山形大学医学部附属病院様
概要
広域放射線治療遠隔カンファレンスシステムにより県を越えた高度ながん放射線治療を可能に。
61病院をビデオ会議でつなぎネットワーク化、高度ながん放射線治療の技術を東北地方全域で共有。
導入パターン:多地点接続
導入パターン:海外拠点との接続
事例サマリ
課題
- 時間削減・判断スピード化
解決策
遠隔診療相談窓口の開設により、患者様の負担が軽減でき、医師と患者様が高度放射線治療を選択のひとつとして意識できるように。
導入の背景
高度ながん治療のための放射線治療装置を持つ病院は、東北地方全域にわたって散在しており、病院間の距離にもかなり隔たりがあります。また、設備されている装置にもそれぞれ違いがあり、症状に応じた最適な治療を選択する場合、患者様自身が何時間もかけて病院間を移動しなければならず、その負担をいかに減らすかが課題となっていました。そのため山形大学医学部附属病院様では、患者様の居住地域に関わらず、高度放射線治療の相談や選択を可能とすることを目的とした「広域がん放射線治療ネットワーク」を発足。61病院と連携し、遠く離れた病院間で遠隔カンファレンスが実施できるシステムの構築を検討されていました。
導入のポイント
- 高画質
- 高音質
- 容易な操作性
- 画面の分割表示
定期的な遠隔診療相談窓口の開設
「広域がん放射線治療ネットワーク」に加盟する61病院では、患者様の症状にあわせた最適ながん治療を行うために、より効果的な治療環境を持つ病院とHDコムをつないで遠隔診療相談を行っています。相談する病院は、患者様の情報(CTやMRIの画像、電子カルテなど)を相手医師のディスプレイに表示させて症状の説明を行います。その際に重要となるのが、患者様の情報を正確に、詳細に伝えることですが、CTやMRIは身体を“輪切り”にした断面像のため、1度の撮影画像が何十枚にもおよびます。その膨大な量の画像から病巣部を確認するためには、同じ部屋で画像を指し示すか、電話で「何枚目を見てください」などと伝えるやり取りが必要になってしまいます。そこで、各病院のHDコムをスイッチャーにつなぎ、相談する医師がワンタッチで相手医師に画像を提示できるシステムを構築しました。さらに、導入時に不可欠と言われていたセキュリティの面でも、患者様の個人情報を適切に管理。安心してシステムを使用いただいています。HDコムは、病巣部が確認できるほど高画質で操作も簡単であると医師の皆様から評価いただき、医療現場では難しいとされていたリアルタイム遠隔カンファレンスを可能にしました。
大学病院から発信する地域連携コンサルテーション
大学病院から近隣の病院へ医師を派遣した外来診療は従来から行われていましたが、医師の移動に時間が掛かるため、1度診察した患者様の状態が変化して診察日でない日に受診される際など、急な対応ができないという問題がありました。そのような場合には、診察した病院と大学病院をHDコムでつなぐことで、最初に診断した医師に遠隔で確認をとることができ、より迅速で的確な治療を行えるようになりました。
広域医療連携による遠隔カンファレンス
現在、山形大学医学部附属病院様では従来の放射線治療より、さらに効果が高いとされる重粒子線治療の施設建設に向けて研究、開発を行っています。重粒子線治療は、がん病巣に狙いを絞って集中的に照射できる、日本が世界に先駆けて行っている放射線治療法です。この希少な重粒子線治療を、県を越えて東北地方全体で行えるように、7つの専門施設が連携した「東北がん粒子線コンソーシアム」を設立。HDコムを利用して、遠く離れた施設間でも専門的観点から意見交換ができ、大規模な重粒子線の有効利用体制を整えられました。また粒子線コンソーシアムのカンファレンスだけでなく、月に1度、タイのマヒドン大学の附属病院と遠隔カンファレンスを行っています。日本だけでなく、海外ともリアルタイムにコミュニケーションが取れることで、さらなる高度ながん医療の研究を進められています。
小児がんの治療に、9病院をつないでカンファレンス
山形大学医学部附属病院様は、小児科を持つ他8病院のビデオ会議システムとつないで小児がん治療の遠隔カンファレンスを実施しています。小児がんの治療においては、患者様の年齢や状態を考慮して診療方針の大枠の決定から時間を掛けて行うことが必要になります。そのため、1対1のカンファレンスではなく、多くの病院と同時につないで専門知識を結集させ、より充実したカンファレンスを行っています。現在では、6病院を同時接続して実施することが多く、同時に話してもクリアに聞こえ、画面を分割して表示できることで、運用の頻度も多くなっています。
導入後のメリット
改善ポイント
- 遠隔診療相談窓口の開設により、患者様の負担を軽減。
- 情報共有のリアルタイム化により、医師同士事前に診療方針の話し合いが可能に。
- 医師と患者様が高度放射線治療を選択のひとつとして意識できるように。
遠隔診療相談窓口を開設して、患者様の負担を減らせたことが、最大の成果だったと山形大学医学部の根本教授は語ります。従来、患者様は、最寄りの病院を訪れても、適切な装置がその病院になかった場合、紹介状とCD-Rに焼いた診療データを持って治療が可能な病院を自ら訪れなければなりませんでした。そこで再診察を行い診療方針が検討されるため、早期治療が必須となるがん治療で、何週間も時間が過ぎてしまうことを根本教授は問題視されていました。HDコムの導入により、医師同士で事前に診療方針を話し合ってから患者様に伝えられ、初診医と紹介された医師との情報共有もリアルタイムに行えることで、地域に関わらず、医師と患者様が高度放射線治療を選択のひとつとして意識できるようになりました。東北地域全体の医療連携を志した山形大学医学部附属病院様は、HDコムを活用し、同じ志を持つ多くの病院とともに、県を越えた、さらなるがん医療の改革を推進されています。
導入システム
HD映像コミュニケーションユニット KX-VC1300J ×67台
HDコム専用カメラ GP-VD131J ×67台
HDコム専用マイク(デジタル) KX-VCA001 ×67台
フルハイビジョン液晶ディスプレイ(47V型)TH-47LF60J ×67台
システム概要
お客様情報
山形大学医学部附属病院 様
1973年、山形大学に医学部が設置され、その3年後の1976年に開院した山形大学医学部附属病院様は、インフォームド・コンセント(医師が患者に診療の目的・内容を十分に説明して、患者の納得を得て治療すること)を原点に、「地域に開かれた医療」、「最高水準の医療」によって約4 0年にわたり東北地方の人々の健康を支えています。2015年度から、重粒子線がん治療の整備事業に着手。時代の先端を行く大学病院として、東北だけでなく、日本中のがん医療のさらなる発展を支えています。
広域がん放射線治療ネットワークとは…
東北に住む患者様が、地域に関わらず粒子線などによる高度放射線治療の相談・選択を可能とすることを目的とした、東北61病院が参加する広域ビデオ会議ネットワークです。
放射線腫瘍学講座 教授
根本 建二 様
放射線治療科の皆様