求」の2点について、皆で振り返りたいと思います。まずはコンパクトさの観点から。
永石:新モデルの話をする前に少し現行モデル(2021年発売)での検討の話を振り返ると、医療機関の受付台はスペースが限られていることもあり、特にタッチパネルのサイズを重視して開発しました。その結果、7インチモニタの縦配置を採用し、使いやすさと省スペース性を両立させ、次世代機にも引き継がれています。
永石:新モデルの企画にあたって、さまざまな医療機関のバックヤードを見に行かせていただきました。そこで改めて実感したことは、医療機関では多くの機材が置かれ、受付台だけでなくバックヤードもスペースが限られている点と、資格確認端末(PC)は温度や設置環境など、かなり厳しい条件下で使われることが多いという点です。
高野:複数の機器が並んでいる、排気しにくいといった環境は、PCにとっては厳しい条件です。熱がこもり、パフォーマンスが低下することが心配されます。
永石:そこで、資格確認端末のPCをカードリーダー本体に内蔵することで、より安定した運用を実現しつつ、システム全体の設置面積をさらに小さくできると考えました。新モデルではそういったコンセプトで開発しようと決めました。
山本:実際に現行機が使われている現場を見ることで、新モデル開発に繋がる気付きがあったのですね。このコンパクトなカードリーダーにPCを内蔵するのは、設計面での難しさもあったと思いますが、そのあたりについて開発担当の高野さん、デザイン担当の大嶋さんからお話しいただけますか。
高野:資格確認端末(PC)を内蔵すると決まったものの、これと現行機の特長であるコンパクトさを両立させることは、やりがいを感じる一方で、非常に難しい要求でもありました。 現行のカードリーダーに実寸大のPC模型を付けると、カードリーダーの倍近いサイズ感になり、かなり大きくなるという印象を受けます。そこで、いかにして小型化できるかを考えました。
山本:小型化について、具体的にはどういった工夫をしましたか。
高野:まず内蔵部品の小型化により、スペースを作っています。たとえば顔認証やマイナンバーカード読み取り用のカメラなどが対象です。部品選定にあたっては、レッツノート(パナソニック製ノートPC)の開発部隊にも協力してもらいました。部品の小型化によって生まれたスペースに、新機能に必要な部品を詰め込みました。詰め込み方も何通りも検討し、複雑なパズルを組み立てるような検討になりました。
大嶋:それでも当初でてきた検討案は、現行機よりかなり大きくなる見込みでしたよね。
受付に置く製品としては気になるサイズ感だったので、もう一段階小さくできないか、相談しました。
高野:これだと大きすぎる、と大嶋さんから聞いたときは、試作機を発注する直前だったため、正直対応に困りましたが、大嶋さんにも協力してもらいながら、さらなる小型化を設計とデザインで膝を詰めて検討しました。
山本:文字通り、皆さんで意見をぶつけ合うなかで最終的にはどのように進めたのでしょうか。
大嶋:もちろんデザインも一緒になって小型化するアイデアを検討しました。側面の壁を広げて、体積を大きくすることで内部のスペースを確保し内蔵物を収められるように調整しました。その上見た目も損なわないようにしなければならなかったので、模型も作って確認しながら調整していきました。
何度もデザイン、設計間でデータをやりとりして最適な形を探りました。その結果予想以上のコンパクト化ができましたよね。
高野:はい、この検討の結果、現行機から2㎝程度奥行きを延ばすのみで、資格確認端末(PC)を内蔵することを実現しました。
山本:今回、資格確認PC内蔵を実現できた背景には、開発・デザインの皆さんの努力があったのですね。
大嶋:さらに言うと、スマートフォンのマイナンバーカードの読み取りリーダーも入っています。
高野:スマホマイナ保険証の読み取りリーダーの追加も、省スペース化には課題でした。機器の表面に配置しなくてはならないのですが、周囲の金属物と一定の距離を取るといった制約も同時に満たさないとならなかったためです。リーダー周辺も立体的な部品配置構造を取ることで、両方の条件をクリアしています。しかし、リーダーに関しては、「ご利用者様にとって、どこに配置すると使いやすいか」というポイントの方が大切でした。模型を作ってできるだけ多くの人に見てもらい、配置を検討しました。
永石さんにもご意見いただきましたね。
永石:私は当初、上部に配置するのが良いと思っていました。ただ、上に配置するとタッチした時に倒れる懸念や、車いすや子供など低い位置から利用する場合にタッチする場所が見えない懸念があり、画面左側の配置になりました。
「初めて使う人」を迷わせない。デザインと設計が追求した、真のユーザビリティ。
山本:話のテーマが「コンパクトさの追求」から、「使いやすさの追求」に移ってきました。使いやすさの追求では、まずユーザーの皆様が利用するシーンをさまざまな観点から考えて開発を進められたのですね。
大嶋:永石さんから説明がありましたが、実際の利用現場やユーザーにとって良いものになるように、パナソニック コネクトのデザイン部門は、色形だけでなく、使いやすさはもちろん、ユーザー体験までデザインしています。
使いやすさといった点では、スマホ機能のタッチ位置に加えて、使う人が操作に迷わないような工夫をしています。画面の中のアニメーションでの案内や、今回新規で起こしたアイコン、更に光の点灯による誘導によってどこにタッチするか分かるようにしています。何故かというと、今回追加したスマホマイナ保険証による認証は、世の中でもまだ新しく、ほとんどの方は初めての体験になると思いました。また、従来のマイナンバーカードによる認証とスマートフォンによる認証の両方必要となるため、多くの方が迷われるのではないかと考えました。実際私も病院で初めてスマホマイナ保険証を認証しようとした時、戸惑ったのを覚えています。
山本:確かに初めてスマホマイナ保険証を利用される方でも、光での誘導があると一目で分かるので迷わずタッチできそうですね。
高野:大嶋さんのこの光らせるアイデアは試作機を作った後に言われたので、ここでも慌てました(笑)。
永石:結果的にユーザーにとっては使いやすい仕様になりましたよね。
山本:他には使いやすさという点で、どういった点にこだわりましたか。
大嶋:画面のデザインも新しく見直してアクセシビリティを高めました。新モデルでは、7インチの画面サイズを活かして文字サイズをなるべく大きくし、色のコントラストを上げることで視認性を改善しています。また、ボタンも大きくして、押せるボタンが分かるように工夫して、操作性を向上させています。
山本:さらに専用外付けテンキーも2026年10月に発売予定ですが、テンキーにも使いやすさへのこだわりがあるのでしょうか。
高野:現行機はタッチパネルでの操作が中心ですが、それだけでは特に目の不自由な方にとって使いづらいという課題があり、テンキーの必要性がありました。
テンキーはUSB接続の外付けタイプになります。手元に引き寄せやすく、キーピッチも広く取れ、安定した形状にできました。実際に目の不自由な方にも触っていただき、押しやすいというコメントをいただけて安心しました。
山本:まさに、使う方の声を取り入れた設計ですね。
大嶋:そうです。みんなで使う方の立場に立って、ユーザー視点で考えて検討してきました。こうした使いやすさを大切にする姿勢は、家電のものづくりで培われたパナソニックらしさが出ているかなと思います。
山本:使いやすさの追求では、パナソニックのものづくりのDNA・強みが、この新モデルに存分に盛り込まれているのですね。
永石:はい。患者様、医療機関の皆様にも使いやすいということを第一に、省スペースと直感的でわかりやすいUIを追求して、様々な試行錯誤を繰り返し、本機を仕上げました。本端末が医療機関様の現場で少しでもお役に立てれば嬉しいです。